KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百伍拾八・・・警備隊

日に焼けた男たちが歩いてくる。精悍ではない。

小林 「ヒリヒリするわ」
北小岩 「いたたでございますね」

史上最低の先生と弟子は、
今年最後の海水浴に繰り出したのであった。
ヒリヒリするのは日焼けのせいではない。
なぜか両人とも、
巨大なプラモデルの箱を抱えている。
5時間ほど時を巻き戻してみよう・・・。

北小岩 「もうすぐ海水浴場でございますね」
小林 「うむ。あそこを見てみい」
北小岩 「水中メガネが捨てられております。
 それも都合がよいことに二つ」
小林 「神様が俺たちを
 極上気分にさせるために、
 放棄してくださったんやな」

それほど大袈裟な事ではないだろう。
ともかく水中メガネを装着し、
砂浜で金玉をにぎりながら
準備体操をしたお馬鹿さんたちは、
海に向かって疾走した。

小林 「水中メガネで泳ぐのは、
 初めてやな」
北小岩 「凄いでございます。
 お魚さんたちのヒレの動きまで、
 丸見えでございます」

驚くほどのことではないのだが、
今まで裸眼で遊泳していた者たちにとって、
別世界であった。

小林 「おっ、あそこに赤貝がおるな」
北小岩 「底にいるとは限らないのですね」
小林 「むっ、
 貝に指を入れそうなヤツがおる」
北小岩 「挟まれると危険です。
 注意して差し上げましょう」

二人はバタ足の速度をはやめた。

北小岩 「もし、そこのお方。
 そのままでは指を・・・。
 ぎょぎょぎょっ」
小林 「赤貝やなかった!
 女の秘所や!」


師弟ともにエロ本の読みすぎで、
視力が下降線をたどっている。
それで見間違えた。
海中であるのをいいことに、
カップルでお楽しみ中だったのだ。

「何だお前ら!」
「このどスケベ!」

パチーン! パチーン!

両人とも頬にびんたをくらった。

メガネを内側から涙で濡らした二人は、
不埒なカップルが群居しているのではと思い、
パトロールしてみると。
いるわいるわ。

北小岩 「ショックでございます。
 皆様、水中でみだらなことをさ
 れているのですね」

先生を横目で見ると、般若の形相にかわっていた。

小林 「帰るで」

澱んだ気持ちを胸に、帰宅の途についた。
帰りに買ったプラモデルは、
リモコン付きの潜水艦。
スクリューを鋭利なものに改造し、
猥褻野郎の玉金をえぐってやろうと考えたのだ。

今年はもう海に足を運ばない。
海中警備隊結成は、来年になる。
今から一年かけて、
完璧なものにしようと企てている二人、
どうしようもないことにだけ
本気になるんだよなあ。

 

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2009-09-13-SUN

BACK
戻る