クンクンクン
「何か匂います」
クンクンクククン
「一言で表現するならば、
エッチ一直線の香りとでも申しましょうか」
クンクンクククンクククのクン
「ウハウハを招きそうです」
「どうしたんや。
犬並の嗅覚を身につけて、
居ながらにしてパンティの匂いでも
嗅ぎ取ろうとしとるんかい」
わけの分からない台詞で登場したのは金玉先生。
辺りを嗅ぎまわっているのは陰毛弟子であった。
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北小岩 |
「先ほどから
フェロモンのような香りが。
あっ」 |
弟子の「あっ」の方向を凝視した先生は、
早くも般若の形相になっている。
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小林 |
「あそこにいるヤツは、
便器の黄ばみのような男。
町で一番モテないはずや。
なのに、なぜマシュマロのように
可愛いおなごとデートしとるんや」 |
北小岩 |
「ははあ。
疑問が氷解いたしました。
先ほどからわたくしの鼻先で、
思わずそそられる刺激的な香りが
遊んでおりました。
匂いもとが、
どこかと調査していたのですが、
間違いなくあの方です。
彼は香りで女性をゲットしたのです」 |
小林 |
「この町で
香水が流行っているという噂は
耳にしとった。
我々もできるだけ早く
善後策を講じねばならんな。
確か町に」 |
北小岩 |
「匂いに詳しい『匂いさん』が
いらっしゃいます。
おや、向こう上面に!」 |
さっそく首根っこをつかまえると。
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北小岩 |
「あなたは『匂いさん』でございますか」 |
匂いさん |
「そうですよ。
何か匂いますか」 |
小林 |
「そういうわけやない。
この町で」 |
匂いさん |
「香水が大流行してますよ。
モンローがシャネルの5番を着て
寝ていたとの有名なお話がありますね。
横丁の源さんもそれに対抗して」 |
北小岩 |
「あの方が裸体にシャネルでございますか」 |
匂いさん |
「いえ。
シャネルの5番ではなく、
『味噌の5番』をつけているようですね」
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北小岩 |
「びみょ〜でございます」 |
匂いさん |
「長屋の熊五郎さんは、
玉金に『焦がし醤油の3番』をつけて、
こんがりを演出しています」 |
小林 |
「誰も喜ばんな」
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匂いさん |
「香水が
人を引き寄せるためだけにあると思ったら
大間違い。
人を寄せつけたくない時にも使うのです。
若旦那の時次郎さんは、
『便の6番』を香らせています。
悪い女にたぶらかされないように、
予防線を張っているんですね」 |
小林&
北小岩 |
「・・・」 |
その他にも下の毛に付ける『ピスの8番』とか、
蟻の門渡りに塗る『屁の2番』とか、
およそモテることとは
正反対の話しか聞けなかった。
味噌、醤油、ピス等を少々の水で薄めて
直接塗って香りをだす。
それはどう考えても、
香水とはいえない代物であろう。
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