「どこからか枯葉が飛んでまいります。
お家の前が吹き溜まりなのでございますね」
枯葉の季節は過ぎているのだが、
小林先生宅門前には落ち葉や虫の死骸、
エロ本の切れ端などが溜まってしまうのだ。
「立派な師が住んでいらっしゃるのですから、
毎日掃除しないわけにはゆきません」
箒を持つ手に力がこもる。
「あっ、石ころが」
女の人が押してきたバギーに、
コツンと当たる。
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女の人 |
「何してんのよ!」 |
北小岩 |
「申し訳ございません!」 |
女の人 |
「私の大切な赤ちゃんに当たったら、
どうやって責任とるのよ!」 |
北小岩 |
「輪をかけて、申し訳ございません!」 |
不器用な男は、
頭を深々と下げたまま微動だにしない。
下げ方が半端でなく、頭が両足の間をくぐり、
今にも尻につきそうなほどだ。
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女の人 |
「何の誠意も感じられないわ。
くらえ!」 |
ありったけの力で、バギーを弟子にぶつける。
それもまた、赤ちゃんにとって
危険なことだと思うのだが。
北小岩くんはドブのふちにいたので、
その体勢のまま落ちてはまってしまった。
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女の人 |
「いい気味ね」
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それから30分ほどたった頃であろうか。
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小林 |
「何しとるんや?
ノーカットのエロ本でも、
流れてきたんか」 |
北小岩 |
「そうではございません。
わたくしの力では、
抜けられなくなってしまったのです」 |
小林 |
「そうか。
しかし、俺の力だけでは無理やな。
ちょうどいいところに、
玉の臭親方が通るわ。
手伝ってくれんか」 |
玉の臭親方は、序の口で引退した元力士。
町の人々は、敬意を表して親方をつけて呼ぶ。
北小岩くんの首根っこをつかむと、
ドブからつまみだした。
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北小岩 |
「ふう、助かりました。
ありがとうございました。
わたくしの不注意で、
バギーに小石をぶつけてしまい、
限界まで頭を下げたのですが
却下されてしまいました」 |
小林 |
「そうか。
神妙な顔をしてお詫びするだけで
謝罪となった時代は、
とうの昔に終わったのかもしれんな。
ついてこいや」 |
二人は頭を下げたまま全力疾走。
謝罪会と大書された会場に闖入する。
近年、企業等の不祥事が多く、
その度に会見を開いていると記者も大変なので、
まとめて行うことにしたという。
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企業の人A |
「我が社の超高級フランクフルトを
馬のちんちんで代用、偽装したのは、
すべて私の責任です。
申し訳ございません」 |
Aと隣のBが深々と頭を下げた。
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北小岩 |
「あれで大丈夫なのでしょうか。
わたくしの方が何倍も
深かった気がいたしますが」 |
その場に
いた記者 |
「Aはね、謝意を表するために
3日間小便を我慢した上で
頭を下げているんだよ。
Bも3週間大便を我慢している」 |
北小岩 |
「なんと!
わたくしが甘かったようでございます。
それほどまでに謝罪とは、
重みのある行為なのですね」 |
二人の驚異的な我慢により、
謝罪の気持ちは理解された。
次に壇上に上がった者は。
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次に
壇上に
上がった者 |
「私の不徳のいたすところ。
本来なら切腹して
お詫びせねばなりませんが、
これでご勘弁を!」 |
ズボンとパンツを同時におろし、
秘所に何かを装着。
頭を下げた。
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小林 |
「あかん、『ギロチン』や!
あいつのチンポ、
ちょん切れてしまう!!」 |
先生は壇上に駆け上り、ギロチンを奪った。
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小林 |
「何をしたのか知らんが、
はやまるんやないで!」
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男はその場に泣き崩れた。
後を絶たない不祥事。
苦しそうな顔でうつむく経営者たち。
その光景は日常茶飯になり、
説得力を失いつつある。
とはいえギロチンは、危険すぎますよね。
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