KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百拾参・・・ランプ

小林 「♪ゆ〜焼けこ〜焼けで」
北小岩 「♪途方に暮れて〜」

先生と弟子のなさけない歌声が響く。

小林 「夕暮れというのは、
 どこか切ないものやな」
北小岩 「ポツンと灯りのともった家庭から、
 夕餉の香りがしてまいります。
 あそこのお家では、
 煮干を3匹焼いているようでございます」
小林 「むっ、あれはなんや!」
北小岩 「ナウシカに出てくる
 オームの赤い目でございましょうか!」
小林 「まったく違うな。
 どうやらケツの穴のあたりが
 光っているようや」

道行く人々の臀部が、時たま赤色の光を発するのだ。

ある男 「あれこそは、
 お尻のテールランプですな」


己のケツをこちらにむけ、
ランプを点けたり消したりしながら、
ある男が話しに割って入った。

小林 「なんや、お前は!」
ある男 「私は車のランプをつくっている、
 零細企業の社長さんです」
北小岩 「どうも胡散臭いでございますね。
 車のランプとお尻のランプが
 どう関係するのでしょうか」
ある男 「まず、
 自動車界の現状からお話しますと、
 若者の車離れが進んでいると同時に、
 都市部では自家用車不要論まで
 出てきています。
 これから自動車産業は、
 ますます厳しくなることが
 予想されるでしょう。
 となると、私たちのような小さな会社は、
 サバイバルしていくのが
 非常に困難になる。
 ですので、自動車用のランプを
 人用に転換していかなければ、
 にっちもさっちも
 いかなくなる恐れがあります。
 それで、まずはこの町から
 実験を開始したのです」
北小岩 「あのランプは、
 歩いている人が止まると
 点灯するのですか」
ある男 「そうではありません。
 お尻の穴を締めると点いて、
 ゆるめると消えます」
北小岩 「そんなものが必要なのですか」
小林 「必要と言うより重要やな。
 階段を上っている時や
 信号待ちをしている時、
 前にいるヤツが強くケツの穴を締めすぎ、
 峡谷のようにズボンに割れ目が
 ついてしまっていることがある。
 それを見てしまうと、
 他の人もケツの穴を
 締めているのかどうか、とても気になる。
 だから今、
 人のケツがどのような状態にあるのか
 手に取るようにわかることは、
 かなり大切なことや」
ある男 「そうですね。
 それにお尻の穴を締めることは、
 ケツ筋の運動にもなり、
 ヒップの形もよくなります。
 体がピンとして姿勢にも好影響を与える。
 いいことずくめです。
 人から見られることで、
 締めがいもあるというものです」
小林 「なるほどな。
 ところで、他にはどんなものがあるんや」
ある男 「方向指示器用のものを応用し、
 右脳を使っている時には右のウィンカー、
 左脳を使っている時には左のウィンカーが
 作動する装置もあります」
小林 「知的やな。
 俺にぴったりや。
 ちょっと貸してみい」

先生が装着すると、左右のランプが同時に点滅した。
そして、点滅速度が急激に上がっていった。

小林 「?
 こりゃ、壊れとるで」
ある男 「スケベなことを考えると、
 ハザードランプに切り替わるのです。
 チカチカが激しいのは、
 とんでもなくスケベな邪念が
 渦巻いている証拠ですね」
小林 「・・・」


時代の急激なる変化。
その波に乗り遅れた企業は、
巨大な渦に巻き込まれてしまうかもしれない。
零細企業社長の先見は、
果たしていかがなものでしょうか。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2008-11-02-SUN

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