KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百四拾伍・・・坂

ぶうんぶうん! ぴたっ。

北小岩 「やっと止まりましたね。
 くらえでございます!」

キーン!

北小岩  「ううっ!」
小林 「また蚊と戦って負けとるんかい。
 金はつぶれたかもしれんが、
 蚊はつぶしそこねたで。
 以前、知り合いのボクサーが
 同じ間違いを犯しとったが、
 お前も学ばんな」

北小岩くんは、
蚊に血を吸われることを極度に恐れている。
それで先制攻撃を仕掛けたわけだが、
止まったのは急所。
渾身の力を込めたパンチは、
天敵をとらえることはなく、
自分の玉を砕いただけだった。

小林 「人生にも急所にもいろいろなことがある。
 気を落とすな。
 ちょいと、坂でも見物に行くか」

涙目でうずくまる弟子を励ますべく、
先生が肩をたたいた。

北小岩 「いつもあたたかいお心遣いを
 いただきまして、大変恐縮しております。
 しかし、坂見物と言うのは、
 どういうことなのでしょうか。
 いろは坂や無縁坂のように、
 有名な坂が近場にあるのでございますか」
小林 「まあ、着いてくるがよい」

二人はただ同然で買った
古ぼけたママチャリにまたがり、出発した。
先生宅から69キロほど離れたところに
その坂は存在した。

北小岩 「むっ!」

弟子がただならぬ気配を感じたのも無理はない。
山状の地形で、上方に住宅地があるのだが、
坂道がスキー場のコースのように
何本にも分かれているのだ。

小林 「とにかく、上に行こか」

二人が登っていったのはコースのような道ではなく、
迂回した急坂である。

北小岩 「なぜ、近い道を通らないのですか」
小林 「地主の個人所有物なので、
 勝手に通るわけにはいかんのや」

迂回路を登りきると、再び弟子が息を飲んだ。

北小岩 「これは!」

コースの一つは、地面が鏡張りになっている。

小林 「鏡坂やな。よく見てみい」

セクシーなミニスカ女性が、ゆっくり坂を下りていく。
スカートの中が映り、丸見えのウハウハ状態だ。

小林 「横でにやにやしとるじいさんが、
 ここの大地主や。
 本来なら誰も入れないが、
 特別に坂をつくり、
 許可制で通れるようにした。
 この坂を使わずに迂回路を通ると、
 10倍時間がかかってしまうんや」
北小岩 「なるほど。
 鏡坂を通れるのは、
 ミニスカートの美女だけなんですね」

突風が吹き、スカートがまくれあがる。

ミニスカ
美女
「いや〜〜〜〜〜ん!」
小林 「じいさんの仕業や。
 昔新宿などに、
 これに近い店があったな」
北小岩 「あちらの坂は」
小林 「ツイスター坂や」

一面にツイスターゲームの模様が描かれ、
これまた数人のミニスカ嬢が
ゲームをしながら下りて行く。

北小岩 「なぜ余計時間がかかってしまうのに、
 坂を使うのでしょうか」
小林 「セクシーに下りると、
 じいさんから賞金が出るらしいんや」

水玉模様のミニスカを履いたギャルが尻餅をついた。
立とうとして、思わず顔を赤らめ手で前を隠した。

小林 「ツイスター坂の地表は、
 パンティーだけがくっついてしまう、
 特殊な加工が施されとるんや。
 だから尻をついたが最後、
 ノーパンになってしまう。
 じいさんは、
 『パンティーほいほい』と呼んどる」

北小岩 「うう〜。
 ここは、男性は通れないのですか」
小林 「一番端っこに、急な坂があるやろ。
 金止め坂や。
 滑ってそのまま行くと崖になっとるので
 骨折してしまう。
 そこでポールが立ててある。
 勢いをつけた野郎は止まるために、
 両足を開いてポールを挟み込む。
 しこたま玉を打つことになるが、
 それしか止まる方法はないんや」


どうやら、大地主は男が大嫌いならしい。
己の欲望に忠実なドすけべな大地主。
そんな男ほど、たちの悪い野郎はいないであろう。

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2009-06-14-SUN

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