KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百参拾八・・・微妙

ぶんぶんぶ〜ん!

「これっ、あっちへいきなさい!」

瞬間移動するかのように、
花を求めて鋭い動きを繰り返す一匹の蜂。

「わたくしが吸うのでございます!」

気の強そうな蜂に果敢に立ち向かうのは、
気の弱そうな北小岩くんであった。

小林 「お前がマン花(まんばな)の
 蜜が大好物で、
 毎年この時期に
 ちゅ〜ちゅ〜しとるのはわかっとる。
 だが、蜂と取り合いするのも、
 ちょいと大人げないというか、
 人間げないというか、
 そんな気もするんや」

先生は形状が卑猥な花を、
勝手にマン花と呼んでいる。
そんな名前で呼ばれるぐらいなら、
雑草と呼ばれた方がどれほど幸せなことだろう。

北小岩 「この蜜は特別なのです。
 わたくしにとって、蜜と言うより、
 ミッチーと言っても
 過言ではございません」

師も師なら、弟子も弟子。
繰り出す言葉にまったく意味がない。

「やって来ましたが・・・」

裏木戸から、輪をかけて無意味な訪問者が現れた。

北小岩 「わたくしの友でございます」
小林 「挨拶が中途半端やな」

心底友思いの北小岩くんは、
中途半端な友の表情が、
いつにもまして中途半端なことに気づいていた。

北小岩 「深刻な話が
 あるようでございますね。
 中でじっくりうかがいましょう」

台所からこぶ茶とよっちゃんイカ、
そして特別に
ソースせんべいをつけて差し出した。

中途半端
な友
「僕がもてないことは、
 みなさまご承知の事と思います」

先生が満足そうにうなずく。

中途半端
な友
「とはいうものの、
 先日、小股の切れまくった女性と
 トントン拍子に事が運びまして」

先生の表情が般若にかわる。

中途半端
な友
「あなたなら、
 ブラジャーの上から
 胸を触っていいわ、
 ということになりました」
北小岩 「凄いではございませんか!」
中途半端
な友
「ところが・・・。
 彼女は触らせてくれる前に、
 ブラをかえてくるから待っててね、
 と言ったのです」
北小岩 「ぞくぞく」
中途半端
な友
「僕はてっきり
 セクシーブラに
 かえてくるのかと思い、
 ウハウハになってしまいました。
 でも彼女がつけてきたのは、
 『ブラタワー』というものでした」
北小岩 「ブラタワー?」
中途半端
な友
「両胸からブラがタワーのように
 突き出ているのです。
 僕はその先端を
 くりくり触らせてもらったのですが、
 本物の胸からは
 50センチも距離がありました。
 それでも僕は、彼女の胸を
 触ったことになるのでしょうか?」

小林 「びみょ〜やなぁ」
中途半端
な友
「それでも二人と
 も結構興奮してしまいまして、
 彼女はわたしのすべてを
 あなたにあげると言って、
 コンドーさんを
 手渡してくれたのです』
小林 「ほほう」

本来なら怒りまくる小林先生であるが、
事が簡単には進んでいかないだろうことを
察知し、余裕をかましている。

中途半端
な友
「装着してみると、
 先端まで5メートルもあるのですよ。
 彼女は先っぽを持って
 隣の部屋に行き、
 恥ずかしいからこっちに来ちゃダメ、
 と言いました。
 その後彼女はコンドーさんを
 迎え入れたらしいのですが、
 僕は彼女と関係を持ったことに
 なるのでしょうか?」
小林 「びみょ〜やなぁ」


世の中には、白黒つけがたい微妙なことが
数多く存在する。
今回のケースは、その最たるものであろう。
もっとも、議論するには値しない、
どうでもいいことではあるのだが。

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2009-04-26-SUN

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