小林 |
「約束の日やな」 |
北小岩 |
「そうでございますね」 |
例年、先生が仕切っていた余興の会であったが、
今回から弟子に一任する事にした。
今日がその日。
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小林 |
「どんな趣向なんや。
こっそり教えなさい」 |
本来なら秘すべき事柄なのだが、我慢しきれない。
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北小岩 |
「本日は、
乳首自慢に声をかけております」 |
小林 |
「でかしたぞ!
ピンク色の果実を
じっくり鑑賞するのは、
数年ぶりや。
俺はいい弟子に恵まれて
しあわせや・・・」 |
目に涙を浮かべる師であったが、
弟子の表情はどこか硬い。
ビンビ〜ン!
並の家だと呼び鈴は
ピンポ〜ンと相場が決まっているが、
この家は邪気のある音がする。
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小林 |
「ゴクッ」 |
思わず生唾を飲み込む師であったが。
「チワ〜ッス!」
登場したのは、むくつけき野郎どもだった。
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小林 |
「何や、この惨状は!」 |
北小岩 |
「申しわけございません。
現在のわたくしの実力では、
乳首自慢の
美しいお嬢様方を招待するのは、
不可能でございました」 |
般若の形相に変わっていた先生の顔面だが、
ここで怒りを爆発させるのも
器が小さいと思い直し、平静を装った。
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小林 |
「しゃあない。
人生、いろいろありや。
君はどんな乳首をしとるのかね」 |
乳首自慢
の男Å |
「乳輪より乳首の方が大きいんです」 |
ポロシャツを一気にたくしあげる。
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小林 |
「うお〜っ!
まったく見たくないが、見事や。
意味のない歴史の目撃者に
なった気がするわい」
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乳首自慢
の男B |
「次は僕です」 |
Tシャツを脱いで見せるのだが。
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小林 |
「何や?
特長がまったくわからん。
しいていえば、
かすかに乳首の先から、
酸素が漏れとるような」 |
北小岩 |
「漏れているのは酸素ではなく、
二酸化炭素なのです。
CO2削減が正義とされている
現代にあって、
乳首から二酸化炭素を出す男は、
天上天下唯我独尊、
時代に拮抗しているのです」 |
小林 |
「一人よがりやな」 |
乳首自慢
の男C |
「おいらの自慢はこれです」 |
小林 |
「むむっ!
ぷっ!!」 |
思わず噴き出したのも、故あってのこと。
乳首の頭の部分に大量の乳毛が伸び、
まるでオールバックのようになっていたのだ。
果たして価値があるのか、馬鹿馬鹿しいのみか。
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小林 |
「余興はこれくらいにしとこ」
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先生宅で定期的に開催される会。
今回は乳首自慢が集ったわけだが、
野郎の乳首なんか見たくもないし、
想像したくもないであろう。
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