ぶうんぶうん! ぴたっ。
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北小岩 |
「やっと止まりましたね。
くらえでございます!」 |
キーン!
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北小岩 |
「ううっ!」 |
小林 |
「また蚊と戦って負けとるんかい。
金はつぶれたかもしれんが、
蚊はつぶしそこねたで。
以前、知り合いのボクサーが
同じ間違いを犯しとったが、
お前も学ばんな」 |
北小岩くんは、
蚊に血を吸われることを極度に恐れている。
それで先制攻撃を仕掛けたわけだが、
止まったのは急所。
渾身の力を込めたパンチは、
天敵をとらえることはなく、
自分の玉を砕いただけだった。
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小林 |
「人生にも急所にもいろいろなことがある。
気を落とすな。
ちょいと、坂でも見物に行くか」 |
涙目でうずくまる弟子を励ますべく、
先生が肩をたたいた。
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北小岩 |
「いつもあたたかいお心遣いを
いただきまして、大変恐縮しております。
しかし、坂見物と言うのは、
どういうことなのでしょうか。
いろは坂や無縁坂のように、
有名な坂が近場にあるのでございますか」 |
小林 |
「まあ、着いてくるがよい」 |
二人はただ同然で買った
古ぼけたママチャリにまたがり、出発した。
先生宅から69キロほど離れたところに
その坂は存在した。
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北小岩 |
「むっ!」 |
弟子がただならぬ気配を感じたのも無理はない。
山状の地形で、上方に住宅地があるのだが、
坂道がスキー場のコースのように
何本にも分かれているのだ。
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小林 |
「とにかく、上に行こか」 |
二人が登っていったのはコースのような道ではなく、
迂回した急坂である。
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北小岩 |
「なぜ、近い道を通らないのですか」 |
小林 |
「地主の個人所有物なので、
勝手に通るわけにはいかんのや」 |
迂回路を登りきると、再び弟子が息を飲んだ。
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北小岩 |
「これは!」 |
コースの一つは、地面が鏡張りになっている。
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小林 |
「鏡坂やな。よく見てみい」 |
セクシーなミニスカ女性が、ゆっくり坂を下りていく。
スカートの中が映り、丸見えのウハウハ状態だ。
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小林 |
「横でにやにやしとるじいさんが、
ここの大地主や。
本来なら誰も入れないが、
特別に坂をつくり、
許可制で通れるようにした。
この坂を使わずに迂回路を通ると、
10倍時間がかかってしまうんや」 |
北小岩 |
「なるほど。
鏡坂を通れるのは、
ミニスカートの美女だけなんですね」 |
突風が吹き、スカートがまくれあがる。
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ミニスカ
美女 |
「いや〜〜〜〜〜ん!」 |
小林 |
「じいさんの仕業や。
昔新宿などに、
これに近い店があったな」 |
北小岩 |
「あちらの坂は」 |
小林 |
「ツイスター坂や」 |
一面にツイスターゲームの模様が描かれ、
これまた数人のミニスカ嬢が
ゲームをしながら下りて行く。
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北小岩 |
「なぜ余計時間がかかってしまうのに、
坂を使うのでしょうか」 |
小林 |
「セクシーに下りると、
じいさんから賞金が出るらしいんや」 |
水玉模様のミニスカを履いたギャルが尻餅をついた。
立とうとして、思わず顔を赤らめ手で前を隠した。
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小林 |
「ツイスター坂の地表は、
パンティーだけがくっついてしまう、
特殊な加工が施されとるんや。
だから尻をついたが最後、
ノーパンになってしまう。
じいさんは、
『パンティーほいほい』と呼んどる」
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北小岩 |
「うう〜。
ここは、男性は通れないのですか」 |
小林 |
「一番端っこに、急な坂があるやろ。
金止め坂や。
滑ってそのまま行くと崖になっとるので
骨折してしまう。
そこでポールが立ててある。
勢いをつけた野郎は止まるために、
両足を開いてポールを挟み込む。
しこたま玉を打つことになるが、
それしか止まる方法はないんや」
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どうやら、大地主は男が大嫌いならしい。
己の欲望に忠実なドすけべな大地主。
そんな男ほど、たちの悪い野郎はいないであろう。
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