魚屋の
おっさん |
「先生、もう一杯」 |
小林 |
「おう、もらおうか」 |
畳屋の
おっさん |
「北小岩さん、飲みが足りんな」 |
北小岩 |
「すみません。
ではいただきます」 |
ここがどこかといえば、町内会館の宴会場である。
季節はずれの夏の餅つき大会が終わり、
打ち上げとなったのだ。
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小林 |
「指は痛むが、楽しいもんやな」 |
北小岩 |
「そうでございますね」 |
二人の指に包帯が巻かれている理由。
餅をこねるときに
女性のおっぱいのような感触を覚え、
手を引くのが遅れた。
存分に杵でつかれたのだ。
師弟ともにが、まぬけである。
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小林 |
「だいぶ酔ったな」 |
北小岩 |
「くらくらしております」 |
小林 |
「帰るのが億劫や」 |
八百屋の
おっさん |
「そうだな。
じゃあ、みんなで
ここに泊まっちまおう」 |
メンバーを見ると、いずれ劣らぬ雑魚ばかり。
雑魚寝とあいなった。
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小林 |
「大人になってからは、
大勢でごろごろはないな。
宿泊する時は、
高級ホテルのスイートルームやからな」
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そんなことはない。
駅のベンチやお寺の物置で
エロ本を掛け布団がわりに寝たり、
夜通し歩き続けるなどで凌いできた二人である。
「グオ〜!」
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小林 |
「しまった!
先を越された。
雑魚寝で一番恐ろしいのが、
巨大ないびきや!」 |
ギリギリギリギリ!
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北小岩 |
「凄まじい歯ぎしりの方も
いらっしゃいます」 |
小林 |
「まだまだ甘いな。
音がどこから出ているのか、
耳の穴かっぽじってよ〜く聴いてみい」 |
北小岩 |
「はっ!
歯ではありません。
おちんちんのあたりから
聴こえてまいります!」 |
小林 |
「そうや。
歯ぎしりではなく、
『チンぎしり』やな。
よっぽどちんちんが
悔しい思いをしてきたんやろ」 |
むせび泣くような悲しげな調べが、
数時間流れ続けた。
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北小岩 |
「危ない!」 |
体操教室を主宰しているおっさんが寝ぼけて、
とてつもない勢いででんぐり返しした。
その後、お尻を寝ている人の鼻もとへ。
プ〜ッ!
「永遠にな」
台詞の意味は謎だ。
再びでんぐり返しで別の男の鼻もとへ。
プ〜ッ!
「永遠にな」 |
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わけがわからないので、他に目を移そう。
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箪笥屋の
おっさん |
「妙齢のご婦人が
パンティを下げた・・・。
俺はそこに、
信じられないものを見てしまった・・・。
なぜだ!
なぜなんだ!!」 |
小林 |
「北小岩、そいつの寝言、
何が信じられないのか気になって
眠れんわ。話を引き出せ!」 |
北小岩 |
「はい。
あなた様におうかがいたします。
何を目撃されたのですか?」 |
箪笥屋の
おっさん |
「水くれ!」 |
北小岩 |
「はい」 |
弟子が運んだ水を一気に飲むと、
再び夢の中へ。
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箪笥屋の
おっさん |
「妙齢のご婦人が
パンティを下げると・・・。
俺はそこに、
信じられないものを見てしまった・・・。
なぜだ!
なぜなんだ!!」 |
再び同じ寝言。先生が目配せする。
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北小岩 |
「あなた様におうかがいたします。
何を目撃されたのですか?」 |
箪笥屋の
おっさん |
「水くれ!」 |
北小岩 |
「はい」 |
きりがない&あほらしいので、これぐらいにしよう。
子供時代に何度も体験した雑魚寝。
大人になると回数は激減する。
おっさんたちの雑魚寝を見てみると、
まあ、ろくなもんではないですね。
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