KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百四拾七・・・化石

「やっとお掃除もすみました」

頭に三角巾をつけ、
はたきと箒を手に清掃作業にいそしんでいたのは、
弟子の北小岩くんであった。

「塵芥の類は消滅させましたが、
 根本的な問題として、
 そろそろコタツを仕舞わねばなりませんね」

どこよりもゆっくりと時間が流れている先生の家。
夏の訪れもそう遠くはないというのに、
まだコタツを使っている。

「先生は、赤ランプを眺めながら
 物思いにふけるのが好きなのですが、
 さすがにもうよいでしょう」

師は、赤外線は赤い色だと勘違いしている。
目に見えるものではないのだが。

「おや?
 コタツに置かれた図鑑には、
 化石現生人類が載っておりますね。
 クロマニョン人・・・」

小林 「どした、遠い目をして。
 クロマさんに、興味を持ったんか」

まるで友だちのように呼ぶ、どぐされ先生。

北小岩 「そうでございます。
 昔々その昔の方はどのような暮らしを
 していたのでしょうか。
 興味がプ〜っと湧いてまいります」
小林 「そうかい。
 ほな、人類化石に詳しい
 俺の友人のところへ
 遊びに行ってみまひょ〜」

エロ本を貢ぐことで築き上げてきた
師の妙な人脈が、大いに役に立つ。
河原から拾ってきた壊れかけのリヤカーに乗り、
順番に引きながら、友人が主宰する研究所へ。

ゴツ!

「誰だ!
 扉にリヤカーで突っ込んだヤツは!
 何だ、先生じゃないか」

小林 「いやあ、ひさしぶり!
 今日は人類化石について、
 いろいろ伺おうと思ってな」

「おやすい御用。こちらへどうぞ」

研究所に足を踏み入れると、
そこかしこに見たことのない化石が鎮座している。

北小岩 「実にけったいなものが多いですね。
 むっ、
 これは何をしているのでしょう。
 新人が体を折り曲げ、
 股間に顔をつけようとしているように
 お見受けいたしますが」

「一人尺八をしようとして、
 無理な体勢をとっていた時に土砂に埋まり、
 そのまま化石になってしまったのですね」

小林 「俺の友人は、H考古学者なんや。
 我々の祖先のちょいとHな行動を、
 最新の視点から研究しとる」

H考古学者 「そうなんですよ。
 我々の祖先は、
 あまりおおっぴらに
 されていないのですが、
 祖先としてどうだかなあ、
 ということを色々試しているのです」
北小岩 「そうなのですか。
 でも、こちらの旧石器時代の益荒男は、
 石で武器をつくっているのでは
 ないですか」
小林 「目ん玉を目玉焼きのように見開いて、
 よ〜く見てみい」
北小岩 「はっ! この方は
 武器をつくっているのではありません。
 石で張り型を
 創作していらっしゃいます!
 でっ、でも、
 こちらの合掌している化石は、
 祈りを捧げているのでは
 ございませんか。
 あまりに真剣に祈りすぎて、
 指を骨折しているようですよ」
小林 「お前もまだまだ甘いな。
 この化石の人物は、
 女に指浣腸をしようとして
 指を突きたてた瞬間、
 女が嫌がって尻をひねったので
 骨折してしまったんや」
北小岩 「・・・」


我々の祖先は何を考え、
どんな行動をしていたのであろうか。
大きな脳を持ち、様々な武器、道具をつくり、
狩猟などをしていたことは事実であろう。
だが、あまりに人類らしいといえば
そういえなくもないが、
かなりしょうもないといえばしょうもなさすぎることも、
数万年前から行ってきたようだ。
まあ、いいではないか。

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2009-06-28-SUN

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