KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百六拾壱・・・墓参り

北小岩 「かわいそうなことを
 いたしました・・・」

小さなシャベルで懸命に穴を掘っている。
日々を過ごした愛玩動物でも、
天に召されたのだろうか。

小林 「北小岩、なぜにふにゃちんみたいに
 しょぼくれとる?」

デリカシーのかけらも無い男の登場だ。

北小岩 「大切にしているものを失いまして」
小林 「どんな不幸があったんや!」
北小岩 「先ほど厠へまいりました。
 尿(いばり)を放ち終え、
 油断いたしました」
小林 「何のこっちゃ?」
北小岩 「不肖の息子を仕舞おうとした際に、
 陰の毛を二十本ほど
 チャックに挟んでしまったのです。
 抜くも地獄、抜かぬも地獄となり、
 結局切ることを選択いたしました」
小林 「なるほどな。
 本来は自然に抜けることで天寿全うやが、
 お前のミステイクにより、
 無駄死にさせてしまったんやな」
北小岩 「そうなのでございます。
 悲しくて悲しくて。
 今、陰の毛のお墓を
 つくっていたところでございます」
小林 「お前の気持ちはようわかる。
 そういえば、
 このところ墓参りしとらんな。
 お前のじんじろ毛くんたちの
 供養が終わったら、行ってみるか」

阿呆コンビは三角の布を額に貼り、
いんちきなムーンウォークで墓地に向かった。

小林 「ぼちぼち墓地やな」

お寒い風が吹きぬけてゆく。

北小岩 「ほんのり色香を漂わせたおばあさまが、
 お墓に水をかけていらっしゃいます」
小林 「むっ、水に見えて水やない。
 あのぬめりこそ・・・」

「よく気がついたなあ」

小林 「誰や、お前は」

「おいらは墓守の源治だ。
 確かに、あれは
 水じゃなくてローションだよ」

北小岩 「どういうことでございますか」

墓守の
源治
「あの墓にはじいさんが入っとるんだが、
 生前とんでもない
 スケベだったんだな。
 だからばあさんは、
 墓にローションをたっぷりたらし、
 よ〜く愛撫するんじゃ」
北小岩 「なんと!」

墓石は微かに身悶えているようであった。
おばあさんは、墓の真ん中よりやや下についている
錠をあけた。
目を凝らしてみると、中には御影石でつくられた
イチモツ状のものが鎮座していた。

墓守の
源治
「あまり知られてないことだが、
 墓にも性欲はたまるんだな。
 だから最低一年に二度は
 抜かねばならない」


おばあさんはブツにもローションをつけ・・・。

その先を語るのは止めておこう。
数分後に先端から飛び出した白いものは、
粉状の骨であったか。

墓を参るだけではなく、霊を満足させる。
それは、あの世でむずかる息子をもてあましている
スケベじいさんへの
最良の供養になるかもしれない。
なお、おばあさんがブツを慰める前に、
バイアグラをお供えしていたことも
付け加えておきたい。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2009-10-04-SUN

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