「やっとお掃除もすみました」
頭に三角巾をつけ、
はたきと箒を手に清掃作業にいそしんでいたのは、
弟子の北小岩くんであった。
「塵芥の類は消滅させましたが、
根本的な問題として、
そろそろコタツを仕舞わねばなりませんね」
どこよりもゆっくりと時間が流れている先生の家。
夏の訪れもそう遠くはないというのに、
まだコタツを使っている。
「先生は、赤ランプを眺めながら
物思いにふけるのが好きなのですが、
さすがにもうよいでしょう」
師は、赤外線は赤い色だと勘違いしている。
目に見えるものではないのだが。
「おや?
コタツに置かれた図鑑には、
化石現生人類が載っておりますね。
クロマニョン人・・・」
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小林 |
「どした、遠い目をして。
クロマさんに、興味を持ったんか」 |
まるで友だちのように呼ぶ、どぐされ先生。
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北小岩 |
「そうでございます。
昔々その昔の方はどのような暮らしを
していたのでしょうか。
興味がプ〜っと湧いてまいります」 |
小林 |
「そうかい。
ほな、人類化石に詳しい
俺の友人のところへ
遊びに行ってみまひょ〜」 |
エロ本を貢ぐことで築き上げてきた
師の妙な人脈が、大いに役に立つ。
河原から拾ってきた壊れかけのリヤカーに乗り、
順番に引きながら、友人が主宰する研究所へ。
ゴツ!
「誰だ!
扉にリヤカーで突っ込んだヤツは!
何だ、先生じゃないか」
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小林 |
「いやあ、ひさしぶり!
今日は人類化石について、
いろいろ伺おうと思ってな」 |
「おやすい御用。こちらへどうぞ」
研究所に足を踏み入れると、
そこかしこに見たことのない化石が鎮座している。
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北小岩 |
「実にけったいなものが多いですね。
むっ、
これは何をしているのでしょう。
新人が体を折り曲げ、
股間に顔をつけようとしているように
お見受けいたしますが」 |
「一人尺八をしようとして、
無理な体勢をとっていた時に土砂に埋まり、
そのまま化石になってしまったのですね」
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小林 |
「俺の友人は、H考古学者なんや。
我々の祖先のちょいとHな行動を、
最新の視点から研究しとる」
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H考古学者 |
「そうなんですよ。
我々の祖先は、
あまりおおっぴらに
されていないのですが、
祖先としてどうだかなあ、
ということを色々試しているのです」 |
北小岩 |
「そうなのですか。
でも、こちらの旧石器時代の益荒男は、
石で武器をつくっているのでは
ないですか」 |
小林 |
「目ん玉を目玉焼きのように見開いて、
よ〜く見てみい」 |
北小岩 |
「はっ! この方は
武器をつくっているのではありません。
石で張り型を
創作していらっしゃいます!
でっ、でも、
こちらの合掌している化石は、
祈りを捧げているのでは
ございませんか。
あまりに真剣に祈りすぎて、
指を骨折しているようですよ」 |
小林 |
「お前もまだまだ甘いな。
この化石の人物は、
女に指浣腸をしようとして
指を突きたてた瞬間、
女が嫌がって尻をひねったので
骨折してしまったんや」 |
北小岩 |
「・・・」
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我々の祖先は何を考え、
どんな行動をしていたのであろうか。
大きな脳を持ち、様々な武器、道具をつくり、
狩猟などをしていたことは事実であろう。
だが、あまりに人類らしいといえば
そういえなくもないが、
かなりしょうもないといえばしょうもなさすぎることも、
数万年前から行ってきたようだ。
まあ、いいではないか。
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