KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百参拾六・・・麺

小林 「随分ポカポカしてきたな」
北小岩 「これからは、股間も蒸れますね」

新緑が美しいこの季節。
二人はお互いのぞき見ないようにし、
縁側で陰毛にひなたぼっこをさせている。

小林 「我が毛も冬に比べると、
 イキイキしとるわな」

言われてみれば、そんな気もする。

北小岩 「蟻が数匹やってきて、
 毛の並木を散歩しております」
小林 「陽気がいいし、
 家族でピクニックでもしとるんやろ」

そんなことはないだろう。

北小岩 「庭のつるも伸びてきていますね」
小林 「つるつるつるやな。
 つるつる・・・。
 なあ、急に
 ラーメン食いたくなってこんか?」
北小岩 「いいですね。
 ぜひ、つるりましょう」

二人は骨董の壺を桐の箱におさめるように、
陰毛を大事そうに褌に仕舞い、
隣町のはずれにある行列のできるラーメン店裏の
『珍万楼』に向かった。

北小岩 「以前拾った雑誌で
 拝見したことがございます。
 女性用、男性用のラーメンが
 あるそうですね。
 あっ、ここでございます」

弟子が露払いとなり、金玉色の暖簾をくぐる。

北小岩 「あそこの席で、
 色白細面の女性が
 召し上がっております。
 女性用ラーメンでしょうか」
小林 「上品なおなごは、
 すすり方まで艶っぽいわな」
北小岩 「むっ、あの動きは!
 わたくし、興奮してきてしまいました」
珍万楼
店主
「お二人さん、初めてかな」
小林 「そうや。
 もしかすると、あのラーメンは!!」

世にも変わったラーメンである。
麺は超極太のものが一本だけ。
男が人差し指と親指で、
輪っかを作ったぐらいの太さなのである。
女性は超極太麺を頬張る形になっているのだが、
熱さと太さのせいで奥まで飲み込めず、
くわえたまま顔を上下させているのだ。

珍万楼
店主
「『フェラーメン』といいます。
 解説は野暮というものでしょう」


北小岩くんが己を屹立させてしまうのも、
無理はなかった。

小林 「奥の席に座っている、
 よれた背広を着た男たちが
 食べている麺は、なにやら貧相やな」

丼の中には、伸びきった麺、千切れたなると、
擦り切れた焼き豚が漂っていた。

珍万楼
店主
「哀愁の『サラリーメン』です」
北小岩 「あれはなんて言うのでしょう。
 丼の上に
 お面のようなものが置かれていて、
 恐怖心を煽られるのですが」
小林 「エジプトな感じがするな」
珍万楼
店主
「『ツタンラーメン』ですね。
 食べる人によっては、
 呪われてしまうこともあるようです」

北小岩 「ひえ〜〜〜〜〜〜」

雑誌で話題のラーメン店珍万楼。
ここならではのメニューが多いのは確かであるが、
積極的に食べたくなるようなものは、皆無である。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2009-04-12-SUN

BACK
戻る