「万力でぎりぎり締めあげられるような
残暑でございますね」
庭で空を見上げる北小岩くん。
人は萎れる暑さだが、草は元気である。
「例年より伸びが早いようでございます。
こまめに刈らねばなりませんが、
熱中症にも気をつけねばなりません。
頭には三角巾、
股間は蒸れないように。
むっ!」
蒸れないように短パンを履いていたのだが、
灼熱の中、わきから金玉がこんにちは。
「先ほどから何かが
焦げている気がしておりました。
まさか自分の玉が、
たこ焼きの如く熱せられていたとは。
危ないところでございました」
如雨露で水をかける。
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小林 |
「植物にやらずに、なぜ玉に水を。
さてはお前、己の金玉を
大きく育てて自慢しようとしとるな」 |
猛暑であろうがなかろうが、
師の言葉に意味などない。
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北小岩 |
「いえ、
わたくしは今のままで十分・・・」 |
小林 |
「虚栄を張っとる場合やないで。
そんなことより、
俺の大叔父から召集がかかったんや。
お前もこいや」 |
万年金欠の先生であったが、
交通費は送られてきたらしい。
電車のシートに腰かけ。
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北小岩 |
「痛いほどの暑さの中、
長距離を歩くのは
リスクがございますからね」 |
小林 |
「そやな。
電車を降りたら、バスに乗り換えや」 |
ホームを出ると、
おんぼろの車体が二人を待っていた。
最後尾の席に陣取る。
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小林 |
「やっぱりケツがええな」 |
チリンチリン
なぜか抽選の当たりの鐘が鳴り、
運転手と女性ガイドが乗り込んできた。
ガイドは、下は褌、上はブラジャーだ。
先生と弟子はすかさず最前列に移動した。
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ガイド |
「ではぴゅ〜といきますよ!」 |
ピストンがいい感じで運動を開始し、
ブオッと動き出した。
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北小岩 |
「わたくし、
ウハウハしてまいりました」 |
十分ほど走った頃だろうか。
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ガイド |
「次に止まりますのは、
『チンドミノ私が』で〜す」 |
北小岩 |
「チンドミノ私が?」 |
ブレーキが踏み込まれ、
ガイドがはしゃぎながら降りていく。
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小林 |
「何や、あれは!」 |
何十人もの男が素っ裸で仰向けになっている。
イチモツは天にそそりたち。
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ガイド |
「ではいきま〜す。
ドミノ〜!」 |
先頭の男のイチモツを蹴り倒すと、
次々に如意棒が倒れていった。
その風景は、荘厳でさえあった。
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北小岩 |
「理解できませんが、
凄まじいことだけは
確かでございます」
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何事もなかったかのように、
ガイドは再びバスへ。
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ガイド |
「次は、
『マン鼓(つづみ)私も』です!」 |
小林&
北小岩 |
「?」 |
バスが停まると、
外には一糸まとわぬ女性たちが何十人も。
いつの間にか、ガイドも褌を外して仲間に入り。
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ガイド |
「よ〜!」 |
ポン!
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ガイド |
「よ〜!」 |
ポン!
掛け声にあわせて秘所をたたくと、
鼓の音が鳴り響いた。
何事もなかったかのように、ガイドはバスへ。
その後も、
お互いのチンチンを結んで引っ張り合う
『チン綱引き私へ』、
下の毛をピンと弦のように張り、
鼈甲のピックでトレモロをする
『マンドリン私が』など、
理解の及ばない停留所をいくつも経て、
大叔父さんの家に到着した。
数々のバス停が
何を物語っているのかはわからない。
しかし、一度ぐらいは
体験してみたい気もするから不思議だ。
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