ぶ〜ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん
ぶ〜ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん
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北小岩 |
「二匹の蚊が
ランデブー飛行でございますね」 |
ぶ〜ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん ぶ〜ぅぅぅ
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北小岩 |
「わたくしの手に、
止まりましたでございます」 |
弟子が標的を定めたその時だった。
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小林 |
「あはれ蚊予備軍や。まあ、許したれ」 |
北小岩 |
「とはいえ先生、
蚊たちは交尾しておりますが」 |
小林 |
「なに!」 |
たとえ虫であろうとも、お楽しみは許さない。
それが先生の芯の強さであるが、
果たしてそんな強さが必要なのか。
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小林 |
「俺がこの手で・・・あわっ」 |
蚊をつぶしそこねて
縁台から転げ落ちた先生を待ち受けていたのは、
のら猫のフンであった。
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小林 |
「しまった!
顔からこけたせいで、
猫糞が目に入ってしまった!」 |
北小岩 |
「それでは本当の目くそです。
猫フンはスモールながらも、
匂いはビッグでございます」
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先生は親にしかられた子供のように
涙をこぼしながら、台所で何度も何度も目を洗った。
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北小岩 |
「御難でございました。
ところで本日、
虫の声を聴く会でしたね」 |
小林 |
「そうや。
気分なおしに、
風流に参加しようやないか」 |
二人は通称女体山に向かった。
山頂には割れ目がある。
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小林 |
「俺はこの季節が好きでな。
虫たちの弦楽四重奏を聴くと、
いい感じで切なくなるんや」 |
会場に到着すると、宴は始まっていた。
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主催者 |
「ようこそいらっしゃいました。
さあさ、こちらへ」 |
小林 |
「モーツァルトかベートーヴェンか。
どんな虫楽四重奏を
堪能させてくれるのか」 |
師弟は指で掃除した耳をすましてみる。
第一ヴァイオリン虫が奏でる声「イヤ〜ン イヤ〜ン」
第ニヴァイオリン虫が奏でる声「ソコッ ソコッ」
ビオラ虫が奏でる声「アッ アッ」
チェロ虫が奏でる声「イイ〜〜〜〜」
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小林 |
「何や、これは!
切なくなるどころか」 |
北小岩 |
「わたくし、
いささか興奮してまいりました」 |
小林 |
「あそこを見てみい!」 |
北小岩 |
「はっ!」 |
看板には、虫の声を聴く会ではなく、
『虫のよがり声を聴く会』と書かれていた。
非風流人たちには、頃合いであろう。
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