「くしゅしゅしゅしゅん」
せんべい布団から2メートルほど離れた場所で、
すかしっ屁のようになさけないくしゃみをこいたのは、
弟子の北小岩くんであった。
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北小岩 |
「しまったでございます。
就寝時に蒸し暑い気がいたしましたので、
褌一丁で休んだところ、
妙な夢を見てしまい冷え込みました」 |
つまりこうだ。
弟子は巨大なフンコロガシに転がされる夢を見た。
極端に影響を受けやすいために
実際に転がってしまい、
布団から飛び出して寝てしまった。
そこで朝の冷えに襲われ、
風邪っぽくなってしまったのである。
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小林 |
「くしゃみ一つで現れたからといって、
俺はハクション大魔王やないで。
たいした望みはかなえられへんが、
どしたんや」 |
北小岩 |
「あっ、先生。
望みなどとはめっそうもございません。
わたくし、
ちょいと冷えてしまいましたので、
少しばかり体をあたためたいと」 |
小林 |
「ならば請合った。
隣の隣の隣町に、植物園ができたな。
あそこの植物ドームなら
ほどよいあたたかさに調整されとる。
行ってみるか」 |
二人は蝶のように舞いながら
(はたから見るとバカ踊りにしか見えないが)、
植物ドームに向かった。
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北小岩 |
「うわ〜、観た事も無い植物が
てんこ盛り盛りでございますね」 |
小林 |
「そやな。
この室温もちょうどええやろ」 |
北小岩 |
「はい。
むっ、あれは何でございましょうか」 |
地面を這っている草に、
どうみても金玉にしか見えないものがついている。
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植物館長 |
「あれはヒトノフグリですね」 |
北小岩 |
「ヒトノフグリ?
イヌノフグリなら
聞いたことがございますが、
そのようなものが存在するとは」 |
小林 |
「北小岩、凝視せい!」 |
いつの間にかボンテージファッションの女性が現れ、
ヒトノフグリの実にデコピンの要領で
攻撃をしかけている。
指が的確にとらえるたびに、
ヒトノフグリは痛そうに飛び跳ねている。
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北小岩 |
「なるほど。
似ているのは形状だけではないのですね」
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先生と弟子は眉間に皺を寄せて、
自分のフグリを握っていた。
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小林 |
「ボンテージの女が動くで」 |
後をつけてみると、そこは熱帯の部屋だった。
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北小岩 |
「ひとつひとつの花が
信じられないほど大きいですね」 |
女は巨大化した20センチのおしべを数回しごくと、
計6本を根本から折ってしまった。
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小林 |
「うお〜」 |
二人は雄叫びをあげた。
どうみてもちんちんにしか見えないおしべなので、
致し方なかろう。
おしべがなくなると、
それはどうみても女性の・・・。
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小林 |
「なんという卑猥な花弁や!」 |
植物館長 |
「忘れられな草ですね。
一度見ると、
殿方は忘れられなくなってしまいます」 |
北小岩 |
「先生、わたくしいきなり大便意が!
もう猶予なりません」 |
植物館長 |
「むこうにトイレットペー草があるので、
用を足したら使いなさい」
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トイレットペー草とは、
普段は巻紙のようになっているのだが、
ひっぱると紙のようになり、
ケツを快適にふくことができるのである。
献身的な草のおかげで、北小岩くんは事なきを得た。
それにしても、植物の世界には
まだまだ未知の種が数多くあるのですね。
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