KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百七拾弐・・・忘年会

「早いものでございますね」

庭の一隅に小石を置きながら。

「今年もあとわずか。随分たまったものでございます」

誰にともなく語りかけるのは、
弟子の北小岩くんであった。
何がたまったのかと言うと。

北小岩 「わたくし、元旦より毎日、
 この場所に小石を一つずつ
 置いてまいりました。
 350以上の石を眺めておりますと、
 さりげなく一年が過ぎていくようでも、
 これだけの日々の積み重ねがあったのだと、
 心に沁みてまいります」

詩心があるのか否か。それはわからない。

小林 「おう、北小岩。
 何しとるんや。
 エロ本の切れ端に
 女の秘所でも写っとったか」
北小岩 「そうではございません。
 ひとつひとつの石を眺め、
 今年を振り返っていたのです」
小林 「ほほう。
 それでお前は、
 今年何度金玉を触ったんかい」

師に詩心などを求めるのは無駄であろう。

北小岩 「一日平均7回ほど触るといたしまして、
 一年で2500回は超える計算になります」
小林 「そやろ。
 ところで忘年会には誘われとるんか」
北小岩 「皆無でござます。
 一人、よっちゃんイカにこぶ茶で、
 締めくくろうかと」
小林 「しゃあないな。
 今から会に出張るところや。
 お前も来いや」

二人は酔うと方向感覚を失うので、
各自方位磁石を手に、会場へと向かった。

北小岩 「どんな忘年会なのでございましょうか」
小林 「俺も初めて参加するんや。
 下半身に関係する会らしいから、
 ウハウハな思いができるかもしれんで。
 おっ、ここや」

『金玉忘年会』と書かれた暖簾をくぐると。

主宰者 「あっ、先生よくいらっしゃました。
 こちらへ」

座敷に上がると、
10人ほどの男が金玉を出している。
上座は空席になっている。

主宰者 「では始めさせていただきます。
 2009年、みなさまの金玉も
 おつかれさまでした。
 つらいことの多かった年だと思います。
 今宵は金玉の労をねぎらい、
 嫌な思い出は吹き飛ばす。
 そんな会とさせていただきます」

お猪口が配られる。
いや、お猪口と言うよりも、
エッグカップを二つくっつけたようなものに近い。
そこに御神酒が注がれる。

主宰者 「ではみなさま、
 ゴールデンボール!!」

乾杯! のかわりの音頭がとられ、
参加者は自分の玉を御神酒にひたす。
先生と弟子も郷に入れば郷に従えで。

参加者A 「おう、これはなかなかの辛口ですな」
参加者B 「ほんとうですな。
 疲れが霧消し、憂さも晴れますよ」


毎年参加すると、
金玉で酒の甘辛を判断できるようになるらしい。

小林 「ところでなぜ上座が空席なんや」
参加者A 「そろそろ到着しますよ。
 かなりの大物ですよ」

ヒヒ〜ン!

座敷に入ってきたのは、馬だった。
馬は上座に通され。

主宰者 「私たちにとって馬並は憧れ。
 立派なブツは、金玉から。
 今年一年、
 下半身のいい思い出なしのみなさん、
 金玉が被った寂しい気持ちを忘れ、
 来年を迎えましょう!
 ではまずは先生から!」

事態が飲み込めず狼狽した師は、弟子を差し出す。

小林 「こいつからいきますわ」

金玉をモロ出しした北小岩くんは、
促されるまま馬の後ろにまわった。
馬は弟子のご立派なイチモツ&玉金を見ると
後ずさったが、
リスペクトしつつ玉を軽めに蹴り上げた。

北小岩 「うお〜!
 つぶれるかと思いました!!
 確かに今年の憂さなど、
 たちどころに吹き飛んでしまいます」
主宰者 「では先生!」

仕方なく馬の後方に立つが、
馬は先生の微小なブツ及び玉を見ると
侮蔑の表情を浮かべ、力の限り蹴り上げた!

小林 「うお〜〜〜〜〜〜〜〜!」


そのまま意識を失なった。
今年も金玉忘年会なるものが
各地で開催されている。
どんなに下半身に辛いことがあった年でも、
馬に蹴り上げられれば記憶がとんでしまう。
今年一年、金玉がつぶれずに存在し、
機能していただけでもよしとせねば。

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2009-12-20-SUN

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