KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百九拾七・・・資源


北小岩 「あれっ、野良犬さんです。
 今時珍しいですね」

外を歩き回っていれば、
まかり間違って美女にモテることもあるかも知れない。
そんなダーティーな期待を胸に抱いた
先生と弟子だったが、
出会ったのは毛がハゲかかった犬だった。

小林 「むっ、これはただの犬やない。
 ここ掘れワンワンや!」

昔読んだ花咲か爺さんのポチに似ているというだけで、
自分の都合のいいように解釈した先生は、
弟子と二人三脚で犬の後を追った。

北小岩 「かなりの俊足でございますね」

振り切られないように歯を食いしばって激走した。
だが、神社の鳥居を過ぎると何故か犬が急停止。

小林 「新聞が落ちとる」
北小岩 「経済紙のようでございますね」

その時だった。
新聞がゆっくりゆっくり動き出した。

小林 「これをたどっていけば、
 大判小判がざっくざくや!」

新聞はまるで生き物のように
二人においでおいでしながら、
岩をくり抜いた洞穴の中に入っていった。

小林 「ここか!
 ついに俺とお前も大金持ちやな」

だが、そこに鎮座していたのは、
大判小判ではなく
新聞に糸を結んで引っ張っていた褌姿の仙人だった。

褌仙人 「あんたがた新聞読んだじゃろ。
 ひと読み150円じゃ」
北小岩 「ちら見しただけでございます。
 何とか20円ぐらいに
 ならないものでしょうか」
褌仙人 「ならん」

パンツの中からがま口を取り出し、
仕方なしになけなしの150円を払う弟子。

褌仙人 「何が書かれとった?」
北小岩 「原油の高騰についてですね。
 産油国はインフレ懸念はございますが、
 好景気に沸き、
 資源のない国は悲鳴をあげております」
褌仙人 「それがそもそも大間違いなんじゃ!!」
北小岩 「と申しますと」
褌仙人 「勝手に売買しとるが、
 原油はもともと
 掘ってはいけないものなんじゃ〜〜〜!
 いろいろな形にして燃焼させておるが、
 人間が燃やしていいモノなど
 牛の糞までじゃ〜〜〜!!!」

仙人のあまりの剣幕に、後ずさりする二人。

褌仙人 「地球は生き物じゃ。
 貴様は、
 いきなりケツの穴を掘られたら
 どうする!!」
北小岩 「わたくしそのあたりが敏感で、
 痔になった時に座薬すら
 入れることができませんでした。
 ですので、ご勘弁でございます。
 しかし、原油を掘ることと
 ケツの穴を掘ることは同じなのですか。
 地球の血や体液を抜いている
 といった方が、近い気がいたしますが」
褌仙人 「わかりましぇ〜ん」

先生と弟子、ずっこける。

褌仙人 「だが、
 堪忍袋の緒はチョッキンされてしまった。
 地球は人間に、
 ケツならぬツケを払わすために、
 動きだしておるわい」
北小岩 「どのようにでございますか」
褌仙人 「体で払わせようとしとるんじゃな。
 近頃地球の引力が強まっとるのを感じる。
 ワシにはよくわかるんじゃ。
 このまま強さを増していけばどうなる」
北小岩 「立っていることができずに、
 地面にうつぶせになってしまいます」
褌仙人 「そうじゃ。
 うつぶせになると、
 男は不都合を感じるじゃろ」
北小岩 「おちんちんがそれほど大きくない人でも、
 その部分に危機感を覚えます。
 このまま力を加え続けられたら、
 ぐにゃっと潰れてしまうのではないかと」
褌仙人 「地球はな、
 今まで人類が
 経験したことのないほどの引力で、
 地面でちんちんを潰して
 油を搾りとろうとしてるんじゃ」

北小岩 「そんな恐ろしいことが!
 しかし、原油は黒ではないですか。
 油をとったとしても、
 とてもそのような色になるとは
 思えません」
褌仙人 「イチモツには
 どす黒い欲望が渦巻いておる。
 別名欲棒とも
 呼ばれているぐらいだからな。
 搾った油を地中深くにしみこませ、
 原油をとられた分だけ
 何億年もかけて取り返す。
 掘っちゃいけないものは
 原油だけじゃない。
 石炭もじゃ。
 地球は太陽と提携しておる。
 年々日差しが強くなっとるじゃろう」
北小岩 「そういえば、
 日に当たると顔が、
 熱いというよりも痛いと
 感じることがございます」
褌仙人 「それは睾丸を焦がして、
 石炭にするための布石じゃ」
北小岩 「うう・・・」
褌仙人 「ガスだってそうじゃ。
 その人間が
 もっとも屁をこいてはならない場面で
 腹に重力をかけ、
 辱めながら採取し、
 天然ガスを取り戻すんじゃ。
 それにしても
 『地球にやさしい』
 という言い方はいかん。
 まずは
 『地球にごめんなさい』じゃろが。
 うお〜〜〜、
 玉電(たまでん)〜〜〜」

褌仙人はふんどしを外すと、
異様に大きな玉袋を凄まじい勢いで
前後にゆすり始めた。
荒れ狂う風で、前に置かれた風車が激しく回りだし、
つながれた電球がフラッシュのように光った。

小林&
北小岩
「地球さん、
 ごめんなさ〜〜〜い!!」

恐怖のあまり洞穴から飛び出した二人。
褌仙人・・・。
決して口だけの男でないことだけは確かである。

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2008-07-13-SUN

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