KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百参拾四・・・家

「よいしょ〜!」

「よいしょ〜!」

昼日中から、まぬけ面で四股を踏んでいるのは、
ご存知阿呆先生&頓馬弟子。
彼らは町の境界である橋の真ん中の線に
蟻の門渡りを合わせ、必ずこの動作をするのである。

小林 「さあ、隣町に入りまひょか〜」

意味がないので、無視することとしよう。

北小岩 「このあたりも、
 随分変わったお家が増えましたね」
小林 「そうやな。
 あそこの屋根を見てみい」
北小岩 「うっ!」

屋根の上に、
何本ものちんちん状のモノがそそり立っている。
キューポラのある街ならぬ、
チンポラのある街である。

「あれは、避雷チンというものです」

いつの間にか、
自分の頭にも避雷チンを立てた男が横にいた。
頭部に雷が落ちれば
オー! NO(脳)!! になるが、
おかまいなしだ。

北小岩 「ここ数年で、
 この町の家も
 だいぶ変わってきたようですね」
避雷チン男 「そうですな。
 家に詳しい私でも、
 かなりびっくらこきこきですよ。
 案内いたしましょう」

頼んでもいないのに、勝手にガイドを買ってくれた。

避雷チン男 「ここから徒歩5分のところに、
 意表をついた家がたくさんありまっせ」

意表をついた家?
ろくなものではなさそうだが、
二人は金魚の下痢フンのように、後をついていった。

避雷チン男 「ここですな」

ここですといわれても、空地に間隔をあけて、
人がただ立っていたり
座っていたりするだけのようにしか見えない。

北小岩 「家らしきものが、
 どこにも見あたりませんが」
避雷チン男 「甘いですなあ。
 一言ことわって、
 中に入ってみてください」
北小岩 「そうでございますか。
 大変申しわけございませんが、
 おじゃましてもよろしいですか」
空地に佇む
男A
「どうぞ、お入りなさい」

どこが入口だか、とんと見当がつかぬ。
疑心暗鬼で弟子が一歩踏み出すと。

北小岩 「くっ、臭いでございます!」
空地に佇む
男A
「早く入りなさい!
 目に見えないと思いますが、
 ここにはちゃんとドアも壁もあります。
 おならの匂いで、作っているんです」
北小岩 「なんと!」  
空地に佇む
男A
「そこにある脚立を上って御覧なさい」
北小岩 「うぐっ! 再び臭いでございます」
空地に佇む
男A
「三階建てなんですよ。
 天井も屋根も、もちろんありますよ」

小林 「見事や!
 屁っきん臭クリート三階建て
 というところやな」
避雷チン男 「あなたは、あちらのお宅にどうぞ」

先生が用心しながら、入っていくと。

小林 「むむっ、これは!」

そう。
そこは音で作られた家だったのだ。
その領域に入ると、今まで聴こえなかった
「♪おめこおめこおめこ〜」というメロディーが
耳に飛び込んできた。

避雷チン男 「この場所には、匂いでできた家、
 音でできた家を始め、光でできた家など
 様々なものがございます。
 光でできた家は、
 日が傾くと小さくなっていくという、
 儚いお家です。
 それぞれ、結構間取りも
 しっかりしているんですよ」


家と聞けば固定観念から、
形の見えるものを想像してしまう。
だが隣町には、そんな常識を復す戸建てが
続々登場しているのである。
この動きには、しばし注目したい。

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2009-03-29-SUN

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