KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百・・・新種の虫


北小岩 「ただいま戻りました〜〜〜」

ドドドドドド。シャーッ。

北小岩 「ふう〜っ」
小林 「どないしたんや。
 頭の小さな亀のように、
 いつもスローモーなお前らしくないで」
北小岩 「先ほど
 新婚の友だちのお宅を訪問したのです」
小林 「押入れにでも隠れて、
 出歯亀しようと思ったんかい」
北小岩 「いいえ違います。
 お祝いの品を届けに行ったのです。
 冷たい物を何杯もいただきまして、
 強い尿意をもよおしました。
 そこでトイレをお借りしようとしたら、
 奥様からプレッシャーをかけられまして」
小林 「ははあ。
 小便の飛沫のことやろ。
 それが原因で悪臭を放つと、
 女性陣から男らは超A級戦犯扱いや」
北小岩 「そうなのです。
 機先を制され、
 放水できなくなってしまったのです」
小林 「だから家まで我慢してきたというわけか」
北小岩 「この先さらに
 家庭トイレでの立ちションの風当たりが
 強くなりそうです。
 何とかならないものでしょうか」
小林 「そうやな。
 俺が知っている範囲では、
 あそこが最先端やな」

二人は町のゴミ置き場から拾ってきた一輪車に乗って、
とある研究所に向かった。
果たして何を研究しているのか。
所内には花柄をあしらった白衣を着た男が。

北小岩 「申し訳ございません。
 わたくし、
 洋式便器でお小水するときに」
花柄を
あしらった
白衣の男
「100%話は了解しました。
 こちらへどうぞ」

恐ろしく飲み込みの早い男である。

花柄を
あしらった
白衣の男
「ここでは、
 人の役にたつ新種の昆虫についての
 研究をしております。
 虫かごの中を御覧なさい」
北小岩 「見たことのない種類でございますね。
 長い舌があるように見えますが」
花柄を
あしらった
白衣の男
「これは『小便舐め虫』といいます。
 近頃男性の小水しぶきは
 全女性の敵になっているでしょう。
 しかし、小便舐め虫を
 トイレの中に放っておくだけで、
 飛び散ったお小水をキレイに舐め
 掃除してくれるのです」
北小岩 「そんな虫がいらっしゃるのですか」

花柄を
あしらった
白衣の男
「当研究所では、
 DNAなどを巧みに操作し、
 今までにない有益な昆虫を
 つくっております。
 この虫は、お小水を聖水と呼んで
 ありがたがる男らのDNAと、
 舐めるのが好きな虫のDNAを
 結合させています。
 それだけでは、ゴキブリやハエのように
 女性から嫌われる昆虫が
 できる可能性大なので、
 さらにかわいい虫をかけあわせております」
北小岩 「そんなことが
 簡単にできるのでしょうか」
花柄を
あしらった
白衣の男
「DNAをこちょこちょすると、
 二重らせんが油断して、
 隙ができるのです。
 その機を逃さず結合させます」
北小岩 「つくり方はともかく、
 この虫を一家のトイレに
 数匹づつ飼っていただけば、
 もう女性からの厳しい視線に
 さらされることもなくなりますね」
小林 「他にはどんな昆虫がおるんや」
花柄を
あしらった
白衣の男
「これはあなたが必要としている虫です」
小林 「なんや?
 単なるナナフシやないか」
花柄を
あしらった
白衣の男
「そう見えますが、
 とても力持ちな
 『支えナナフシ』と申します。
 男が有事の際に
 突然元気を失ってしまった時、
 この虫が目立たずに
 一生懸命支えてくれるのです」
小林 「・・・」

北小岩 「あそこの蝶は
 ドキッとするほど美しいですね」
花柄を
あしらった
白衣の男
「『シークレット・バタフライ』です。
 女性がなんらかの理由で
 パンティーを汚してしまい、
 替えを持っていない時、
 その部分に止まって羽根を広げ続けて
 下着のかわりになります。
 もし、自分の蜜が多すぎて
 吸って欲しくなったら、
 ストローでチューチューしてくれますよ」
北小岩 「なんだかわたくし、
 興奮してまいりました」

地球の生物群の中で、
最も種類が多いといわれている昆虫。
今までは人間との共棲がうまくいっているとは
いい難かっただろう。
しかし、この研究所の成果により、
新種の虫たちが人と持ちつ持たれつの
より良い関係を築いていく日も、
そう遠いことではなくなったようだ。

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2008-08-03-SUN

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