「梅の季節やなあ」
「白梅紅梅が、
可憐に共演していることでございましょう」
「花見の後に、熱燗で一杯なんてのも、ええな」
「頬にポッと、紅い花を咲かせつつ」
「ほな、行ってみるかいな」
馬鹿先生と阿呆弟子は、
春の陽気につられて梅園に向かった。
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小林 |
「春は名のみかと思っとったら、
ええぐわいにぬるんできとるな」 |
北小岩 |
「今までは股間も
寒さで引き締まり過ぎておりましたが、
ぶら〜んとできそうでございますね」 |
傾聴するに値しない会話を続けながら
歩く二人であった。
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北小岩 |
「先生、こんなところに、
はな見会場がございます」 |
小林 |
「俺たちが知らないうちに、
梅でもぎょうさん植えとったのか?
まっ、入ってみようやないか」 |
入園料69円を支払い、入場した二人だったが。
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怪しげな
呼び子 |
「さあさ、こちらへどうぞ!」 |
風体のいかがわしい男に促され、
第一会場に潜入してみる。
会場と言っても、三畳ほどしかない粗末なものだ。
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小林 |
「むっ! これは」 |
ベニヤ板が立てられ、
ど下手な筆で梅の木が描かれている。
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北小岩 |
「鼻がたくさん咲いております!」
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本来花がある部分に穴が空いており、
鼻が見えているのだ。
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怪しげな
呼び子 |
「ではこの触覚と羽をつけてください」 |
小林 |
「蝶々になって、鼻から鼻へ飛ぶんやな」 |
呼び子 |
「そうです。
こよりを持ち、
鼻の穴に入れてくすぐるのです。
見事にくしゃみをさせると、
扉が開いてにっこり微笑んでくれます。
絶世の美女をはじめ、
いろいろな方が鼻をつきだしています」 |
小林 |
「北小岩、お前が先鋒や」 |
北小岩 |
「承知つかまつりました」 |
北小岩くんは愛敬いっぱいに舞い、
きりっとした鼻筋のところへ飛んでいった。
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北小岩 |
「こちょこちょでございます」 |
鼻(1) |
「くっ、くしゅん」 |
可愛らしいくしゃみとともに、扉が開いた。
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鼻(1) |
「こんにちは。チュッ♡」 |
花よりも美しい女性が顔を出した。
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小林 |
「ええやないか。
俺はその上をいくで。
よ〜く見ておけや」 |
先生もこよりを持ち、
色白で小ぶりの鼻をこちょこちょした。
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鼻(2) |
「ぐわくしょ〜〜〜ん。
おう、なんか用か?」 |
顔を出したのは、
鼻だけが美しい薄汚いおっさんであった。
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小林 |
「おえっ!
北小岩、口直しや!」 |
先生はダッシュし、隣の会場に入っていった。
そこは菊の展示会と書かれていた。
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小林 |
「季節がまったく違う気もするが、
まあええ。
俺には楚々とした美しさの菊が
似合っとるんや」 |
だが、そこもベニヤ板に菊が描かれ、
開いている穴からは、
たくさんのケツの穴が出されているのであった。
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小林 |
「うげえ〜〜〜〜。
俺の負けや」
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一方的に敗北宣言し、会場を全速力で飛び出した先生。
梅園を訪れる皆様は、
このようなインチキイベントには目もくれずに、
正統の梅まつりに参加しましょうね。
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