「ああ、いい気持ちでございます。
たまにはゆったりした時間を味わうのも、
いいものですね」
公園のベンチに一人。
何をするでもなく、あごがはずれたような
間抜けな顔で腰掛けているのは、
弟子の北小岩くんであった。
「昼食のお弁当を食べるサラリーマンが、
増えました」
数年前までは、閑散としていたこの時間。
不況を反映してか、尻小玉を抜かれたように、
ゆる〜く箸を口に運ぶ年配たちで
ささやかな賑わいをみせている。
「アルマイトのお弁当箱でございますね。
新聞紙に包まれております。
そういえば、私の父も、
お弁当箱はあのようにして。
あっ!」
風に煽られて、
北小岩くんのところに新聞紙がやってきた。
「キャッチいたしました。
えっ!」
思わず目に飛び込んできた一面。
「これは凄いことでございます!
さっそく、先生にお知らせしなければ!!」
新聞をサラリーマンに渡すと、
そのままナンバ走りで家に戻った。
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北小岩 |
「先生!
ビッグニュースでございます!」 |
庭の土を盛り、
おっぱいの形にしていた師が振り向いた。
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小林 |
「なんや?
ビッグアヌスやと!」 |
北小岩 |
「いえ、そうではございません。
わたくし先ほど、
とてつもないニュースを
目にしたのです!」 |
小林 |
「どこかにパンティのなる木でも、
生えてきたんかい」 |
北小岩 |
「それもなかなか捨てがたいですが、
まったく違います。
アメリカで初の黒人大統領が
誕生したのです。
それもチェンジをキャッチコピーに
勝ち抜いたそうです」 |
小林 |
「そうか。
お前の新聞の拾い読みも、
よしあしやな。
拾い読みと言っても、
北小岩の場合は、
新聞自体を拾って読むから、
かなりのタイムラグがある危険性を持つ。
新聞は、一月の日付だったんやないか」 |
北小岩 |
「確かめておりません」 |
小林 |
「オバマについては、
誰もがとっくに知っとるわ。
まあ、ええ。
それよりも、今からここに
変わったチェンジをするようになった男が
来るんや。
そろそろやな」 |
「ごめんくださりませ〜」
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小林 |
「さっそくきたわ」 |
弟子が台所から、いつものように
よっちゃんイカとこぶ茶を運んでくる。
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北小岩 |
「始めまして、北小岩と申します。
先ほど先生から、
変わったチェンジをすると
うかがったのですが、
オバマ大統領のチェンジと
何か関係があるのですか?」 |
チェンジ
する男 |
「いいえ、まったくありません。
チェンジするようになったのは」 |
自分のイチモツを指さす。
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小林 |
「チェンジはんはな、
女性といたすとその度に
ちんちんの形がチェンジするように
なったんや」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
チェンジ
する男 |
「そうなんですよ。
まるで息子が、
陶芸の粘土になったような状態なのです。
昨日彼女と楽しんだ後には、
ポコチンがしゃもじのように
なっていましたね」
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小林 |
「彼女がそろそろ
家庭を持ちたいと思っている、
あらわれかもしれんな」 |
チェンジ
する男 |
「半年ほど前に、
前の彼女と交わった時には、
別れる寸前だったのですが、
イチモツはちくわ型になりました」 |
小林 |
「二人の関係は、
すでに空洞化しとったんやろ」
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その他にも、チェンジする男のポコは、
うちわのようになったり、
招き猫の手のようになったり、
ブタの鼻、十手、かたつむり、裸電球のようになったり。
その時々で、自分の意思とは関係なく
形をチェンジするという。
鳳凰や竜虎など、
かっこよさげなものにならないのは、
彼のちんぽの庶民性を物語っている。
アメリカではオバマ大統領という
大器によるリーダーシップでのチェンジ、
かたや日本では小さな性器による
スキンシップでのチェンジ。
思わずお国柄を考えずにはいられない。
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