北小岩 |
「かわいそうなことを
いたしました・・・」 |
小さなシャベルで懸命に穴を掘っている。
日々を過ごした愛玩動物でも、
天に召されたのだろうか。
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小林 |
「北小岩、なぜにふにゃちんみたいに
しょぼくれとる?」 |
デリカシーのかけらも無い男の登場だ。
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北小岩 |
「大切にしているものを失いまして」 |
小林 |
「どんな不幸があったんや!」 |
北小岩 |
「先ほど厠へまいりました。
尿(いばり)を放ち終え、
油断いたしました」 |
小林 |
「何のこっちゃ?」 |
北小岩 |
「不肖の息子を仕舞おうとした際に、
陰の毛を二十本ほど
チャックに挟んでしまったのです。
抜くも地獄、抜かぬも地獄となり、
結局切ることを選択いたしました」 |
小林 |
「なるほどな。
本来は自然に抜けることで天寿全うやが、
お前のミステイクにより、
無駄死にさせてしまったんやな」 |
北小岩 |
「そうなのでございます。
悲しくて悲しくて。
今、陰の毛のお墓を
つくっていたところでございます」 |
小林 |
「お前の気持ちはようわかる。
そういえば、
このところ墓参りしとらんな。
お前のじんじろ毛くんたちの
供養が終わったら、行ってみるか」 |
阿呆コンビは三角の布を額に貼り、
いんちきなムーンウォークで墓地に向かった。
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小林 |
「ぼちぼち墓地やな」 |
お寒い風が吹きぬけてゆく。
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北小岩 |
「ほんのり色香を漂わせたおばあさまが、
お墓に水をかけていらっしゃいます」 |
小林 |
「むっ、水に見えて水やない。
あのぬめりこそ・・・」 |
「よく気がついたなあ」
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小林 |
「誰や、お前は」 |
「おいらは墓守の源治だ。
確かに、あれは
水じゃなくてローションだよ」
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北小岩 |
「どういうことでございますか」
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墓守の
源治 |
「あの墓にはじいさんが入っとるんだが、
生前とんでもない
スケベだったんだな。
だからばあさんは、
墓にローションをたっぷりたらし、
よ〜く愛撫するんじゃ」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
墓石は微かに身悶えているようであった。
おばあさんは、墓の真ん中よりやや下についている
錠をあけた。
目を凝らしてみると、中には御影石でつくられた
イチモツ状のものが鎮座していた。
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墓守の
源治 |
「あまり知られてないことだが、
墓にも性欲はたまるんだな。
だから最低一年に二度は
抜かねばならない」
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おばあさんはブツにもローションをつけ・・・。
その先を語るのは止めておこう。
数分後に先端から飛び出した白いものは、
粉状の骨であったか。
墓を参るだけではなく、霊を満足させる。
それは、あの世でむずかる息子をもてあましている
スケベじいさんへの
最良の供養になるかもしれない。
なお、おばあさんがブツを慰める前に、
バイアグラをお供えしていたことも
付け加えておきたい。 |