小林 |
「郵便あったか」 |
北小岩 |
「DMが2通ですね。
1通はエロ本の見本市。
もう1通は指輪フェアのお知らせです。
あっ、指輪は3軒先の
夢野さんの娘さんのハガキが
間違えて入っておりました」 |
小林 |
「ポストに入れてきてやれや。
ただし、フェアの日時と会場は
チェックしといてな」 |
北小岩 |
「一週間後に隣町のラブ&ラブホールで
10時開場でございます」 |
先生が何かたくらんでいる。
といっても、ミドリムシ以下のレベルの知能なので、
そんなに深い考えが浮かぶわけは無い。
会場に行けば
若い女性がたくさん集っているはずなので、
もしかしたら何かいいことがあるかもしれないという、
淡くどす黒い期待を持っただけなのだ。
当日会場は、思惑通り若い女性であふれていた。
|
北小岩 |
「わたくし、今まで指輪には
毛ほどの興味もございませんでしたが、
仔細に眺めてみると
どこか魔性を感じますね」 |
小林 |
「俺はお前と違って、
めちゃめちゃ興味あるで。
女性に喜ばれるものは、
指輪とでっかいちんちんや」 |
勘違いも甚だしい。
というよりも、
女性に拳骨で鼻を数発殴られたほうがいいような、
完全に阿呆な考え方である。
|
北小岩 |
「あの人だかりは
何でございましょうか」 |
弟子がしゃべり終える前に、
先生はすでに輪に加わっていた。
そこには<TRUE LOVE婚約指輪&結婚指輪>と
大書された看板がかかっていた。
|
セールス
マン |
「エンゲージとマリッジ。
女性にとって、この二つのリングほど
大切なものはありません。
しかしどうしたことでしょう。
十年一日の如し。
いえ、百年十日の如しで、
まったく進化がみられません。
そこで私たちのカンパニーでは、
ばっこんと的を射た指輪を開発いたしました」 |
どどめ色の大きなカバーが除かれると、
そこにはなまこがディスプレイされているかのように、
様々な大きさのちんちん状のモノを装着した指輪が、
大量に吊るされていた。
|
セールス
マン |
「やはり愛する彼のモノと同じモノを
指輪にすべきでしょう。
婚約指輪は平常時の大きさ、
結婚指輪はMAXになった状態のモノを
お薦めしております」 |
レディA |
「どんな種類があるのですか」 |
セールス
マン |
「グレードでいきますと、
生寸法を測って作った
オーダーメードが最高級。
それからプレタポルテ。
一番廉価なものは吊るしとなっております」
|
レディB |
「私、子供の頃から
結婚指輪は真珠って決めてるんだけど」 |
セールス
マン |
「ご心配には及びません。
そのような方も
たくさんいらっしゃいますので、
このちんちん型指輪には、
真珠が入れられるようになっているのです」 |
レディC |
「こんな指輪恥ずかしくて、
つけたまま街を歩けないわ」
|
セールス
マン |
「大丈夫です。
シャイな方のために、
前バリも用意しております」 |
レディD |
「そんなモノを作っちゃって、
もしも婚約を破棄された場合は
どうするのよ」 |
セールス
マン |
「その時は床に叩きつけて
こなごなに割ってください」 |
さすがの小林先生も、
口を間抜けにあけたまま、話に割って入れなかった。
確かに、婚約指輪にも結婚指輪にも、
あまりオリジナリティーは感じられない。
とはいえ、
このような形状のモノが望まれているのであろうか。
大いに疑問である。
材質も何でできているのかよくわからない。
セールスマンの話では、一番高価な指輪は、
平常時の形のモノを上下にさすると
大きくなるというのだが。 |