「もう夏でございますね」
干からびる寸前のなめくじが如く、
魂を抜かれた状態で歩いているのは、
弟子の北小岩くんであった。
「向こうから誰かが近づいてまいります」
顔を上げる元気もない。
しかし、その時・・・。
「ぐわはっはっはっ」
|
北小岩 |
「むっ、
一人でいるのに
いきなり大声を出すとは。
怪しい男に違いございません!」 |
自分で勝手に拳法をアレンジしてつくった、
チン法の構えで対峙した。
|
小林 |
「どうしたんや。
ビンビンに臨戦態勢やないか」 |
北小岩 |
「この方が。
あっ、わたくしの勘違いでございました。
携帯電話をかけているだけでした。
気合いを入れて、
攻撃を仕掛けようとしているのかと」 |
怪しい者に間違われた男は、
迷惑そうにそそくさと去ってしまった。
|
北小岩 |
「携帯電話・・・。
わたくしは一度も
手にしたことはございませんが、
どのようなものなのでしょうね」 |
小林 |
「そうやな・・・」 |
この師弟、携帯には縁がない。
なにせ近所の人たちとは、
糸電話で通話しているぐらいなのだから。
|
小林 |
「町のへそ下三寸あたりに
携帯電話屋さんがあるから、
行ってみるかいな」 |
もちろん購入資金などないのだが、
どの程度携帯が進歩しているのか確かめるために、
阿呆面さげて店内へ。
|
セクシー
女性店員 |
「いらっしゃいませ」 |
北小岩 |
「はっ、はい」 |
弟子はすでにあがってしまっている。
|
小林 |
「我々のレベルにふさわしいブツがあったら
買おうと思っとるんやが、どやろ」 |
セクシー
女性店員 |
「それはもう、ウハウハですよ」 |
何人もの男を弄んできたであろう妖艶な女性が、
説明を始めた。
|
セクシー
女性店員 |
「近頃流行のものは、
男女別仕様になっております。
特に女性用に、自信がございます」 |
北小岩 |
「どのような?」 |
セクシー
女性店員 |
「今までのモノはひらべった過ぎましたし、
握った時の感触にも、
硬さにも問題がありました。
女性を決して
満足させるものではありません。
そこで製造会社に依頼しまして、
特殊シリコンを用いて製品化したものが
これです!」 |
北小岩 |
「むっ!」 |
どう見ても、イチモツにしか見えない。
その先っぽに、てらてらと光る唇を押し当て、
『もしもしぃぃぃぃ、いいああ、いい』と、
意味もなく猥褻な言葉を口走る。
|
|
|
セクシー
女性店員 |
「この携帯のいいところは、
例えば地震が起きて長期間停電し、
電池残量がなくなった場合でも、
自己充電できることです。
三分間こうすればいいんですよ」 |
細い指で輪っかをつくり、
携帯の胴体をすばやく上下動させた。
|
北小岩 |
「わたくしはまだまだ修行が足りません。
充電しているのを見ているだけなのに、
興奮してきてしまいました」 |
セクシー
女性店員 |
「これは国内仕様なんです。
グローバルタイプは」 |
小林 |
「今の携帯は、
そのまま海外でも通話できるものがあると
聞いとるが、そうなんやろ」 |
セクシー
女性店員 |
「それももちろんですが・・・」 |
店員が顔を赤らめ取り出したのは、
国内仕様のモノより2倍ほど長くて太い携帯であった。
|
小林&
北小岩 |
「・・・」
|
その後男性仕様の製品についても
レクチャーされたのだが、
いやらしすぎて、ここに記すことはできない。
|