北小岩 |
「さくさくして、
気持ちいいでございますね」 |
小林 |
「そうや。
足の裏がカキ氷を食っているような
感触やな」 |
先生と弟子は、霜柱を踏みつつすり足することを、
冬第一の楽しみにしていた。
「Crouch and hold!」
「engage!」
ガッ! ズザザザ!!
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小林 |
「おっ、やっとるな!」 |
町唯一のラグビーチームが、スクラムの練習をしている。
スクラムハーフが蹴ったボールがチャージされ、
ラインを割った。
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北小岩 |
「こちらに転がってまいります」 |
小林 |
「俺も若い頃、
体育の授業でならしたことがある。
まあ、見ておけ」 |
先生は不規則なボールの動きに対応できずに後逸。
その上、ドロップキックしようとしてから蹴りし、
股関節が鈍い音を立てると同時に、
その場に崩れた。
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小林 |
「まっ、股が〜〜〜〜〜〜」 |
ラガー
マン |
「大丈夫ですか?」 |
小林 |
「あっ、ああ。
俺の股間のボールがでかすぎて、
バランスを崩してしまったわ。
なんてことないわ」 |
ラガー
マン |
「よかった。
心配しましたよ」 |
北小岩 |
「いつも練習ご苦労様でございます。
みなさま、ほんとに熱い方々ですね」 |
小林 |
「そうやな。
君らを見ていると青春時代を思い出すわ」 |
ラガー
マン |
「私たちが熱い?
そんなおこがましい」 |
小林 |
「謙遜なんて、しなくてええぞ」 |
ラガー
マン |
「いえいえ、めっそうもない。
本当に熱い男は、
あそこの巨大な杉の木のある家に
住んでいる、熱杉さんという方ですよ」 |
上には上を行く男がいる。
二人はすぐに会いたい衝動を抑えきれずに、
訪ねることにした。
といっても、先生は弟子におんぶされてだが。
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北小岩 |
「こんにちは。
実はラガーマンに」 |
熱杉 |
「今、いいところだから
勝手に入って」 |
男は映画『マリリンに逢いたい』を鑑賞しているようだ。
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熱杉 |
「オスのワンちゃん、
シロがマリリンに逢うために
海を渡って・・・。うっうっ」 |
感極まって、頬を濡らしているようだ。
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熱杉 |
「あっ、あち〜〜〜〜〜〜〜!」 |
北小岩 |
「大丈夫でございますか?」 |
熱杉氏は流しまで猛ダッシュ。
必死の形相で顔を洗った。
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小林&
北小岩 |
「?」
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熱杉 |
「ふう。
おっ、顔を流したら尿意が」 |
股間を押さえながらトイレに駆け込んだ
熱杉氏だったが。
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熱杉 |
「あち〜〜〜〜〜、
ちんちんが〜〜〜〜〜」 |
再び叫び声を上げる。
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北小岩 |
「もしかすると熱杉さんは」 |
小林 |
「間違いないな」 |
そう。
熱杉氏の体内から放出される水分は、
沸騰しているようなのだ。
涙を流しては顔を火傷しそうになり、
小便をしては熱でちんちんの機能を失いそうになる。
ラガーマンの言うことはこのことであった。
人間はまだまだ奥が深い、といわざるを得ないであろう。 |
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