KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百八拾・・・足跡


ポカポカポカ〜ン

ダラダラダラ〜ン

つかの間の春陽気。
縁台でだらしなく鼻の下を伸ばしているのは、
不肖の師弟であった。

北小岩 「今日はにょきにょきしそうな
 天気でございますね」
小林 「そやな」
北小岩 「あの場所はどうなのでございましょうか」
小林 「違うかもしれんな」
北小岩 「行ってみませんか」
小林 「そするか」

記すに値しない薄い会話を重ね、
重い腰をあげた。
二人の住む町は、意味もなくだだっ広い。
北の端に、不思議な山状の部分がある。
阿呆面下げてやって来た二人は。

北小岩 「やっぱりそうでございました!」
小林 「純白の世界やな」

心が薄汚れた者に純白と言う言葉は似合わない。
とはいえ先生宅がごきげんな陽気なのに、
山状の一面が銀世界であるのは事実。
そこだけ違う現象が起こるため、
町の人々から『そこ岳』と呼ばれている。

北小岩 「あっ、
 うさぎさんの足跡でございます!」

弟子は稚児の如く、
足跡に合わせぴょんぴょん飛び跳ねている。

小林 「シカの足跡に、キツネの足跡。
 いろいろあるな。
 むっ!これは!!
 北小岩、はよ来んかい!」
北小岩 「どうなさいましたか」
小林 「見てみい!」
北小岩 「うわわわわわわわわわ!」

師弟がのけぞったのも無理はなかった。
雪の上にくっきりと、
おちんちんの足跡がてんてんとついているのだ。

北小岩 「どういうことでしょうか」
小林 「二つ考えられるな。
 一つはおちんちんの形をした足の生き物が
 歩いた」

北小岩 「もう一つは?」
小林 「両足を思いっきりあげて、
 跳び箱をとんでるところを想像せい。
 手のかわりにちんちんをついて、
 連続でとび続けるんや」

北小岩 「そのようなことが可能なのでしょうか」
小林 「世の中にはとてつもない男がおる。
 よく見てみい。
 このチン跡は、一歩ごとに
 1オングストロームずつ小さくなっておる。
 あまりの寒さに、縮んでいったんやろな」

オングストロームと言えば、1億分の1センチ。
ことちんちんの大きさになると、
そこまで肉眼で見分けてしまう男も恐ろしい。
師はどうやら、
二つ目の可能性を考えているようだ。

北小岩 「先生、これは!」
小林 「確かに!」

女性の秘所の足跡がくっきり残されていた。
ともかくいえることは、
『そこ岳』は奥の深い魔境である
ということだけであろう。

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2010-02-14-SUN

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