北小岩 |
「夕焼けでございます」 |
瞳の中を、陽がゆっくり沈んでいく。
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北小岩 |
「幼き日を思い出します。
毎日校庭で日が暮れるまで、
白球を追いかけておりました。
あの頃の友たちは、
どこかの町で、
元気にやっていらっしゃるので
ございましょうか」 |
普段はエロ本のページを追いかけている目に、
ほろほろと熱いものがこみ上げてきた。
パ〜プ〜
「え〜豆腐〜〜え〜豆腐〜〜〜」
「おにいさん、一丁ちょうだい」
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小林 |
「ほほう。
時代は変われども、
変わらぬよき風情は残っとるもんやな」 |
師は、エロ本との物々交換で手に入れた
巨大なイカをぶら下げていた。
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北小岩 |
「先生とともに、
あたりがすっかり
イカ臭くなりました」 |
小林 |
「人聞きの悪いことを言うんやない。
それにしても、
豆腐屋さんのラッパはええもんやな。
俺がモテまくっていた・・・」 |
パッパパ〜〜〜〜〜〜〜〜!
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小林 |
「何や今の音は!」 |
北小岩 |
「アルペンホルンのようでございます」 |
角から姿を現したのは、
『モダントイレットペーパー』と書かれた
のぼりを掲げたリヤカーだった。
「トイレ〜、ペーパー!」
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小林 |
「トイレットペーパー屋か!」
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北小岩 |
「あれ?
数十年会っていなかった、
わたくしの友でございます。
それにしても、通常のものと
若干異なっている気がいたします」 |
トイレット
ペーパー屋 |
「おお、北小岩が!
生きでだが。
ちょうどええ。
腰抜かすほど斬新な紙、
試してくれや」 |
言うが早いか、
質素なドレッシングルーム状のものを設営した。
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トイレット
ペーパー屋 |
「入れや!」 |
北小岩 |
「えっ?」 |
小林 |
「せっかくやから、試してみい」 |
和式便器が置かれているルームに入り、
北小岩くんはパンツをさげた。
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トイレット
ペーパー屋 |
「まずはごれだあ」 |
弟子がペーパーをカラカラし、
アヌスに近づけると。
「いや〜ん! やめてぇ〜ん!!」
ペーパーから甲高い女性の声が聞こえた。
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トイレット
ペーパー屋 |
「菊の門が迫ると、
声を出す特殊な紙だあ。
おなごの声と野郎の声が選べるだ。
誰の中にも潜んでいる、
サディスティックな欲求を
満たすために開発しただ。
次はこれだ」 |
北小岩 |
「随分かわった形状でございますね。
むっ、
むむんむんむんむむむのむん!
あは〜ん」 |
トイレット
ペーパー屋 |
「形はもちろん感触まで、
舌そっくりにつくられてるだ。
尻の穴を舐められる
とろ〜んとした感じがするだよ」
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その後も、肛門に向けて紙飛行機を飛ばすもの、
サイダーのように弾けるものなど、
次から次へどうしようもないブツを
試用する羽目になった。
確かに現今のトイレットペーパーには、
アイデアが足りない気もする。
しかし、奇怪な尻ふきを、
多数の人が望んでいるとも思えないよね。
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