KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百八拾六・・・掃除機

ザッザッザラ〜
ザッザッザララ〜

「ひと仕事でございます」

2時間箒で掃き続けているのは、
弟子の北小岩くんであった。

ヴゥォホホ〜ン
ヴゥォホホイィ〜ン

北小岩 「隣のお宅から、
 掃除機の勇壮な声が聴こえてまいります。
 しかし、先生宅にはございません」

30年前に購入したという箒を、
意味もなく股に挟んでみる。

北小岩 「箒には箒のよいところがあり、
 また弱点もございます。
 例えば」

畳にめり込んだ陰毛を掃き出そうとするが、
微動だにしない。

チンチン

「ごめんちん」

北小岩 「どなたでございましょうか」

「私、掃除機のセールスをしております
 吸乳満好(すいちちまんこう)と申します」

「掃除機はうちにはまだ早いな。
 お引き取り願おうか」

北小岩 「あっ、先生」
吸乳 「これはそんじょそこらのものでは
 ございません。
 奇跡を起こします。
 女性の陰・・・。
 でも無駄ですね。帰ります」
小林 「待たんかい。
 じっくり聞こうやないか」
吸乳 「地球の表面に落ちている女性の陰毛は、
 天文学的数字になります。
 この吸入口に
 特殊な分別器を差し込むだけで、
 20代美形の女性の陰毛だけを
 収集できるのです」

小林 「お守りに入れられるな。
 なかなか見所あるやないけ」
吸乳 「それだけではありません。
 女性の心も
 吸い寄せることができるのです」

突然ギャロップで門を飛び出すと、
通りかかったパッツンパッツンのいい女に、
ぱっくり開いた口を向け。

ブォホホ〜

パッツン
パッツンの
いい女
「ああ、心が・・・。
 もう、どうにでもしてください!」
小林 「凄いやないけ!
 俺にも貸さんかい!!」
吸乳 「いけません。
 熟練者でないと」

この男が素直に従うはずは無い。
数百メートル向こうからやって来るミニスカを
目ざとく見つけた。

小林 「まだ距離があるとはいえ、
 油断はキンたまや。
 スイッチオン」

ブォホホ〜

小林 「あかん。
 手がすべった。
 んっ?
 うぉ〜〜〜!」

ぱっくり開いた口が、先生の急所をとらえた。

小林 「チンチンの先から、
 記憶が吸いだされていく〜〜〜!」

そう。
掃除機は先生のちんちんの数少ない、
気持ちよかった思い出を吸い取ってしまったのだ。
 
夢の掃除機には棘がある。
そのことだけは、心しておきたい。

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2010-03-28-SUN

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