KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百九・・・地獄

「カラカラカラ〜ン!
 おめでとうございます!!」

「でかしたっ!」

今朝方、弟子が門前を掃除していると、
紙切れが箒にはさまった。
誰かがケツを拭いた紙かもしれぬと身構えたが、
さにあらず。
商店街の福引券であった。
さっそく福引所に赴き、
一等をとらなきゃ指浣腸するで!
という師のプレッシャーをはねのけ、
弟子は温泉・地獄めぐり(二人分)のチケットを
見事手中に収めたのだ。

北小岩 「温泉は久しぶりでございますね」
小林 「ああ。
 特に今回、
 あまりにも有名な地獄めぐりや。
 命の洗濯にはもってこいやで」

出発当日、二人は東京ぼん太のような風呂敷を背負い、
集合場所にトーテムポールのように立っていた。

小林 「俺も初めてなんやが、
 地獄めぐりはかなりエグイ。
 血の池地獄、龍巻地獄・・・。
 後学のために、体験しとくべきやろ」

二人を乗せたバスは、
10キロほど先の万所山(まんどころやま)の奥へと
分け入っていった。

運転手 「着きましたよ」
北小岩 「あれっ?
 わたくし、あまり詳しくございませんが、
 あまりに近すぎませんか?」
小林 「そんな気もするが、
 細かいことは言わんとこ」

先生と弟子は、
ちんちん型の矢印に従い、進んでいった。

小林 「まず一つ目の地獄やな」

そこには陰毛のような文字で、
『毛地獄』と書かれていた。

北小岩 「聞いたことのない地獄でございますね」
小林 「そやな。
 結構ぬるいわ」

二人は服を脱ぎ、温泉に浸かった。
すると岩の間から渦が巻き起こり、
二匹のすっぽんが躍り出た。

小林 「やばい!
 局部を隠せ!
 食いつかれたらしまいやで!!」

だが、すっぽんが狙ったのは如意棒ではなく、
下の毛だった。
二人の毛に噛み付くと、凄まじい勢いで泳ぎ始めた。

小林 「うお〜っ!」

もちろんすっぽんは、雷が鳴るまで放さない。

ビリビリビリ!

北小岩 「ぎょえ〜!!」


毛の付け根に、雷のような激痛が走った。
二人の陰毛は無残にも引き抜かれてしまい、
どでかい10円ハゲのようになってしまった。
あまりの痛さに温泉を飛び出したのだが、
そこは次の地獄『穴地獄』であった。

北小岩 「なんでしょうか、
 この気泡は?」

気泡は二人に近づくと、
急に速度を上げケツの穴に入ってしまった。

ぷ〜っ!

小林 「しまった!
 今のは屁の泡だったんや。
 肛門の奥で、屁が破裂してしもうた」
北小岩 「ぎょぎょぎょぎょご〜〜〜。
 体の中で屁をされることほど、
 気持ちの悪いことはございませ〜〜〜ん」

お尻の穴を押さえながら逃げ出すと。

小林 「今度は何や?」
北小岩 「玉地獄と書かれております。
 しかし、
 普通の温泉のようでございますね」
小林 「そうか。
 やっと天国にたどり着いたようやな」

しかし、油断は金玉。
いや、油断は禁物である。
玉のまわりの温度が急激に上昇したのだ。

小林 「あかん!
 温泉といえば温泉玉子やが、
 このままでは金玉が
 温泉金玉子にされてしまう!」


そう。
玉地獄というのは、金玉の中身が固められ、
その周りは軟らかくされてしまう
恐るべき地獄なのだ。
二人はその後も
蟻の門渡りをほどかれてしまう『蟻地獄』、
竿に竹のような節をつけられてしまう『竿地獄』などを、
強引に巡らされてしまった。
世の中には、いろいろな地獄があって、
下半身を狙っているものなんですね。

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2008-10-05-SUN

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