KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百八拾弐・・・リモコン


びゅ〜びゅ〜

眩暈せずにはいられぬほどの傾斜角。
断崖の上に屹立する勇者。言わずと知れた、
いや、言わずと知りたくもない、
先生と弟子の北小岩くんであった。

北小岩 「念願成就ですね」
小林 「当然と言えば当然やな」
北小岩 「そうでございます。
 先生以上にこのブツがふさわしい男児は、
 世界広しといえども
 皆無でございましょう」

愛弟子はおべっかを使う男ではない。
心の奥襞から師を敬っているのだ。
ところでブツとは。

小林 「北小岩くん、出してみなさい」

どどめ色の巾着から、長方形を手にする。

北小岩 「玉虫色、いえ、
 玉虫色+金の部分が多いので、
 金玉虫色に輝いております」
小林 「うむ」

イチモツの大きさや角度を、
リモコンで自在にコントロールできれば。
そう考えたことのある貴兄も、数多いると思う。
先生は陰稚気博士に施術してもらい、
ついにちんちんのリモコンを手に入れたのだ。

小林 「では試してみるかいな」


男どもが蠢く下界を見下ろす崖の上に、
初スイッチの場を選定した。
先生は褌一丁になり。

小林 「ほないくで!
 ぼっきっき〜〜〜! あっ」

訳のわからない奇声をあげると、
手の甲に青筋立ててスイッチオン。
イチモツに電気信号が走り、
ぐんぐんと角度を増していった。
施術の効果で、大きさも以前の5倍増しに。

小林 「成功やが・・・」

力を込めすぎたために、
リモコンを崖に落としてしまったのだ。
崖は70メートルあり、
上から30メートル地点にある台状に転がった。

北小岩 「野犬がいらっしゃいます。
 崖っぷち犬でございましょうか」
小林 「あかん、取られる。
 うお〜〜〜!」

犬が咥えて巧みに崖を下りて行くのをみて、
あせった先生は足を踏み外し、
犬のいた地点に落ちてしまった。

北小岩 「先生〜〜〜!
 わたくしが何とかせねばなりません。
 しかし、どうすることもできません」

警察に通報、救助を請うた。
現場にはハシゴ車が急行。
ヘリが飛び、どのように対処するか協議された。
テレビ局のリポーターも駆けつけていた。

女性
リポーター
「あの人は、
 なぜ褌で危険な場所にいるのですか」

弟子は先生の名誉を守るために。

北小岩 「崖に子犬が取り残されておりまして、
 果敢に助けようとしたのです。
 褌一丁なのは、
 気合いを入れるためでございます。
 先生があの場所に下りたとき、
 びっくりした子犬は
 崖を転げてしまったのですが、
 さすがに野生。
 怪我もなくどこかへ消えていきました。
 しかし、先生が下りられなく
 なってしまったのです」
女性
リポーター
「お聞きになりましたか。
 これは今時珍しい美談です」

その時そばにいた地元のおばさんが。

地元の
おばさん
「違うべ。
 わだずの目はごまかせん。
 視力6.0あるだ。
 あの男、リモコンで
 自分の股間をもっこりさせただ。
 そのリモコンを落とし、
 自分も誤って落ちただけだ。
 すでに1時間半以上、
 もっこりさせてるだ」

スイッチがMAXになっているため、
先生のイチモツはそそりたった状態で
戻らなくなっているのだ。
女性リポーターはテレビカメラに近づき、
ズーム映像を確認。
苦い顔をした。
おぞましい事実は警察や救助隊にも伝わった。

救助隊 「単なるスケベ野郎なんか、
 助ける必要ねえだ。
 消防車とヘリは引き上げだ。
 発破しとけや」


ドカーン!

先生はそのまま落下。
悪運つよく、地面から数メートルのところに
横から生えていたカラマツに引っかかった。
枝でしこたま玉などを打ち、
イチモツはもとの大きさに戻った。
一瞬の美談は醜談にかわり、
先生のもとに駆けつけたのは、
師を思い落涙する弟子ただ一人であった。

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2010-02-28-SUN

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