KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百九・・・雑魚寝

魚屋の
おっさん
「先生、もう一杯」
小林 「おう、もらおうか」
畳屋の
おっさん
「北小岩さん、飲みが足りんな」
北小岩 「すみません。
 ではいただきます」

ここがどこかといえば、町内会館の宴会場である。
季節はずれの夏の餅つき大会が終わり、
打ち上げとなったのだ。

小林 「指は痛むが、楽しいもんやな」
北小岩 「そうでございますね」

二人の指に包帯が巻かれている理由。
餅をこねるときに
女性のおっぱいのような感触を覚え、
手を引くのが遅れた。
存分に杵でつかれたのだ。
師弟ともにが、まぬけである。

小林 「だいぶ酔ったな」
北小岩 「くらくらしております」
小林 「帰るのが億劫や」
八百屋の
おっさん
「そうだな。
 じゃあ、みんなで
 ここに泊まっちまおう」

メンバーを見ると、いずれ劣らぬ雑魚ばかり。
雑魚寝とあいなった。

小林 「大人になってからは、
 大勢でごろごろはないな。
 宿泊する時は、
 高級ホテルのスイートルームやからな」


そんなことはない。
駅のベンチやお寺の物置で
エロ本を掛け布団がわりに寝たり、
夜通し歩き続けるなどで凌いできた二人である。

「グオ〜!」

小林 「しまった!
 先を越された。
 雑魚寝で一番恐ろしいのが、
 巨大ないびきや!」

ギリギリギリギリ!

北小岩 「凄まじい歯ぎしりの方も
 いらっしゃいます」
小林 「まだまだ甘いな。
 音がどこから出ているのか、
 耳の穴かっぽじってよ〜く聴いてみい」
北小岩 「はっ!
 歯ではありません。
 おちんちんのあたりから
 聴こえてまいります!」
小林 「そうや。
 歯ぎしりではなく、
 『チンぎしり』やな。
 よっぽどちんちんが
 悔しい思いをしてきたんやろ」

むせび泣くような悲しげな調べが、
数時間流れ続けた。

北小岩 「危ない!」

体操教室を主宰しているおっさんが寝ぼけて、
とてつもない勢いででんぐり返しした。
その後、お尻を寝ている人の鼻もとへ。

プ〜ッ!

「永遠にな」

台詞の意味は謎だ。
再びでんぐり返しで別の男の鼻もとへ。

プ〜ッ!

「永遠にな」
 
わけがわからないので、他に目を移そう。

箪笥屋の
おっさん
「妙齢のご婦人が
 パンティを下げた・・・。
 俺はそこに、
 信じられないものを見てしまった・・・。
 なぜだ!
 なぜなんだ!!」
小林 「北小岩、そいつの寝言、
 何が信じられないのか気になって
 眠れんわ。話を引き出せ!」
北小岩 「はい。
 あなた様におうかがいたします。
 何を目撃されたのですか?」
箪笥屋の
おっさん
「水くれ!」
北小岩 「はい」

弟子が運んだ水を一気に飲むと、
再び夢の中へ。

箪笥屋の
おっさん
「妙齢のご婦人が
 パンティを下げると・・・。
 俺はそこに、
 信じられないものを見てしまった・・・。
 なぜだ!
 なぜなんだ!!」

再び同じ寝言。先生が目配せする。

北小岩 「あなた様におうかがいたします。
 何を目撃されたのですか?」
箪笥屋の
おっさん
「水くれ!」
北小岩 「はい」

きりがない&あほらしいので、これぐらいにしよう。

子供時代に何度も体験した雑魚寝。
大人になると回数は激減する。
おっさんたちの雑魚寝を見てみると、
まあ、ろくなもんではないですね。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2010-09-05-SUN

BACK
戻る