KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百拾弐・・・深海

こっくりさん こっくりさん

「うへ、うへへへへ」

縁側で船を漕ぎ、
奇妙な笑いを漏らしているのは、
弟子の北小岩くんであった。

「うへへへへ。
 んっ、やっぱり変でございます!」

突然飛び起きたその理由は。

「お尻の穴の奥が、
 尋常ではなくこそばゆいのです」

ズボンとパンツを同時に下げ、
顔をお尻の穴に近づける。

ぶぶ〜ん

「あっ!」

奥からスクランブル発進したのは、
大きな羽蟻であった。

「虎穴に入らずんば虎子を得ずと申しますが、
 おケツに入らずんば
 何を得られないのでございましょう。
 そこはわたくしにとっての秘境。
 う〜む!」

「なんや?
 昼日中からケツ穴の新たな利用法でも
 考案しとるんかい」

弟子のはるかに下を行く師匠が、
意味もなく立っていた。

北小岩 「そうではございません。
 わたくしの秘境に」
小林 「お前の秘境など興味ないわ。
 それよりも、地球最後の秘境とも
 言われるのが深海や。
 今から俺は、異海洋研究所に出向く。
 そこで深度6900メートルの
 潜水調査をしとる『ちんかい69』からの
 生映像を観ることになっておる。
 お前も神秘の世界を堪能しとくとええで」

異海洋研究所・・・。
胃潰瘍にしか聞こえない。
非学術的な施設であることは想像に難くないが、
ともかく弟子も同伴し。

北小岩 「6900メートル潜れるとなると、
 世界でも有数でございますね。
 わたくし、先生宅の庭に
 存在する虫などに関しては、
 虫眼鏡で見えるものなら
 ほとんど把握しております。
 しかし、深海に関しては童貞も同様。
 初体験、楽しみです」
小林 「今日は所長が解説してくれるからな。
 おったで」

「こんにちは。
 所長の深穴舐目留(ふかあななめる)です」

北小岩 「どうも始めまして」
深穴 「LIVE映像が届いておりますので、
 さっそくこちらへ。
 あそこで縮みながら泳いでいるのが、
 『超チンアンコウ』です」
北小岩 「チョウチンアンコウにしては、
 形状がどこかいやらしげでありますが」
小林 「それは同音意義生物やな。
 超チンアンコウは
 ちょっとの刺激で大きく・・・。
 むっ、とてつもない勢いで上昇していく。
 やばいで!
 やつは深海に耐えうるように
 体内の圧力が調整されとるが、
 海上に行ってしまうと
 膨張し過ぎて危険なんや!」


深度ごとに設置されたカメラで経過を見ると、
勃起、いや、膨張が一目瞭然である。

北小岩 「うおっ〜〜〜!」

弟子が股間を握り締めたのもむべなるかな。
超チンアンコウはぱんぱんに張り詰め、
とても痛そうに破裂してしまったのだ。

小林 「男として、見るに耐えんものがあったな。
 気をとりなおそ。
 むっ、俺好みの深海生物がおるで」
深穴 「『パンティノツカイ』ですね。
 まれにですが、
 海の底に使用済みパンティが
 おりてくることがあるのです。
 それをかぶって、
 ヨダレを流しながら泳いでいるのです」
北小岩 「なるほど。
 地上にも似たような下等生物はおりますね。
 例えば先・・・。
 いっいえ。
 しっ、深海というのは、
 奥の深い世界でございますね」


底の浅い二人は、
それから数時間暗黒の世界に釘付けとなった。
おかげで、ここに記せないほど
猥褻な生物も数多く観察することができた。
深海には人目の届かぬのをいいことに、
いろえろエッチなことをしているお魚さんもいて、
明るいですよ。

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2010-09-26-SUN

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