「はあ〜っ! うっ、ぐぇふぐぇふ」
「大丈夫でございますか」
深呼吸するだけでむせてしまう虚弱な師を
思いやる弟子。
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小林 |
「近頃マイハートが
汚れ気味な気がするんや。
咳に表れとるやろ」 |
北小岩 |
「先生の心は一般的に見れば、
汚濁しきっているように
見えるかもしれません。
しかし、わたくしは心の底から
そうは思っておりません」 |
小林 |
「まったく褒められた気がせんし、
うれしくもないわ。
ともかく、ハートを清めんといかん。
それにはええ空気を
たんと吸い込むのが一番やろ」 |
澄んだエアを求め、二人は近郊の山を目指した。
先生宅から麓までは40キロあるので、
出立は子の刻とした。
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北小岩 |
「歩けど歩けど着きませんね」 |
小林 |
「弱音を吐くんやない。
自分の腿を
スレンダー美人の腿だと思って、
ガバッと前後させるんや」 |
これほど的確でないアドバイスも、
他にないであろう。
とはいえ、お金がないために電車賃が払えず、
よって常日頃より尋常ではない距離を
歩き倒してきた二人。
夜が明ける頃には、山の手前まで進軍していた。
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北小岩 |
「これから登山と思うと、
脚に申し訳ございませんね」 |
小林 |
「疲れきった美女の脚が
大開脚しとるところを想像しながら、
大地をずぼんずぼん
踏みしめるこっちゃ」 |
この男の言は無視しよう。
青い山に分け入り。
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小林 |
「どうや、この凛とした空気は」 |
北小岩 |
「心がじゃぶんじゃぶん洗われますね。
むっ、こんなに早い時間なのに、
前方にアベックが」 |
しばしご両人の話に耳を傾けてみよう。
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アベック男 |
「俺さあ、実はイボ痔なんだよ」 |
アベック女 |
「そうなの?
実は私もイボ痔なのよ」 |
アベック男 |
「気が合うわけだ。
俺たちって、
どこか兄弟みたいだもんな」 |
アベック女 |
「イボ兄弟ね。
もし登山中に血が出たら、
私ナプキン持ってるから
貸してあげるわ」 |
アベック男 |
「血(ち)〜っす!」 |
小林 |
「すっかり心が穢れたな。
抜き去るで!」 |
北小岩 |
「はい!」 |
一気に数百メートル引き離した師弟は、
深い穴を掘ると便をひりだし、
サイテ〜の落とし穴を制作した。
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小林 |
「一日一便やな」 |
小林&
北小岩 |
「あはははははは」 |
あまりにレベルの低い話なので、先に進もう。
何とか中腹までたどり着いた
お馬鹿さんたちだったが。
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北小岩くん
の膝&
先生の膝 |
「ぐへ、ぐへへへへへ」 |
小林 |
「あかんなあ。
さすがに膝が笑ってきたわ」 |
北小岩 |
「あそこにおじいさんが。
あの方のように
ストックを持っていれば
もっと楽だったかもしれません。
おっ、危ない!!」 |
おじいさんは足を滑らせ、崖から真っ逆さま。
と思った刹那。
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おじいさん |
「チェスト〜!」 |
ストックが伸び、
柄が北小岩くんの後ろ股座から
金的をとらえた。
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北小岩 |
「このままでは
わたしの金玉(こんぎょく)が!」
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小林 |
「我慢せんか!わっせ〜!!」 |
人の玉であるのをいいことに、
弟子の下半身に火事場の馬鹿力をかけた。
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北小岩 |
「たまや〜!」 |
季節はずれの花火が股間に上がった。
玉を砕け散らせたのを代償に、
おじいさんは這い上がる事ができた。
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おじいさん |
「ありがとな。
この先に知り合いの
山姥がやっている店がある。
そこでご馳走するわい」 |
後をついていくと、
粗末なつくりの掘っ立て店があった。
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おじいさん |
「あれを出してやってくれ」 |
山姥 |
「どうぞ」 |
小林 |
「山名物なめこ汁やな」 |
振舞われた汁をゴクリ。
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北小岩 |
「コクが強すぎる気がいたします。
それになめこが入っておりません」 |
おじいさん |
「それはなめこ汁じゃなくて、
おめこ汁じゃよ。
山姥たちが
デリケートゾーンを洗った汁を
発酵させてつくったんじゃ」 |
小林&北小岩 |
「うぎょ〜!」
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汚れちまった心を洗うために登山した師弟。
途上で、プロブレムな場所を洗ったものを
味わうこととなった。
だからどうなのだと問われれば、
どうでもないと答える以外にないであろう。
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