KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百七・・・追われる

朋あり、遠方より来たる・・・。

北小岩 「よくいらっしゃいました。
 さあ、どうぞ」

弟子の北小岩くんが、
すかさず師の友、陳宝逃(ちんぽうにげる)氏に
座布団を差し出す。

北小岩 「遠い国から帰られたと
 うかがっております」
陳宝 「それほどでもありませんよ」
小林 「何かみやげはないんか」
陳宝 「みやげというほどではないけれど、
 先日命懸けの祭りに参加してね。
 追われ続けて、
 九死に一生を得たよ。
 その様子を録画したビデオを
 持ってきたよ」
北小岩 「ははあ、わかりました。
 スペインの牛追いでございますね。
 街路に牛を放ち、
 参加者は全速力で逃げるのですよね。
 時に死者まで出してしまうという
 激しさです。
 そのような祭りに参加する勇気は、
 わたくしには毛穴ほどもございません。
 さっそく拝見させてください」

弟子は闘牛士のポーズをとり、
中古のデッキにテープを入れた。

北小岩 「青い海と空。
 陽気な太陽。
 憧れのスペインでございます。
 おっ、陳宝さんの登場です」

陳宝氏は入念にウォームアップを行ない、
一団の前列に陣取る。
すぐに追いつかれないように、
人間が先にスタートするのだ。

北小岩 「ついに始まりましたね。
 みなさま、
 ちょっと引きつり気味のお顔で
 走っていらっしゃいます」

ドドドドッ。

北小岩 「猛牛が放たれたようでございます。
 ビデオで観ていても、
 地響きを感じます」
陳宝 「ただ逃げればいいというものでは
 ありません。
 勇気を持って触ったり、
 芸術的な走りをした人が
 表彰されるのです」

北小岩 「かなり近づいてきたのでは
 ないでしょうか。
 陳宝さんも
 今にも泣き出しそうでございます。
 あっ!!!」

氏は後ろを走っていた人とからまってしまい、
転倒したのだ。

北小岩 「危ない!
 角で突かれてしまいます!!」

怖がりな弟子は、目をつぶりうずくまってしまった。
先生がビデオを一時停止にする。

小林 「大丈夫や。
 目ん玉虫眼鏡にして、
 ようく見てみい」

北小岩くんは、
女子中高生がいやらしいものを見る時にするように、
指の隙間から瞬間的映像をのぞき見た。

北小岩 「あっ!」

陳宝氏が踏みつけられていたのは、
猛牛ではなく、3メートルはあろうかという
巨大なちんちんだったのだ。

陳宝 「北小岩さんがノリノリだったので
 つい訂正しそびれましたが、
 私が長期に渡って居住していたのは、
 スペインではなく、
 そのそばにある
 スペルマという国だったのです。
 お祭りも牛追いではなく、
 チン追いです。
 スペルマには太古から
 恐竜級のちんちんが生息しており、
 それを年に一回捕獲してきて放つのです。
 危険度からいったら、見境のない分、
 牛よりちんちんの方が危険ですね。
 私もすんでのところで助かりました。
 何トンもあるイチモツに
 のしかかられたのですが、
 幸運にも玉と玉の間の隙間に
 体が入っていたので、
 圧死せずにすみました」

北小岩 「そうでございましたか。
 とにかくご無事で何よりでした」

スペインのそばにあるスペルマ・・・。
そんな国ねえよ。

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2008-09-21-SUN

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