ジリリリーン、ジリリリーン。
小林先生宅の黒いダイヤル式電話が、静寂を引き裂いた。
|
北小岩 |
「もしもし。
えっ、警察さんでございますか」 |
先生のHな宝物、
すなわち非合法なブツを嗅ぎ付けられたと勘違いした
弟子の顔が青ざめる。
|
北小岩 |
「はっ、そうではないのですか。
でも、それは一大事です!
先生!!」 |
黒電話を持って師の部屋に駆けつける。
コードが30メートル以上あるので、
家中どこでも運べるのだ。
涎を垂らしながら昼寝していた先生の耳に、
受話器を押し当てる。
|
小林 |
「ふっ、ふぁわい・・・。
何っ? ジャック!?」 |
寝ぼけていた頭が一瞬で背筋を伸ばした。
詳しい状況は分からないが、何かがジャックされ、
犯人たちとの交渉人として先生に白羽の矢が立ったのだ。
しばらくすると警察が手配した車が
クラクションを鳴らした。
先生と弟子が乗り込むと急発進。
果たしてハイジャックなのか。
バスジャックなのか。
現場に急行すると。
|
警官 |
「あそこにチンジャック犯たちが
籠もっています」 |
数十メートル先にいる男の股間を示した。
どうやらジャックされたのは飛行機やバスではなく、
ある男のチンチンだったのだ。
|
警官 |
「犯人は身長が3センチほどの
『小さい悪い人たち』です。
鋭利なものを手に
チンチンを乗っ取りました」 |
前代未聞のことゆえ、
警察もどうしたらいいのかわからず、
下半身の専門家と目されている先生に
オファーを出したのだ。
|
小さい悪い
人たち |
「それ以上近づくと、
この男のイチモツは
亡きものにされると思え」
|
小林 |
「まあ、とにかく話そうやないか。
君たちの要求は何や?
金か?」 |
小さい悪い
人たち |
「俺たちのことを
舐めるんじゃない」 |
チンチンを
乗っ取ら
れた男 |
「うお〜〜〜!
交渉人、言葉を謹んで!」 |
チンチンに鋭利なもので危害を加えられたらしい。
|
小林 |
「すまんすまん。
では、あなた方の要求は?」 |
小さい悪い
人たち |
「俺たちは
この男の思い出を頂こうと思ってな」 |
北小岩 |
「ロマンチックでございますね」 |
チンチンを
乗っ取ら
れた男 |
「そんな美しい話じゃない。
僕はこのルックスだから、
今まで多くの美しい女性と恋に落ちてきた。
もちろん体験した人数も回数も
半端じゃない。
ひとつひとつの甘く、
失神するほど気持ちよかった思い出は、
すべてチンチンが覚えている。
その記憶をすべて取り上げ、
自分たちのものにしてしまうと、
彼らは言ってるんだ」 |
今まで一度もモテたことのない先生の表情に、
暗雲が垂れ込めた。
|
小林 |
「あんた、そんなにモテるんなら、
記憶なんてそいつらに
くれてやればええやないか。
そんでまた気持ちのいい思い出を作れば
ええだけの話やろ」 |
チンチンを
乗っ取ら
れた男 |
「それが若い頃に酷使し過ぎたせいか、
このところすっかり
ダメになってしまったんだ。
だからチンチンのスィートメモリーズを
取られてしまったら、
もうこれから先
思い出なしで
生きることになってしまうんだ」
|
小林 |
「知るか、そんなことは。
今まで何度も
いい思いをしてきたんやから、
それで十分やないか!
お前のチンチンの思い出なんか、
滅んでしまえ!!」 |
先生は頭から黒い蒸気を出し、
どこかに走り去ってしまった。
無責任な行動に見えるが、これは先生のせいではなく、
明らかに警察側の人選ミスであろう。
イチモツを失うか、
イチモツの思い出を失うかを迫られた男は、
イチモツの無事を選択。
思い出はすべて取りあげられてしまった。
今までいい思いをしてきた人は、他人事ではありません。
いつ小さい悪い人たちに
乗っ取られるかわかりませんからねっ!
べ〜だっ!!
|