にこやかな陽ざしと、爽やかな風。
日本で最も爽やかではない。
といっても過言ではない二人にも、
ゴールデンウイークはやって来た。
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小林 |
「黄金の連休が、俺たちを呼んどるな」 |
北小岩 |
「そうでございますね」 |
小林 |
「その呼びかけに、
我々はこたえねばならんな」 |
北小岩 |
「もちろんでございます」 |
とはいえ、時間はあれど金はない。
棒に赤マジックで印をつけて天高く放り上げ、
赤の方角にひたすら歩いてみることにした。
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小林 |
「空気も汚さんし、
ええ旅になることやろ」 |
二人が歩いているだけで、
どことなく空気が汚れる。
自動車などでの移動に比べ、
一見かなりエコに思えるが、
そうともいえない気もする。
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北小岩 |
「随分歩きましたね」 |
小林 |
「そうやな。
もうかれこれ、7時間は歩いとるな」 |
さすがにそれだけ進むと、
どこから出発しようとも、田畑や小さな林など、
いい感じの風景にたどりつくものだ。
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北小岩 |
「あの原っぱ中腹の方々を
ご覧ください」 |
小林 |
「ほほう。
私たちはゴールデンウイークを
満喫しているのです、
と絵に描いたようなヤツらやな。
もしかすると、
食い物にもありつけるかもしれん」 |
北小岩 |
「草に寝転がって、
ニワトリをかわいがっている方が
いらっしゃいます」 |
小林 |
「むっ!」 |
大した能力には恵まれていないが、
勘だけは妙に鋭い先生のセンサーに
何かが反応した。
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北小岩 |
「どうされましたか」 |
小林 |
「あの男は
かわいがっているのではない!
ニワトリに金玉を
あたためさせとるんや」
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北小岩 |
「あっ! ほんとうでございます。
ではあそこで、
たこ焼きをつくっている方々は」 |
小林 |
「たこ焼き器に水を入れ、
金玉を入浴させとる」 |
玉男 |
「よくわかりましたね。
下で弱〜く焚き火をし、
湯加減を調整しています。
言うなれば、金玉専用温泉ですな。
人肌にすると、気持ちいいんですよ」
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北小岩 |
「あなた方は、
ゴールデンウイークを
堪能されているわけでは
ないのですか?」 |
玉男 |
「ゴールデンウイーク?
私たちの趣向はそうではありません。
見ての通り
『ゴールデンボールウイーク』を
楽しんでいるのです。
現代では金玉も
様々なストレスにさらされ、
日々しわくちゃになって
生きながらえているのです。
こんな時にこそ、
大いに開放させてあげなくちゃ」 |
小林 |
「なるほどな。
以前に比べ、俺のブツも
表情が険しくなり、
縮みあがっとる気がするわ」 |
玉男 |
「そうなんですよ。
ですから、癒してあげたり
自信を持たせてあげたりが
肝心なんですね」 |
子供の日には、金玉に小さな兜をかぶらせ、
緒を締めることで戦国武将の気持ちになったり、
金玉をこいのぼりのポール先端の玉に見立て、
大きい真鯉や、
小さい緋鯉をなびかせたりするという。
金玉冬の時代である21世紀。
ゴールデンウイークに
心の洗濯をするだけでなく、
男児はゴールデンボールウイークを設け、
己の金玉に愛を持って過ごすことも、
これからますます重要になってくることであろう。
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