KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の百九拾九・・・付け


「ふう、暑いでございますねえ」

「はあはあはあ」

町内きってのおばかさん、
先生とその弟子は、
日照りが地を焦がす中でも散歩をかかさない。
弟子にはまだ言葉を吐き出す余力があるが、
先生は野良犬のようにただ舌をだらんと垂らし、
息を荒くするだけである。

北小岩 「むむっ、
 あそこをご覧ください!」

仮死状態だった先生だが、
弟子の指差す方角を凝視すると、
目がスナイパーのように光った。

北小岩 「セクシー女性の群れでございます。
 しかし・・・」
小林 「これはお前が感じているよりも、
 数倍恐ろしい事態やで」

体にフィットしたパンツを着こなすモデル級の女たち。
しかし、一様に股間がもっこりしているのだ。

北小岩 「レディのみなさまは、
 あのお店から出てくるようでございます」

看板に隠微な文字で『付け屋』と書かれている。
二人はぬき足さし足で忍び寄った。

小林 「放置しておけば、大変なことになる。
 意を決して踏み込まにゃあかんな」

ドラマの刑事のように突撃。
すぐにまつ毛が陰毛そっくりの女主人が立ちはだかる。

まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人
「あんたたち、何の用よ。
 そこに男子禁制って書いてあんでしょ」

主人のレッドカードを無視し、店内を観察する。
若鮎のような女性たちが、
ドレッシングルームのドアを開け、
友だちともっこリ具合をチェックしている。

小林 「思った通りや。
 この店は、男に誇示するための
 付けチンを売っているんや」
北小岩 「なぜそのようなことを」
小林 「もともと女の方が
 いろんな面で男より強いが、
 このところさらにそのパワーは
 増大しておる。
 悲しき男どもにとって
 唯一のアイデンティティーが、
 股間のもっこりだったわけや」

北小岩 「確かにその部分が
 盛り上がっているだけで、
 存在感を誇示することはできますからね」
小林 「だがな、
 彼女らは秘所の盛り上がりすら
 手に入れてしまう。
 つまり男の最後の砦がくずされるわけや」
まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人
「あんたフニャチン野郎だけど、
 的確にポイントは押さえてるわね。
 ここはプレイ用のものじゃなくて、
 膨らみを見せびらかすための
 観賞用付けチンを売っているのよ。
 男なんか、さらに自信を失くして
 ボロボロになればいい。
 この店ならば、
 大きさも好みに合わせて
 自由自在に選べる。
 あんたたちの瀕死のひよこよりも、
 数倍形はいいし、堂々としているわ。
 それだけじゃない。
 男の玉金はただ
 二つぶら下がってるだけじゃない。
 あんなもの、
 普段は何も役に立っていないのよ」

二人は展開が読めずに、
うんこを踏んでしまった瞬間のような顔をしている。

まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人
「だいたい二つあるのに、
 その性能を活かしきれていないのよ。
 ここの付け玉はね、
 ステレオを楽しめるんだよ。
 付けチンの所にiPodを置けば、
 そのまま玉から音楽が流れるように
 設計されてるのよ」

北小岩 「うう。
 時代は進化していたのですね」
まつ毛が陰毛
そっくりの
女主人
「わかったらとっとと出て行けよ。
 このインポゴキブリ!」

女主人は手にしていた如意棒を力いっぱい振ると、
棒の先が二つに分かれ、
先生と弟子の股間をとらえた。
鈍痛に腰をかがめ、退散を余儀なくされた二人。

時代は女性上位のまま流れていく。
付けチン&玉が、
その流れをさらに加速させることは間違いないであろう。

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2008-07-27-SUN

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