KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百弐拾四・・・防寒

先生が闘いにやぶれた猿のように肩を落とし、
一点を凝視している。

北小岩 「どうなされましたか。
 お顔も上気しております。
 僭越ながらわたくし、
 全力でお力になりたいと存じます」
小林 「そう言われてもなあ」

先生の手には一枚の葉書が握られている。

小林 「俺の高校時代の友だち、
 Mを知っとるやろ。
 彼から寒中見舞いが届いたんや。
 やつのお父さん、なくなってたんやな」
北小岩 「それはご愁傷様でございます」
小林 「喪中とは知らずに
 俺は年賀状を出してしもうた。
 それは仕方ないにしても、
 こちらの郵便番号を記載する欄に、
 『ちんぽでか男君』と
 たわけたことを書き、
 お年玉宝くじの牛の絵には、
 『プ〜〜〜〜〜〜!』と
 屁が出たように描いてしもうたんや。
 喪中の男に送る年賀状やないやろ」

北小岩 「先生はいい歳をして
 まだそんなくだらな」
小林 「いい歳?
 くだらない?」
北小岩 「いえ、めっそうもございません。
 先生のご友人にとって
 今年がいい年であることを
 心から願わずにおられないと
 申し上げようとして」
小林 「まあええわ。
 それにしても今日は寒いな。
 心まで凍えそうや・・・」

しょげかえる師を見て放っておけない弟子は。

北小岩 「先生は
 尋常ではない寒がりでございますよね。
 今の季節、就寝時には
 布団を7枚かけていらっしゃいます。
 夜中に布団の重みで首が締まって、
 『うううぎゃほわ〜〜〜』と
 うなされながら
 お目覚めになることもございます。
 わたくし、
 そんな先生をあたためるために、
 様々な防寒対策を考えてまいりました」
小林 「北小岩・・・、
 お前ってやつぁ」

先生の目があたたかいもので満たされた。

北小岩 「今年の日本の経済状況ですと、
 どうがんばってもなかなか
 賃上げまでは望めそうもありません。
 そこで自分のチンを上げながら
 あたたかくなるのです。
 ネックストラップの
 先についている輪っかを己自身に通し、
 首で引っ張る形にします。
 その刺激で、チンが熱を発し、
 寒さをひと時
 忘れることができるでしょう」
小林 「自らチン上げに挑むポジティブさは、
 評価できるな」
北小岩 「次は歌麿キムチでございます。
 キムチを食べると、
 体がポカポカしてまいります。
 それを応用するのです。
 食用のキムチは食べやすいように
 裁断されておりますが、
 歌麿キムチは違います。
 丸ごと一株漬けるのです。
 それから唐辛子、にんにくなどを加え、
 味をととのえます。
 2日ほど冷蔵庫で熟成させ、
 それをイチモツに装着。
 つまりキムチがイチモツを
 食べる形にするのです。
 最初は冷んやりですが、時間がたてば
 芯からあたたまってくるでしょう」
小林 「発想は悪くないが、
 白菜を丸ごとイチモツで支えられるような
 豪の者は、それほどおらんやろ」
北小岩 「でしたらこれは。
 わたくし、試作品を作ってまいりました。
 尻ばさみと申します。
 この巨大な洗濯ばさみ状のもので、
 お尻の山と山を閉じる形で締めます。
 そうすればお尻の肉が熱をもち、
 ぬくぬくすることができましょう。
 先生は落ち込まれておられますが、
 尻ばさみをすれば憂いも吹き飛びます。
 どうぞご装着ください」

言うやいなや、弟子は先生のケツを尻バサミで挟んだ。

小林 「いっ、痛いやんけ〜〜〜〜〜。
 こら、早くとらんかい〜〜〜!」
北小岩 「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!
 申しわけございません。
 わたくしの非力では、
 外すことができません!」

小林 「けっ、ケツが割れる〜〜〜。
 いや、ケツは最初から割れとった。
 ケツの穴で呼吸ができ〜〜〜〜〜ん」
北小岩 「しばしお待ちを!
 町外れにお住まいの元幕下力士・
 玉出し山を呼んでまいります!」

先生、あんたはケツの穴で呼吸をしとるんかい、
と突っ込みを入れたくなるものの、
思ったよりも事は重大であった。
弟子が玉出し山を連れて戻ってきた時には、
先生のケツは真っ青になり、卒倒してしまっていた。

防寒具にもいろいろある。
だが、まだ試験段階にあるものは、
軽い気持ちでトライしないほうがいいだろう。
極度の寒がりの方は、特にお気をつけくださいませ。

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2009-01-18-SUN

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