「今日は見本を拝見できる日でございますね」
弟子の北小岩くんは若干の緊張のため、
金玉も若干張っている。
「わたくし史上初でございます」
それほど大げさなことではないだろう。
話のもとをたどる。
北小岩くんの師は、
言わずと知れたエロ本の目利きである。
目利きには目利きのコミュニティがあり、
一目置かれる存在なので、
超一級のウハウハ本を謹呈されることがある。
師はエロの所有欲が人一倍強い一方、
他の人にも自慢のエロを堪能して欲しいと願う
アンビバレントな感情を持っている。
そこで町の名士たちに、
謹呈された極上本をプレゼントして歩く。
男というしょうもない共通項があるせいだろうか。
人間のレベルの差を軽く超え、
結構仲よくなれてしまうものなのだ。
今回名士の一人が開く、
キレイどころ69人パーティに招待され、
あわよくばとの思いから、
なけなしの金をはたいて
名刺を作ることにしたのだ。
「こんにちわっしょい!」
意味もなく威勢のいい男が入ってきた。
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小林 |
「ついに来たな」 |
音も無く先生出現。
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名刺男 |
「サンプルをご所望とのことですが、
私どものところでは、
名刺に対する
確固としたポリシーがございます。
名刺は自分がどういう者なのかを
相手に伝える役割を
担っておりますが、
それにしては
現在やりとりされているブツは、
ありきたりすぎるのです」 |
小林 |
「なるほどな。
凡庸なものでは
強くアピールできないわな」 |
名刺男 |
「これは一見紙に見えますが、
超高カロリーの食物でできております。
いざとなれば一枚食べるだけで、
一週間は生きながらえるでしょう。
人間、生死の境にある時に
救ってくれた人の事は、
一生忘れず恩に着るものです。
消費期限は10年」 |
北小岩 |
「長きにわたり毎日
片時もはなさずもち歩いていただければ、
すりこみ効果抜群ですね」 |
名刺男 |
「今のはビジネスタイプの一例です。
もちろん、女性に渡す専用もございます。
これもまた、
何の変哲も無い名刺に見えますが、
水でもどすと
グッグッとくるパンティになります」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
名刺男 |
「それも穴付きです」 |
北小岩 |
「なんと! なんと!」
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名刺男 |
「とはいえ、
穴から風が入ると
風邪をひいてしまう可能性があります。
そこで
あなたのお名前がついた
人肌カイロを装着できるように
なっています。
いつでも大切な部分を
守ってくれている生あたたかい男。
それがあなたの印象となり、
いずれビンビンな展開が
待っていることでしょう」 |
北小岩 |
「なんだかわたくし、
感動するとともに興奮してまいりました」 |
男が次に取り出したのは。
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名刺男 |
「張り形状のものです。
大きさは自己申告制で
お選びいただけます」 |
最高級品には、真珠が埋め込まれている。
金玉の部分に氏名が書かれ、
夜光塗料で夜妖しく光るのだ。
先生は見栄を張りすぎた張り形タイプを、
弟子は穴付きパンティタイプを注文した。
マンを持してパーティに乗り込んだ二人。
翌日師弟の頬にはくっきりと手形がついていた。
結果は推して知るべしである。
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