北小岩 |
「え〜と、
確かこのあたりだと思ったのですが」 |
弟子の北小岩くんがさがしているのは、
旧友の家だった。
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北小岩 |
「ありました!
押しも押されもせぬ、
美しきあばらやでございます」 |
旧友の手紙には、こうしたためられていた。
「『名酒レインボーじんじろ毛』を入手した。
すぐ舐めに来い」
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北小岩 |
「わたくし、
全国の日本酒の銘柄を
くまなく調べたことがございます。
しかし、
じんじろ毛にたどりつくことは、
できませんでした。
さらにレインボーがついております。
どのようなお酒なのか、
わくわくでございます」 |
胸を躍らせるほどのことではないであろう。
多分読んで字の如く。
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旧友 |
「酷暑の中、律儀に来たな。
まあ、一杯やろう」 |
二人は縁側に腰掛けた。
友が手にしている一升瓶に目をやると。
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北小岩 |
「清酒の中に漂っているのは、
陰毛ではございませんか!」 |
旧友 |
「そうだよ」 |
北小岩 |
「黒毛、金毛、銀毛、茶毛など、
七色の毛が入っておりますね。
それも、女性のものでございましょう!」 |
旧友 |
「そうだよ」 |
やはり、そうであった。
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北小岩 |
「ぜひ一献!
むっ!
うわあああああ」 |
ウハウハな面持ちで身を乗り出すと、
重みに耐え切れず縁側が崩壊。
ダンゴ虫のように転がった。
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北小岩 |
「あいたたた、でございます」 |
旧友 |
「白アリにやられてるんだよ。
築69年だからな。
地震が起きたら家屋もおしゃかだな」 |
北小岩 |
「退治の方に頼んだ方が
よろしいのではございませんか」 |
「お呼びですか?」
間髪をいれずに現れた白い作業着姿の男。
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旧友 |
「誰だ、君は?」 |
「脅かしてすみません。
私、『白アリころんちょ商事』のものです。
白アリという言葉を耳にしたので、
お呼びかと」
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北小岩 |
「ちょうどよかったですね。
柱に巣食っていて」 |
白アリ
ころんちょ
商事の人 |
「家の柱?
ご存知ないのですか。
今、白アリで問題になっているのは、
柱と形状が似たもの」 |
北小岩 |
「と申しますと」 |
白アリ
ころんちょ
商事の人 |
「ズバリ、おちんちんです」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
白アリ
ころんちょ
商事の人 |
「現在の家屋は、
白アリ対策も万全になってきています。
困った白アリたちは、
おちんちんに場所をうつし、
食い荒らそうとしているのです」 |
北小岩 |
「そんなことをされたらおちんちんは」 |
白アリ
ころんちょ
商事の人 |
「しまいに倒れてしまうでしょうね」
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北小岩 |
「そうでございますか」 |
白アリ
ころんちょ
商事の人 |
「それだけではありません。
お尻の穴に
蟻塚をつくってしまう種もおります」 |
北小岩 |
「不便なだけでなく、
事と次第によっては
大便をもらしたと
勘違いされる恐れもございます」
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白アリ
ころんちょ
商事の人 |
「だから私どもの会社が必要なのです。
ご興味がおありでしたら、
まずこの契約書にサインを」 |
北小岩 |
「はい」 |
人のよい北小岩くんは、
すかさずサインをしてしまった。
果たして業者の言うことは、
真実なのだろうか。
もし、真の話だとすれば、イチモツにとって、
今まで経験したことがないほどの
危機的状況であることは間違いないであろう。
そうでないことを祈るのみ。
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