北小岩 |
「ふう、
ギラギラ太陽でございます」 |
通販でだまされて買った女体の匂いつきハンカチで
額の汗をぬぐう弟子。
八百屋で百円にまけてもらった
小玉スイカをかついでいる。
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北小岩 |
「むっ、
あそこに数人の
益荒男が倒れております」 |
何かと物騒な昨今。
この町にまで危機が迫ったのか。
介抱しようと全速で駆け寄る。
まずは一人目。
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北小岩 |
「大丈夫でございますか。
あっ、あなたは町で
一番強いと言われている
拳(こぶし)さんではないですか」 |
拳氏といえば、
東洋チャンピオンも狙えるという噂の
プロボクサーであった。
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北小岩 |
「拳さん!
拳さん!」 |
拳 |
「ふうっ」 |
息を吹き返したようである。
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北小岩 |
「ああ、よかった。
拳さんほどの方が
ノックアウトされるなんて、
犯人は誰なのですか」 |
拳 |
「いやあ、北小岩さん。
心配させて悪かったね。
実は俺をノックアウトしたのは、
俺なんだよ」 |
北小岩 |
「と申しますと?」 |
拳 |
「近頃、隣町から蚊が押し寄せてきて、
困っているんだ。
その蚊は特殊な性向を持っている。
何せ、局部だけを狙って刺すんだ。
今も短パンのワキから入って、
玉金の血を吸いやがった。
あんまり頭にきたもんだから、
ついアッパーを繰り出したら、
思いっきり玉をえぐってしまって
このざまさ。
俺はいつでも相手のチンを狙っているけど、
自分のチンに決めてしまうとはな。
はははは」
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力なく笑う。
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北小岩 |
「とくかく大事に至らなくて
よかったでございます」 |
二人目に近づく。
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北小岩 |
「ダーツ名人ではありませんか。
これは酷い!
玉金にダーツがささっております」 |
ダーツ氏 |
「ああ、君か。
蚊にだけは気をつけなさいね。
ダーツで仕留めようと思ったら、
この有様さ」
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北小岩 |
「まったくもって恐ろしい
モスキートでございます」 |
果たして三人目は。
倒れている男のそばに、
ビリヤードチャンピオンが
血の気を失った顔で立っている。
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ビリヤード
チャン
ピオン |
「友だちの玉金に蚊が止まって・・・。
俺のことは気にするな、
一思いにキューでつぶしてくれ!
と言われて突いたら、
こんな結果になって・・・」 |
北小岩 |
「あなたが悪いのではございません。
すべて蚊のせいでございます。
男性の被害が多いようでございますが、
女性はどうなのでございましょうか」 |
ちょうど向こうから、
顔見知りの美人若奥さんが
股に手を当てて歩いてきた。
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美人
若奥さん |
「恥ずかしいわ。
実は昨日の夜、大切なところを刺されて、
それからずっとかいているのよ」 |
北小岩 |
「うっ、
ささやかに興奮してまいりました。
向こうで井戸端会議をしている
おばさま方はどうでございましょう」 |
おばさまA |
「蚊?私たちぐらいになると、
蚊も恐れ多いと思うんでしょ。
そんな失礼なことしてこないわ。ね」 |
おばさまB |
「そうよ。
秘所を刺されるなんて、
淫乱なんじゃないの」 |
しかし、威勢のいいことを言う割りに、
さみしげな目をしているのを、
北小岩くんは見逃さなかった。
美人若奥さんに確認すると。
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美人
若奥さん |
「あの人たちはね。
ここ何年も夫に構ってもらえなくて、
くもの巣がはっているのよ。
だから、蚊は決して近づかないの」 |
北小岩 |
「・・・」 |
とっ、とにかく隣町の蚊は手強いようです。
みなさまも股間の血を吸われたからと言って、
むやみに攻撃することはデンジャラスですので、
お気をつけくださいませ。
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