北小岩 |
「土は偉大でございます」 |
何のとりえもない弟子が、
虫メガネで地面を観察している。 |
北小岩 |
「とんでもなく小さな生き物が
蠢いているのが分かります。
植物はもちろん、あらゆる生物は、
結局土がなければ
生きられないのでございましょう」 |
小林 |
「そんなところで
また大地に語りかけとるんかい」 |
北小岩 |
「そういえば、
土にはちつがあると
うかがったことがございます。
女性なのですか?」 |
小林 |
「大地の母と言うがどうかな。
啓蟄と言う言葉には、
ちつが入っとるな」 |
二人の会話に耳をすますのは、時間の無駄である。
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小林 |
「今立っている場所の地下でさえ、
我々にとっては未知の世界や。
さぐってみる必要があるやろうな」 |
さぐるより、まさぐる方が好きな二人であったが、
ともかく町内第六十九番目の隠居『地下じいさん』に
現状を語ってもらうことにした。
じいさんは体を半分土に埋めながら、生きている。
ぶお〜〜〜!
特殊な角笛を吹くと。
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地下
じいさん |
「誰じゃ! なんか用か!!」 |
北小岩 |
「申しわけございません。
実はちつに、いえ、
地下についてうかがいたいと思いまして」 |
地下
じいさん |
「そうかい。
地中もここ数十年で
だいぶ様変わりしてのう。
とても地味な印象をもっとると思うが、
随分華やかになってのう。
地下では花見のかわりに、
根をみて楽しむ根見会が行われるんじゃ。
色白でスレンダーで、なかなか艶かしいぞ」
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小林 |
「かなり趣味性が高いんやな」 |
地下
じいさん |
「夏になれば、地下水を使って、
地下水浴も堪能するんじゃ。
ビキニと言うより、全裸に近い姿でな。
うひひひひひひ」 |
ひとりで興奮するスケベじいさん。
誰が全裸で水浴するのか、皆目見当がつかない。
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地下
じいさん |
「おしっこが深くまで染み込まんように、
『小便返し』という生き物がおるな。
玉金から根のようなものが伸びていて、
それで吸いあげて
先っぽから出すんじゃ。
尿の種類によっては、
聖水と呼んでありがたがることも
あるようじゃが」 |
北小岩 |
「Mな生物でございますね」
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地下
じいさん |
「下の世界に住んでいるオスは、
当然金玉が光っている。
暗すぎる場合は、
ハイビームにすることもできる。
その状態を、
ハイボールと言うこともあるな。
すれ違う時は金玉光を
下向きにするのがエチケットじゃ」 |
小林 |
「いずれにせよ、
あんまり楽しいこともなさそうやな」 |
地下
じいさん |
「そんなことはない。
みみずが千匹集まっているところがあって、
そこを通ると極楽じゃ〜〜〜」 |
土の中には、野球選手もいるらしい。
土の圧力に抗い速い球を投げ込む。
一流と呼ばれる選手は、
上の世界より桁外れのレベルだ。
旅行会社もあるが不人気。
旅しても景色がほとんど変わらないからだ。
また、地下で迷子になると大変。
目印がないので、戻ることができない。
まあほとんど、どうでもいいことだが。
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