KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百七・・・スピード

「ただいま帰りました。ふう〜」

額に金玉ぐらいはありそうな
大粒の汗を光らせているのは、
弟子の北小岩くんであった。

「ところでブツはどうや」

股座に小粒の金玉を光らせているのは、
師匠の小林先生であった。

「ここにございます」

北小岩くんの左右の手には、
ビールが一缶ずつ握り締められている。
先生宅といえば通常
客人へのもてなしはこぶ茶によっちゃんイカだが、
今日は毎日のマンネリを打破する
特殊なマシンを携えた男が訪れるので、
ビールで歓待することとなった。
もちろん、お金はない。
そこで弟子を酒屋に一時間貸し出し、
猛暑の中を配達にまわり、お駄賃として
ビールを二本もらってきたのであった。

「一本は客へ、一本は俺へ。
 おまえは泡を見て目の保養やな」

このような師だけは、
何があっても持ってはいけない。

北小岩 「どんなマシンなのか、
 わくわくしております」

人のよい弟子は、
ビールのことなど気にしてはいない。

チンチンチ〜ン!

「こんにちわっしょい!」

意味もなく元気な声とともに、
どかどかと踏み込んでくるものがあった。

小林 「待っとったで」
北小岩 「はじめまして。
 わたくし、北小岩と申します。
 ゴホッ。
 はっ、失礼致しました」

「う〜む。
 今のせきは、
 時速200キロを超えていましたね」

北小岩 「そのマシンはもしかすると」

「森羅万象スピード測定器です。
 あらゆるものの速度を計れます。
 例えば」

男は鞄の中から、みだらな本を取り出すと、
弟子の目の前へ。

北小岩 「むっ、
 わたくしの最も好きな角度マン載の
 エロ写真集でございます。
 不覚にも息子が」

スピード測定器は股間に向けられ。

「あなたの勃起速度は、
 時速36メートルでした」

 
小林 「そんなものまで計れるんかい。
 なるほどな。
 日々の暮らしというものは、
 単調で退屈なものとなりやすい。
 しかし、そこに速度を導入することで、
 日常にちょいと深みが出るわな」

先生はエロ本を手に取り、
熟読しつつページを繰る。

「エロ本ページめくり速度、
 時速69メートル。
 勃起速度、時速12メートル」

北小岩 「先生の屹立スピードは、
 わたくしの三分の一でございますね。
 不思議でございます。
 体積が小さいのですから、
 その分速度はもっと速くても。
 はっ、
 失礼いたしました」

先生の形相が般若になっていることに気づき、
自重した。

北小岩 「突然、便意を催してまいりました。
 トイレに」

計測者は同行し、パンツを下げる速度、
大小便&屁の速度、陰毛が伸びる速度、
紙で尻を拭く速度、肛門の開く速度などを測定した。

 

日常生活の中には、様々なスピードが存在している。
せきやくしゃみがびっくりするほど
高速であることは知られたことだが、
例えば便などが時速何キロであるのか、
腹を壊している時には
どれぐらい速度があがるのか。
実際に計ることで、日常の退屈から開放される。
そのような側面があることは、確かであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2010-08-22-SUN

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