KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の弐百九拾弐・・・催眠

「一日留守にしただけなのに、
 百年もたった気がいたします」

久しぶりに友だちのあばら家に一泊し、
凱旋した弟子の北小岩くんであった。

「先生宅は、決して裕福ではございません。
 いや、あえて言うならば、
 下流の下流、
 そのまた下流のへそ下三寸と申し上げても、
 決して過言ではないでしょう。
 しかし、清貧というのでございましょうか。
 分相応のものを食し、
 舟盛りなどは決して・・・」

弟子は師の質素ぶりに、思わず涙ぐんだ。

「只今帰りました」

見慣れぬ下駄が並んでいるところをみると、
客人らしい。

「急いでこぶ茶と
 よっちゃんイカの用意をせねば」

挨拶をしようと部屋をのぞくと。

小林 「おお、北小岩。
 お前もこっちに来て、
 刺身のつまでも食わんかい」

ちゃぶ台に鎮座していたのは、
分不相応の巨大な舟盛りだった。
鮪を箸で突ついている男はどこか胡散臭く。

小林 「この方は催眠術師をされている、
 俺の心の師匠。
 世の中のためになることばかりを行っている
 偉人や。
 世界中の男から、
 もっともっと称賛されねばならんやろ」
北小岩 「先生は自慢のエロ本を売り」
小林 「心を込めて、
 舟盛りをご用意したというわけや」
北小岩 「あなた様は、
 催眠術師をされているとのお話ですが」
催眠術師 「ああ、君も試してみるか」

氏はズボンをまさぐり何かを取り出した。

北小岩 「それは先生が子供の頃に流行った、
 アメリカンクラッカーでございますね。
 金色に輝いております」
催眠術師 「玉砕け!」

突然大声を出すと、
物凄い勢いでカチカチやりだした。

催眠術師 「お前の玉は、
 玉砕け〜〜〜!!!!!」

金色の玉が無残に砕け散った。
北小岩くんは股間を押さえ。

北小岩 「わたくしの金が粉々に!」


術に翻弄されている。

小林 「そうや。
 モテていい思いをしている男にかませば、
 恐怖でイチモツ周辺が
 使い物にならなくなる」
催眠術師 「お前は赤ちゃん。
 黄金をお漏らし!」
北小岩 「バブーッ。バブーッ」

ブリッ!

小林 「粗相をしおったな。
 一戦の前だったら、
 どんな女でも逃げていくやろ」
催眠術師 「赤貝怖い!!!!!」

ぱっくり開いた怪しい貝を目の前で前後させると。

北小岩 「ひえぇ〜。
 襲われる〜〜〜」
催眠術師 「毛は剣山!!!」

女性の陰毛をかたどった剣山で
目を突くふりをすると、
弟子はうずくまって震えだした。
 
睡眠術師 「こやつをどうしますか」
小林 「近頃、俺よりいい目を見ているという
 もっぱらの噂や。
 飲んでる間、
 しばらくそうしときまひょか〜」

恐るべき催眠術師。
この人の手に掛かれば、
どんな艶男も女性に対して廃人になるだろう。
据え膳も拒食するに違いない。
それが良いことなのか、悪いことなのか、
現段階では判断がとても難しい。

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2010-05-09-SUN

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