北小岩 |
「あれっ、野良犬さんです。
今時珍しいですね」 |
外を歩き回っていれば、
まかり間違って美女にモテることもあるかも知れない。
そんなダーティーな期待を胸に抱いた
先生と弟子だったが、
出会ったのは毛がハゲかかった犬だった。
|
小林 |
「むっ、これはただの犬やない。
ここ掘れワンワンや!」 |
昔読んだ花咲か爺さんのポチに似ているというだけで、
自分の都合のいいように解釈した先生は、
弟子と二人三脚で犬の後を追った。
|
北小岩 |
「かなりの俊足でございますね」 |
振り切られないように歯を食いしばって激走した。
だが、神社の鳥居を過ぎると何故か犬が急停止。
|
小林 |
「新聞が落ちとる」 |
北小岩 |
「経済紙のようでございますね」 |
その時だった。
新聞がゆっくりゆっくり動き出した。
|
小林 |
「これをたどっていけば、
大判小判がざっくざくや!」 |
新聞はまるで生き物のように
二人においでおいでしながら、
岩をくり抜いた洞穴の中に入っていった。
|
小林 |
「ここか!
ついに俺とお前も大金持ちやな」 |
だが、そこに鎮座していたのは、
大判小判ではなく
新聞に糸を結んで引っ張っていた褌姿の仙人だった。
|
褌仙人 |
「あんたがた新聞読んだじゃろ。
ひと読み150円じゃ」 |
北小岩 |
「ちら見しただけでございます。
何とか20円ぐらいに
ならないものでしょうか」 |
褌仙人 |
「ならん」 |
パンツの中からがま口を取り出し、
仕方なしになけなしの150円を払う弟子。
|
褌仙人 |
「何が書かれとった?」 |
北小岩 |
「原油の高騰についてですね。
産油国はインフレ懸念はございますが、
好景気に沸き、
資源のない国は悲鳴をあげております」 |
褌仙人 |
「それがそもそも大間違いなんじゃ!!」 |
北小岩 |
「と申しますと」 |
褌仙人 |
「勝手に売買しとるが、
原油はもともと
掘ってはいけないものなんじゃ〜〜〜!
いろいろな形にして燃焼させておるが、
人間が燃やしていいモノなど
牛の糞までじゃ〜〜〜!!!」 |
仙人のあまりの剣幕に、後ずさりする二人。
|
褌仙人 |
「地球は生き物じゃ。
貴様は、
いきなりケツの穴を掘られたら
どうする!!」 |
北小岩 |
「わたくしそのあたりが敏感で、
痔になった時に座薬すら
入れることができませんでした。
ですので、ご勘弁でございます。
しかし、原油を掘ることと
ケツの穴を掘ることは同じなのですか。
地球の血や体液を抜いている
といった方が、近い気がいたしますが」 |
褌仙人 |
「わかりましぇ〜ん」 |
先生と弟子、ずっこける。
|
褌仙人 |
「だが、
堪忍袋の緒はチョッキンされてしまった。
地球は人間に、
ケツならぬツケを払わすために、
動きだしておるわい」 |
北小岩 |
「どのようにでございますか」 |
褌仙人 |
「体で払わせようとしとるんじゃな。
近頃地球の引力が強まっとるのを感じる。
ワシにはよくわかるんじゃ。
このまま強さを増していけばどうなる」 |
北小岩 |
「立っていることができずに、
地面にうつぶせになってしまいます」 |
褌仙人 |
「そうじゃ。
うつぶせになると、
男は不都合を感じるじゃろ」 |
北小岩 |
「おちんちんがそれほど大きくない人でも、
その部分に危機感を覚えます。
このまま力を加え続けられたら、
ぐにゃっと潰れてしまうのではないかと」 |
褌仙人 |
「地球はな、
今まで人類が
経験したことのないほどの引力で、
地面でちんちんを潰して
油を搾りとろうとしてるんじゃ」
|
北小岩 |
「そんな恐ろしいことが!
しかし、原油は黒ではないですか。
油をとったとしても、
とてもそのような色になるとは
思えません」 |
褌仙人 |
「イチモツには
どす黒い欲望が渦巻いておる。
別名欲棒とも
呼ばれているぐらいだからな。
搾った油を地中深くにしみこませ、
原油をとられた分だけ
何億年もかけて取り返す。
掘っちゃいけないものは
原油だけじゃない。
石炭もじゃ。
地球は太陽と提携しておる。
年々日差しが強くなっとるじゃろう」 |
北小岩 |
「そういえば、
日に当たると顔が、
熱いというよりも痛いと
感じることがございます」 |
褌仙人 |
「それは睾丸を焦がして、
石炭にするための布石じゃ」 |
北小岩 |
「うう・・・」 |
褌仙人 |
「ガスだってそうじゃ。
その人間が
もっとも屁をこいてはならない場面で
腹に重力をかけ、
辱めながら採取し、
天然ガスを取り戻すんじゃ。
それにしても
『地球にやさしい』
という言い方はいかん。
まずは
『地球にごめんなさい』じゃろが。
うお〜〜〜、
玉電(たまでん)〜〜〜」 |
褌仙人はふんどしを外すと、
異様に大きな玉袋を凄まじい勢いで
前後にゆすり始めた。
荒れ狂う風で、前に置かれた風車が激しく回りだし、
つながれた電球がフラッシュのように光った。
|
小林&
北小岩 |
「地球さん、
ごめんなさ〜〜〜い!!」 |
恐怖のあまり洞穴から飛び出した二人。
褌仙人・・・。
決して口だけの男でないことだけは確かである。
|