ぴゅ〜
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北小岩 |
「ふう、
玉の奥から冷えますでございます」 |
隣家のあたり。
「ゆうちゃん、おそとであそぼ」
おともだちを誘っている女の子の声がする。
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北小岩 |
「さすがですね。
この寒さをものともせず。
『子供は風の子 大人はきのこ』
といいますものね」 |
火の子の間違いであろう。
ゆうちゃんは留守らしい。
女の子は北小岩くんを見つけ、近づいてくる。
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女の子 |
「おじさん、あそぼ」 |
北小岩 |
「いいですよ。
まだわたくし、
おにいさんでもありますので、
おにおじさんと呼んでくださいね」 |
女の子 |
「うん。
おにおじさん、わたしすごいんだよ。
ほらね」 |
髪を下敷でごしごし。毛を立てて見せた。
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北小岩 |
「うあわ!
びっくりでございますね。
あなたは魔法使いの女の子なのですか」 |
女の子 |
「そうなの」 |
小林 |
「ほほう、静電気やな」 |
こやつは、常に子供の夢を奪う。
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小林 |
「静電気と言えば凄まじい男がおるで」 |
女の子 |
「な〜に?」 |
北小岩 |
「あなたはね、
そろそろお家に帰った方がいいですよ。
みんな心配しますからね」 |
師匠がろくでもないことを口走る前に、
よっちゃんイカをみやげに持たせ帰宅させた。
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小林 |
「ほな、行って見るか」 |
二人はヒゲダンスのポーズで、
町の下半身と呼ばれるラブホ街に進軍した。
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北小岩 |
「この場所と静電気が、
どのように関係するのでございますか」 |
小林 |
「見てみい」 |
指さす方角に目をやると、
着流しの侍まがいの男が。
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侍まがい
の男 |
「もんもんもんも〜ん!」
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フランクフルト状のちょんまげに
巨大な下敷をこすり付けると、
今まさにラブホに
突入しようとしていたカップルに向けた。
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侍まがい
の男 |
「性電気〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 |
せいの字が間違っているが、
威力は凄まじかった。
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北小岩 |
「あっ、男性の陰毛が
ズボンから飛び出しました!」 |
カップル
男 |
「うお〜!」 |
北小岩 |
「こちらに引き寄せられ、
生ゴミの山の中へ!
女性はあまりの汚さに、
去っていきました」
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そう。
侍まがいの男は静電気を起こす達人。
髪を逆立てさせるどころでなく、
陰毛を強引に引き寄せ、
投げ飛ばすことさえできるのだ。
どんなことでも鍛え続ければ、
常人の域を遥かに超える。あっぱれである。
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