びゅ〜びゅ〜
眩暈せずにはいられぬほどの傾斜角。
断崖の上に屹立する勇者。言わずと知れた、
いや、言わずと知りたくもない、
先生と弟子の北小岩くんであった。
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北小岩 |
「念願成就ですね」 |
小林 |
「当然と言えば当然やな」 |
北小岩 |
「そうでございます。
先生以上にこのブツがふさわしい男児は、
世界広しといえども
皆無でございましょう」 |
愛弟子はおべっかを使う男ではない。
心の奥襞から師を敬っているのだ。
ところでブツとは。
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小林 |
「北小岩くん、出してみなさい」 |
どどめ色の巾着から、長方形を手にする。
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北小岩 |
「玉虫色、いえ、
玉虫色+金の部分が多いので、
金玉虫色に輝いております」 |
小林 |
「うむ」 |
イチモツの大きさや角度を、
リモコンで自在にコントロールできれば。
そう考えたことのある貴兄も、数多いると思う。
先生は陰稚気博士に施術してもらい、
ついにちんちんのリモコンを手に入れたのだ。
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小林 |
「では試してみるかいな」
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男どもが蠢く下界を見下ろす崖の上に、
初スイッチの場を選定した。
先生は褌一丁になり。
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小林 |
「ほないくで!
ぼっきっき〜〜〜! あっ」 |
訳のわからない奇声をあげると、
手の甲に青筋立ててスイッチオン。
イチモツに電気信号が走り、
ぐんぐんと角度を増していった。
施術の効果で、大きさも以前の5倍増しに。
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小林 |
「成功やが・・・」 |
力を込めすぎたために、
リモコンを崖に落としてしまったのだ。
崖は70メートルあり、
上から30メートル地点にある台状に転がった。
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北小岩 |
「野犬がいらっしゃいます。
崖っぷち犬でございましょうか」 |
小林 |
「あかん、取られる。
うお〜〜〜!」 |
犬が咥えて巧みに崖を下りて行くのをみて、
あせった先生は足を踏み外し、
犬のいた地点に落ちてしまった。
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北小岩 |
「先生〜〜〜!
わたくしが何とかせねばなりません。
しかし、どうすることもできません」 |
警察に通報、救助を請うた。
現場にはハシゴ車が急行。
ヘリが飛び、どのように対処するか協議された。
テレビ局のリポーターも駆けつけていた。
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女性
リポーター |
「あの人は、
なぜ褌で危険な場所にいるのですか」 |
弟子は先生の名誉を守るために。
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北小岩 |
「崖に子犬が取り残されておりまして、
果敢に助けようとしたのです。
褌一丁なのは、
気合いを入れるためでございます。
先生があの場所に下りたとき、
びっくりした子犬は
崖を転げてしまったのですが、
さすがに野生。
怪我もなくどこかへ消えていきました。
しかし、先生が下りられなく
なってしまったのです」 |
女性
リポーター |
「お聞きになりましたか。
これは今時珍しい美談です」 |
その時そばにいた地元のおばさんが。
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地元の
おばさん |
「違うべ。
わだずの目はごまかせん。
視力6.0あるだ。
あの男、リモコンで
自分の股間をもっこりさせただ。
そのリモコンを落とし、
自分も誤って落ちただけだ。
すでに1時間半以上、
もっこりさせてるだ」 |
スイッチがMAXになっているため、
先生のイチモツはそそりたった状態で
戻らなくなっているのだ。
女性リポーターはテレビカメラに近づき、
ズーム映像を確認。
苦い顔をした。
おぞましい事実は警察や救助隊にも伝わった。
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救助隊 |
「単なるスケベ野郎なんか、
助ける必要ねえだ。
消防車とヘリは引き上げだ。
発破しとけや」
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ドカーン!
先生はそのまま落下。
悪運つよく、地面から数メートルのところに
横から生えていたカラマツに引っかかった。
枝でしこたま玉などを打ち、
イチモツはもとの大きさに戻った。
一瞬の美談は醜談にかわり、
先生のもとに駆けつけたのは、
師を思い落涙する弟子ただ一人であった。
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