北小岩 |
「ただいま戻りました〜〜〜」 |
ドドドドドド。シャーッ。
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北小岩 |
「ふう〜っ」 |
小林 |
「どないしたんや。
頭の小さな亀のように、
いつもスローモーなお前らしくないで」 |
北小岩 |
「先ほど
新婚の友だちのお宅を訪問したのです」 |
小林 |
「押入れにでも隠れて、
出歯亀しようと思ったんかい」 |
北小岩 |
「いいえ違います。
お祝いの品を届けに行ったのです。
冷たい物を何杯もいただきまして、
強い尿意をもよおしました。
そこでトイレをお借りしようとしたら、
奥様からプレッシャーをかけられまして」 |
小林 |
「ははあ。
小便の飛沫のことやろ。
それが原因で悪臭を放つと、
女性陣から男らは超A級戦犯扱いや」 |
北小岩 |
「そうなのです。
機先を制され、
放水できなくなってしまったのです」 |
小林 |
「だから家まで我慢してきたというわけか」 |
北小岩 |
「この先さらに
家庭トイレでの立ちションの風当たりが
強くなりそうです。
何とかならないものでしょうか」 |
小林 |
「そうやな。
俺が知っている範囲では、
あそこが最先端やな」 |
二人は町のゴミ置き場から拾ってきた一輪車に乗って、
とある研究所に向かった。
果たして何を研究しているのか。
所内には花柄をあしらった白衣を着た男が。
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北小岩 |
「申し訳ございません。
わたくし、
洋式便器でお小水するときに」 |
花柄を
あしらった
白衣の男 |
「100%話は了解しました。
こちらへどうぞ」 |
恐ろしく飲み込みの早い男である。
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花柄を
あしらった
白衣の男 |
「ここでは、
人の役にたつ新種の昆虫についての
研究をしております。
虫かごの中を御覧なさい」 |
北小岩 |
「見たことのない種類でございますね。
長い舌があるように見えますが」 |
花柄を
あしらった
白衣の男 |
「これは『小便舐め虫』といいます。
近頃男性の小水しぶきは
全女性の敵になっているでしょう。
しかし、小便舐め虫を
トイレの中に放っておくだけで、
飛び散ったお小水をキレイに舐め
掃除してくれるのです」 |
北小岩 |
「そんな虫がいらっしゃるのですか」
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花柄を
あしらった
白衣の男 |
「当研究所では、
DNAなどを巧みに操作し、
今までにない有益な昆虫を
つくっております。
この虫は、お小水を聖水と呼んで
ありがたがる男らのDNAと、
舐めるのが好きな虫のDNAを
結合させています。
それだけでは、ゴキブリやハエのように
女性から嫌われる昆虫が
できる可能性大なので、
さらにかわいい虫をかけあわせております」 |
北小岩 |
「そんなことが
簡単にできるのでしょうか」 |
花柄を
あしらった
白衣の男 |
「DNAをこちょこちょすると、
二重らせんが油断して、
隙ができるのです。
その機を逃さず結合させます」 |
北小岩 |
「つくり方はともかく、
この虫を一家のトイレに
数匹づつ飼っていただけば、
もう女性からの厳しい視線に
さらされることもなくなりますね」 |
小林 |
「他にはどんな昆虫がおるんや」 |
花柄を
あしらった
白衣の男 |
「これはあなたが必要としている虫です」 |
小林 |
「なんや?
単なるナナフシやないか」 |
花柄を
あしらった
白衣の男 |
「そう見えますが、
とても力持ちな
『支えナナフシ』と申します。
男が有事の際に
突然元気を失ってしまった時、
この虫が目立たずに
一生懸命支えてくれるのです」 |
小林 |
「・・・」
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北小岩 |
「あそこの蝶は
ドキッとするほど美しいですね」 |
花柄を
あしらった
白衣の男 |
「『シークレット・バタフライ』です。
女性がなんらかの理由で
パンティーを汚してしまい、
替えを持っていない時、
その部分に止まって羽根を広げ続けて
下着のかわりになります。
もし、自分の蜜が多すぎて
吸って欲しくなったら、
ストローでチューチューしてくれますよ」 |
北小岩 |
「なんだかわたくし、
興奮してまいりました」 |
地球の生物群の中で、
最も種類が多いといわれている昆虫。
今までは人間との共棲がうまくいっているとは
いい難かっただろう。
しかし、この研究所の成果により、
新種の虫たちが人と持ちつ持たれつの
より良い関係を築いていく日も、
そう遠いことではなくなったようだ。
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