ポカポカポカ〜ン
ダラダラダラ〜ン
つかの間の春陽気。
縁台でだらしなく鼻の下を伸ばしているのは、
不肖の師弟であった。
|
北小岩 |
「今日はにょきにょきしそうな
天気でございますね」 |
小林 |
「そやな」 |
北小岩 |
「あの場所はどうなのでございましょうか」 |
小林 |
「違うかもしれんな」 |
北小岩 |
「行ってみませんか」 |
小林 |
「そするか」 |
記すに値しない薄い会話を重ね、
重い腰をあげた。
二人の住む町は、意味もなくだだっ広い。
北の端に、不思議な山状の部分がある。
阿呆面下げてやって来た二人は。
|
北小岩 |
「やっぱりそうでございました!」 |
小林 |
「純白の世界やな」 |
心が薄汚れた者に純白と言う言葉は似合わない。
とはいえ先生宅がごきげんな陽気なのに、
山状の一面が銀世界であるのは事実。
そこだけ違う現象が起こるため、
町の人々から『そこ岳』と呼ばれている。
|
北小岩 |
「あっ、
うさぎさんの足跡でございます!」 |
弟子は稚児の如く、
足跡に合わせぴょんぴょん飛び跳ねている。
|
小林 |
「シカの足跡に、キツネの足跡。
いろいろあるな。
むっ!これは!!
北小岩、はよ来んかい!」 |
北小岩 |
「どうなさいましたか」 |
小林 |
「見てみい!」 |
北小岩 |
「うわわわわわわわわわ!」 |
師弟がのけぞったのも無理はなかった。
雪の上にくっきりと、
おちんちんの足跡がてんてんとついているのだ。
|
北小岩 |
「どういうことでしょうか」 |
小林 |
「二つ考えられるな。
一つはおちんちんの形をした足の生き物が
歩いた」
|
北小岩 |
「もう一つは?」 |
小林 |
「両足を思いっきりあげて、
跳び箱をとんでるところを想像せい。
手のかわりにちんちんをついて、
連続でとび続けるんや」
|
北小岩 |
「そのようなことが可能なのでしょうか」 |
小林 |
「世の中にはとてつもない男がおる。
よく見てみい。
このチン跡は、一歩ごとに
1オングストロームずつ小さくなっておる。
あまりの寒さに、縮んでいったんやろな」 |
オングストロームと言えば、1億分の1センチ。
ことちんちんの大きさになると、
そこまで肉眼で見分けてしまう男も恐ろしい。
師はどうやら、
二つ目の可能性を考えているようだ。
|
北小岩 |
「先生、これは!」 |
小林 |
「確かに!」 |
女性の秘所の足跡がくっきり残されていた。
ともかくいえることは、
『そこ岳』は奥の深い魔境である
ということだけであろう。
|