草木も夢見る丑三つ時。
「すやすやうはうは」
慢性的な金欠病のため、
趣味などにまったくお金をかけられない北小岩くんは、
エッチな夢の中で存分に振舞うことを
無情の喜びとしている。
「ううう。ぐぐぐ。むっ」
それなのに、思わず目覚めてしまったのはなぜか。
下半身から、「たんたんたぬき」のメロディーが
聴こえてくる気がしたのだ。
体の柔らかい北小岩くんは、
柔軟体操の姿勢を取ると、
耳を股間に近づけて。
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北小岩 |
「間違いございません。
わたくしの玉袋の中からでございます。
睾丸さん、
あなたはなぜメロディーを
奏でているのでございますか?」 |
もちろん返事はない。
弟子は金ギョクが気になり、
朝まで寝付けなかった。
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北小岩 |
「早めでございますが、
燃えないゴミを出してしまいましょう」 |
家のガラクタをまとめ、ゴミの集積所に向かうと。
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北小岩 |
「随分大きなカラスがいらっしゃいますね」 |
目を凝らすと。
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北小岩 |
「カラスではございません。
物知りで有名な
何出毛(なんでも)さんでした」 |
何出毛 |
「どうしたんですか。
随分早いじゃありませんか」 |
北小岩 |
「実は摩訶不思議なことが起こりまして」 |
何出毛 |
「何でもわかりますから、
おっしゃってください」 |
北小岩 |
「真夜中にメロディーを耳にしたのです。
それが、
音はふぐりから出ているようなのです」 |
何出毛 |
「ははあ。
あなたの家には楽譜があるでしょう」 |
北小岩 |
「小林先生は楽器が上手ではありませんが、
楽譜を眺めるのが趣味なので、
色々ございます」 |
何出毛 |
「音符もね、
上手に演奏されていないと
欲求不満になってしまうのですよ。
それで夜中に譜面から飛び出し、
ちんちんの先から入って睾丸を震わせ、
旋律をなぞっていたのですね」 |
北小岩 |
「でもなぜタマタマに」 |
何出毛 |
「音符は別名、
おたまじゃくしといいます。
睾丸の中には、
別のおたまじゃくしがいるから、
誘われたのでしょう」
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その時、向こう正面の奥さんが
ゴミを出すために近づいて来た。
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奥さん |
「ちょうどよかったわ。
大きな声では言えないんだけど、
今朝起きたら、
私のまんドコロからカエルが出てきたの。
どうしてかしら」 |
何出毛 |
「あなたの娘さん、
近頃ピアノ弾いていないでしょ」 |
奥さん |
「まったく」 |
何出毛 |
「北小岩さんのケースと同じなのですが、
譜面から家出した音符が、
大切な場所に入ってしまったのです。
ちょうどいい温度だったので、
そこで成長して、
カエルになったのです」
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そのカエルは、
ジャンプするたびにメロディーを奏でるという。
やっぱり音符って、生き物だったんですね。
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