「ふう、暑いでございますねえ」
「はあはあはあ」
町内きってのおばかさん、
先生とその弟子は、
日照りが地を焦がす中でも散歩をかかさない。
弟子にはまだ言葉を吐き出す余力があるが、
先生は野良犬のようにただ舌をだらんと垂らし、
息を荒くするだけである。
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北小岩 |
「むむっ、
あそこをご覧ください!」 |
仮死状態だった先生だが、
弟子の指差す方角を凝視すると、
目がスナイパーのように光った。
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北小岩 |
「セクシー女性の群れでございます。
しかし・・・」 |
小林 |
「これはお前が感じているよりも、
数倍恐ろしい事態やで」 |
体にフィットしたパンツを着こなすモデル級の女たち。
しかし、一様に股間がもっこりしているのだ。
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北小岩 |
「レディのみなさまは、
あのお店から出てくるようでございます」 |
看板に隠微な文字で『付け屋』と書かれている。
二人はぬき足さし足で忍び寄った。
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小林 |
「放置しておけば、大変なことになる。
意を決して踏み込まにゃあかんな」 |
ドラマの刑事のように突撃。
すぐにまつ毛が陰毛そっくりの女主人が立ちはだかる。
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まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人 |
「あんたたち、何の用よ。
そこに男子禁制って書いてあんでしょ」 |
主人のレッドカードを無視し、店内を観察する。
若鮎のような女性たちが、
ドレッシングルームのドアを開け、
友だちともっこリ具合をチェックしている。
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小林 |
「思った通りや。
この店は、男に誇示するための
付けチンを売っているんや」 |
北小岩 |
「なぜそのようなことを」 |
小林 |
「もともと女の方が
いろんな面で男より強いが、
このところさらにそのパワーは
増大しておる。
悲しき男どもにとって
唯一のアイデンティティーが、
股間のもっこりだったわけや」
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北小岩 |
「確かにその部分が
盛り上がっているだけで、
存在感を誇示することはできますからね」 |
小林 |
「だがな、
彼女らは秘所の盛り上がりすら
手に入れてしまう。
つまり男の最後の砦がくずされるわけや」 |
まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人 |
「あんたフニャチン野郎だけど、
的確にポイントは押さえてるわね。
ここはプレイ用のものじゃなくて、
膨らみを見せびらかすための
観賞用付けチンを売っているのよ。
男なんか、さらに自信を失くして
ボロボロになればいい。
この店ならば、
大きさも好みに合わせて
自由自在に選べる。
あんたたちの瀕死のひよこよりも、
数倍形はいいし、堂々としているわ。
それだけじゃない。
男の玉金はただ
二つぶら下がってるだけじゃない。
あんなもの、
普段は何も役に立っていないのよ」 |
二人は展開が読めずに、
うんこを踏んでしまった瞬間のような顔をしている。
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まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人 |
「だいたい二つあるのに、
その性能を活かしきれていないのよ。
ここの付け玉はね、
ステレオを楽しめるんだよ。
付けチンの所にiPodを置けば、
そのまま玉から音楽が流れるように
設計されてるのよ」
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北小岩 |
「うう。
時代は進化していたのですね」 |
まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人 |
「わかったらとっとと出て行けよ。
このインポゴキブリ!」 |
女主人は手にしていた如意棒を力いっぱい振ると、
棒の先が二つに分かれ、
先生と弟子の股間をとらえた。
鈍痛に腰をかがめ、退散を余儀なくされた二人。
時代は女性上位のまま流れていく。
付けチン&玉が、
その流れをさらに加速させることは間違いないであろう。
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