朋あり、遠方より来たる・・・。
|
北小岩 |
「よくいらっしゃいました。
さあ、どうぞ」 |
弟子の北小岩くんが、
すかさず師の友、陳宝逃(ちんぽうにげる)氏に
座布団を差し出す。
|
北小岩 |
「遠い国から帰られたと
うかがっております」 |
陳宝 |
「それほどでもありませんよ」 |
小林 |
「何かみやげはないんか」 |
陳宝 |
「みやげというほどではないけれど、
先日命懸けの祭りに参加してね。
追われ続けて、
九死に一生を得たよ。
その様子を録画したビデオを
持ってきたよ」 |
北小岩 |
「ははあ、わかりました。
スペインの牛追いでございますね。
街路に牛を放ち、
参加者は全速力で逃げるのですよね。
時に死者まで出してしまうという
激しさです。
そのような祭りに参加する勇気は、
わたくしには毛穴ほどもございません。
さっそく拝見させてください」 |
弟子は闘牛士のポーズをとり、
中古のデッキにテープを入れた。
|
北小岩 |
「青い海と空。
陽気な太陽。
憧れのスペインでございます。
おっ、陳宝さんの登場です」 |
陳宝氏は入念にウォームアップを行ない、
一団の前列に陣取る。
すぐに追いつかれないように、
人間が先にスタートするのだ。
|
北小岩 |
「ついに始まりましたね。
みなさま、
ちょっと引きつり気味のお顔で
走っていらっしゃいます」 |
ドドドドッ。
|
北小岩 |
「猛牛が放たれたようでございます。
ビデオで観ていても、
地響きを感じます」 |
陳宝 |
「ただ逃げればいいというものでは
ありません。
勇気を持って触ったり、
芸術的な走りをした人が
表彰されるのです」
|
北小岩 |
「かなり近づいてきたのでは
ないでしょうか。
陳宝さんも
今にも泣き出しそうでございます。
あっ!!!」 |
氏は後ろを走っていた人とからまってしまい、
転倒したのだ。
|
北小岩 |
「危ない!
角で突かれてしまいます!!」 |
怖がりな弟子は、目をつぶりうずくまってしまった。
先生がビデオを一時停止にする。
|
小林 |
「大丈夫や。
目ん玉虫眼鏡にして、
ようく見てみい」 |
北小岩くんは、
女子中高生がいやらしいものを見る時にするように、
指の隙間から瞬間的映像をのぞき見た。
|
北小岩 |
「あっ!」 |
陳宝氏が踏みつけられていたのは、
猛牛ではなく、3メートルはあろうかという
巨大なちんちんだったのだ。
|
陳宝 |
「北小岩さんがノリノリだったので
つい訂正しそびれましたが、
私が長期に渡って居住していたのは、
スペインではなく、
そのそばにある
スペルマという国だったのです。
お祭りも牛追いではなく、
チン追いです。
スペルマには太古から
恐竜級のちんちんが生息しており、
それを年に一回捕獲してきて放つのです。
危険度からいったら、見境のない分、
牛よりちんちんの方が危険ですね。
私もすんでのところで助かりました。
何トンもあるイチモツに
のしかかられたのですが、
幸運にも玉と玉の間の隙間に
体が入っていたので、
圧死せずにすみました」
|
北小岩 |
「そうでございましたか。
とにかくご無事で何よりでした」 |
スペインのそばにあるスペルマ・・・。
そんな国ねえよ。
|