KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百拾六・・・黒衣

カサカサカサ~~~
カサカサカサ~~~

「♪枯葉よ~ん」

シャンソンとは似つかぬ、ゆる褌のような調べは、
弟子の北小岩くんであった。
箒で落葉をかき集めている。

カサカサカサ~~~
カサカサカサ~~~

「♪おいもよ~ん」

ご近所さんからいただいたサツマイモに頬ずり。

カサカサカサ~~~
カサカサカサ~~~

「葉っぱさんが、山盛りになりましたね。
 この中に入れてと」

プ~ッ!

「いけません。
 オイモを見ていただけで、
 条件反射でおならをひってしまいました。
 パブロフの犬ならぬ、
 『パブロフの屁』でございますね」

ウフフフフ

北小岩くんの体たらくぶりに、
鈴のような笑い声をあげたのは、
ピチピチ看護婦さんであった。

「まさに白衣の天使でございます」

思わず後をついていき。

「相変わらずのメガスケベやな」

人差し指と中指の間から親指を出し、
仁王立ちしているのはご存知尿瓶先生。

小林 「まあ、よこしまな気持ちも
 わからんではないな。
 お相伴にあずかるとするか」

呆けた顔で後を追う。

看護婦さんは、痔持切男(じもちきれお)氏宅の
窓を見ると。

看護婦さん 「その後、おしりの調子はいかがですか?」
痔持切男 「あの時は気持ちいいことしてもらい、
 ありがとうございました!
 もう大丈夫で~す」
看護婦さん 「よかったですね」

エンジェルスマイルを浮かべ、立ち去った。

小林 「聞き捨てならんな。
 おっ、
 虫垂痛夢(ちゅうすいいたむ)も
 おるやないか」

先日まで痔持氏は切れ痔で、
虫垂氏は盲腸で入院していたのだ。

小林 「お前ら入院中に、
 何かいい思いしたんやないか」
虫垂 「やっぱり白衣の天使は格別ですね。
 惚れちゃいましたよ。
 いや、先生が考えているような
 ハレンチなことじゃないですよ。
 体をタオルで
 やさしく拭いてもらっただけですがね」
痔持 「私もお尻の穴付近に
 愛情をいただきました」

「ごきげんいかが~~~?」

そこに通りかかったのが、
黒いナース服&帽子を被った
冷たい目をした美女だった。

痔持&虫垂 「うわ~~~~~!」

冷たい目をした美女は、
不敵な笑いを浮かべて去っていった。

痔持 「虫垂さんのところにも来たんですか」
虫垂 「そうです。
 盲腸を切った翌日です。
 超ミニスカートの黒衣、
 たぶん下はノーパンだと思います。
 『傷口大丈夫ですか~?
  これからあなたを天国に
  連れて行ってあげるわ~』
 とのたまったのです。
 素っ裸にされた私は
 『千手こちょこちょ』という
 手がたくさんついた
 マジックハンドのようなもので、
 全身をくすぐり倒されたのです。
 少し笑っただけでも痛いのに、
 強引にそんなことをされて、
 悶絶してしまいました。
 『ガスは出ましたか~?
  まだ~?
  じゃあ、かわりに私が~』
 という声が聞こえ、
 生ケツを鼻に押し付けられ、
 かなりどぎつい屁をかまされました」

痔持 「まさに『黒衣の美悪魔』。
 私はですね、
 『かわいいお尻にチューしましょ~』
 と言われて不覚をとったのです。
 手術直後のアナルに
 強烈な突きを見舞われました。
 ヤツは空手の黒帯で、
 焼けた小石に向かって毎日突きを
 練習しているらしいのです。
 私は断末魔の叫びを・・・。
 その後の記憶はありません」


話を静かに聞いていた先生と弟子は、
凍りついたように動かなくなった。

病院には白衣のエンジェルもいるが、
黒衣のデビルも跋扈している。
高齢化社会を迎えた今、
記憶にとどめておかねばならない重要事であろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2010-10-24-SUN

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