「う〜、ちゃぶいでございます」
師弟ともに極度の寒がりであるが、
弟子が殊更震えているのには訳があった。
「初雪でございます。
足の親指が直接、雪に触れております」
そうなのだ。
彼は同じ靴を十数年履き続けているため、
底が抜けている。
また、靴下も二足しか持っていないので
ローテーションが厳しすぎて、
布の部分より穴の方が大きいのだ。
よって靴下から指が飛び出し、靴からも飛び出し、
裸足で雪上を歩いているのと大差は無い。
「霜焼けになってしまいます」
そこに現れたのが。
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小林 |
「なんや。
ちんぽを霜焼けにして膨らませ、
でっかく見せようとしとるんかい」 |
北小岩 |
「いえ、先生。
足の親指が大きく膨らんで」 |
小林 |
「お前、親指を使って
みだらなプレイをしようとしとるんか」 |
粗大ゴミとして出しても持っていってもらえない
ド阿呆先生のことは放っておこう。
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北小岩 |
「どうせ冷たいのなら、
雪国でとことん
味わいたいものでございます」 |
小林 |
「ほな行きまひょか〜」 |
阿呆の決断は早い。
二人は雪国に針路をとった。
ノーマネーなのでヒッチハイク。
しかし、ダウンジャケット等を持っていないので、
防寒用に布団をかぶっての行軍となり、
怪しまれて誰も止まってくれない。
数時間後、ダンプのおにいさんの同情により、
同乗がかなった。
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北小岩 |
「どうもありがとうございます」 |
おにい
さん |
「いいってこっちゃ」 |
北小岩 |
「おにいさまは、
雪国の生まれでございますか」 |
おにい
さん |
「おお。
こちんこちんの雪国っ子ぞ」 |
北小岩 |
「今頃、ソリ遊びなど
なさっているのでございましょうか」 |
おにい
さん |
「みんなやってるぞえ。
男女で雪に潜ってな」 |
北小岩 |
「雪の中で
ソリができるのでございますか」 |
おにい
さん |
「お前なんか勘違いしてるな。
おれっちの故郷でソリといえば、
雪に男女が潜って
お互いの恥毛を剃りあうことぞな」 |
小林 |
「ほほう。
なかなかええ土地やんけ。
そんなことをして、興奮せんのか」 |
おにい
さん |
「もちろんするっち。
雪の中にはカマクラというラブホがある。
おれっちたちにとっては、
『いざ鎌倉』とは我慢しきれなくなって
カマクラに駆けつけることだぞえ。
行為そのものは、雪合戦と呼ばれるだだ」
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北小岩 |
「そのように寒いところで、
臨戦態勢になるのでございますか」 |
おにい
さん |
「ならない場合は、雪でイチモツを固める。
雪が溶けるまでのお楽しみぞ。
男女が力を合わせて
尿でハートをつくる、雪尿もええぞ」 |
北小岩 |
「わたくし、お話をうかがっているだけで、
ぶるぶるしてまいりました。
雪国の方はさすがでございますね」 |
その土地にはその土地だけの風習がある。
スノードームと言って、
避妊具として雪を用いることもあるという。
トラックのおにいさんは、
かなり独特な国の育ちであることは間違いない。
二人がトラックをおりた後何をしたのか、
それはわからない。
とはいえ、局部が凍傷寸前になり、
ややもすれば切らねばならないほどの
惨状を招いたところを見ると、
ろくでもないことにトライしたことだけは確かであろう。
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