こっくりさん こっくりさん
「うへ、うへへへへ」
縁側で船を漕ぎ、
奇妙な笑いを漏らしているのは、
弟子の北小岩くんであった。
「うへへへへ。
んっ、やっぱり変でございます!」
突然飛び起きたその理由は。
「お尻の穴の奥が、
尋常ではなくこそばゆいのです」
ズボンとパンツを同時に下げ、
顔をお尻の穴に近づける。
ぶぶ〜ん
「あっ!」
奥からスクランブル発進したのは、
大きな羽蟻であった。
「虎穴に入らずんば虎子を得ずと申しますが、
おケツに入らずんば
何を得られないのでございましょう。
そこはわたくしにとっての秘境。
う〜む!」
「なんや?
昼日中からケツ穴の新たな利用法でも
考案しとるんかい」
弟子のはるかに下を行く師匠が、
意味もなく立っていた。
|
北小岩 |
「そうではございません。
わたくしの秘境に」 |
小林 |
「お前の秘境など興味ないわ。
それよりも、地球最後の秘境とも
言われるのが深海や。
今から俺は、異海洋研究所に出向く。
そこで深度6900メートルの
潜水調査をしとる『ちんかい69』からの
生映像を観ることになっておる。
お前も神秘の世界を堪能しとくとええで」 |
異海洋研究所・・・。
胃潰瘍にしか聞こえない。
非学術的な施設であることは想像に難くないが、
ともかく弟子も同伴し。
|
北小岩 |
「6900メートル潜れるとなると、
世界でも有数でございますね。
わたくし、先生宅の庭に
存在する虫などに関しては、
虫眼鏡で見えるものなら
ほとんど把握しております。
しかし、深海に関しては童貞も同様。
初体験、楽しみです」 |
小林 |
「今日は所長が解説してくれるからな。
おったで」 |
「こんにちは。
所長の深穴舐目留(ふかあななめる)です」
|
北小岩 |
「どうも始めまして」 |
深穴 |
「LIVE映像が届いておりますので、
さっそくこちらへ。
あそこで縮みながら泳いでいるのが、
『超チンアンコウ』です」 |
北小岩 |
「チョウチンアンコウにしては、
形状がどこかいやらしげでありますが」 |
小林 |
「それは同音意義生物やな。
超チンアンコウは
ちょっとの刺激で大きく・・・。
むっ、とてつもない勢いで上昇していく。
やばいで!
やつは深海に耐えうるように
体内の圧力が調整されとるが、
海上に行ってしまうと
膨張し過ぎて危険なんや!」
|
深度ごとに設置されたカメラで経過を見ると、
勃起、いや、膨張が一目瞭然である。
|
北小岩 |
「うおっ〜〜〜!」 |
弟子が股間を握り締めたのもむべなるかな。
超チンアンコウはぱんぱんに張り詰め、
とても痛そうに破裂してしまったのだ。
|
小林 |
「男として、見るに耐えんものがあったな。
気をとりなおそ。
むっ、俺好みの深海生物がおるで」 |
深穴 |
「『パンティノツカイ』ですね。
まれにですが、
海の底に使用済みパンティが
おりてくることがあるのです。
それをかぶって、
ヨダレを流しながら泳いでいるのです」 |
北小岩 |
「なるほど。
地上にも似たような下等生物はおりますね。
例えば先・・・。
いっいえ。
しっ、深海というのは、
奥の深い世界でございますね」
|
底の浅い二人は、
それから数時間暗黒の世界に釘付けとなった。
おかげで、ここに記せないほど
猥褻な生物も数多く観察することができた。
深海には人目の届かぬのをいいことに、
いろえろエッチなことをしているお魚さんもいて、
明るいですよ。
|