KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百四拾六・・・傘

しとしとぴんぴん しとぴんぴん

北小岩 「また雨でございますね」
小林 「そうやな、
 股間もじくじくしてくるわ」

外出を控えたくなる天気ではあるのだが、
小林家に籠もったところで、
何百回読んだかわからぬエロ本を
再読するだけのことである。

小林 「ちょいとそこまで、
 散歩でもするか」

先生の傘は半分が骨むきだしになっているので、
前方にいないと差していることにならない。

北小岩 「雨中に歩を進めるのも、
 風流でございますね」

弟子の傘は軸がふにゃちんのように
しなだれているので、
手首でスナップをきかせないと用をなさない。

小林 「この季節、
 とにかくでんでん虫から学びたいわな」

相変わらず意味のない事を口走りながら、
そろ〜りと歩く。

北小岩 「先生、例年の梅雨景色と
 どこか違うような気がいたしませんか」
小林 「なんや?
 雨をシャワーがわりに浴びている
 全裸美女軍団でもおるんかい」
北小岩 「それは望むところなのでございますが、
 まったく異なります。
 町行く人の傘に、
 趣向が凝らされている気がするのですが」
小林 「確かにそうや。
 あそこのおなごの傘は、
 水槽状の凹みがあり、
 金魚を飼っているな」
北小岩 「優雅でございますね」
小林 「向こうにいる威勢のいいにいちゃんは、
 闘魚やな」

突っ張りにいさんの手にしている雨よけには、
闘魚(ベタ)が二匹入れられているため、
頭上で死闘が繰り広げられているのだ。
ギャンブル好きの人たちが、
取り巻いて賭けをしている。
 
北小岩 「ピアノの鍵盤のように、
 雨粒によって美しい調べを
 奏でている傘もございます」
小林 「あそこのアームレスラーみたいなヤツは、
 雨がぎょうさん溜まるように
 細工しとるわ。
 腕を鍛えながら歩いとるんやな。
 ダンベル傘といったところや」
北小岩 「水滴が落ちた瞬間、
 ジュッという音を立てて蒸発する、
 高熱を発しているものもあるようです」
小林 「むっ、あれはなんや!」
北小岩 「何かはわかりませんが、
 かなり猥褻であることは確かでございます」

「あれこそが、正真正銘の相合傘じゃな」

いきなり話に割り込んできたのは、
素っ裸でずぶぬれになっているのだが、
イチモツの頭の部分にだけ傘をさしている、
亀頭傘次郎吉という老人であった。

亀頭傘
次郎吉
「目ん玉ひん剥いて、よく見るんじゃ。
 あの睦まじき男女の傘には、
 局部がついとる。
 男の傘には男のモノ、
 女の傘には女のモノ。
 それを挿入しながら、
 肩寄せあって歩いとるんじゃ。
 揺れがいい感じのピストン運動になって、
 興奮してくるんじゃな。
 ほら、逆さクラゲに入っていきおったわ」

小林&
北小岩
「・・・」

雨の季節を苦手としている人は多い。
だが、それを逆手にとって、
傘で楽しもうという人が増えてきたのは、
さすが風流の国日本と言っても、
言い過ぎにはならないであろう。
まだ黎明期。
これからどんな趣向が飛び出すのか、注目してみたい。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2009-06-21-SUN

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