「そこのお二方、
こちらの迂回路をお通りください。
ご迷惑をおかけします」
「かしこまりました」
道路工事現場で進路誘導しているおじさんに
素直に従っているのは、
弟子の北小岩くんであった。
「俺は誰の指図も受けん。我が道をゆく」
ぐにゅん
「むっ! しまった!!」
誘導に従わず、
わざわざ工事している方に足を踏み入れ、
落ちていた巨大な糞を踏み抜いてしまったのは、
チン小林先生であった。
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北小岩 |
「災難でございますね」 |
小林 |
「・・・」 |
言葉を発せず、涙を浮かべている。
あまりに巨大だったために、
靴の内側にまで糞が入ってしまったのだ。
靴を買おうにも、金はない。
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小林 |
「なあ、北小岩」 |
あはれ蚊のような声をしぼり出す。
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小林 |
「誘導員のバイトは、
時給もらっとるんやろな」 |
北小岩 |
「もちろん、そうでございましょう」 |
小林 |
「俺たちにできるいいバイト、
ないやろか」 |
北小岩 |
「町内に、わたくしとなかよしの
おばあさんがいらっしゃいます。
おばあさんは、あまりに人がよいため、
意地悪なおばあさんの来訪を
断ることができません。
意地悪なおばあさんは長居したあげく、
トイレにわざと紙をつまらせたり、
一緒に深呼吸をしようといって
おならの匂いを嗅がせたり、
それはそれは悪行の限りを
つくすそうです。
箒を逆さに立てかけているそうですが、
効き目はございません。
それで、バイトで効果的な逆さ箒の役。
つまり意地悪なおばあさんを、
確実に追い返して欲しいと
おっしゃっているのです」 |
小林 |
「時給はいかほどや?」 |
北小岩 |
「2円と聞いております」 |
小林 |
「諸物価に比べて
あまりに安すぎる気もするが、
ちりも積もれば山となるわな。
引き受けようやないか」 |
二人は虫よりも小さな脳で考え実行に。
ピンポ〜ン
「チン寿司でございます。
お寿司をお届けに参りました」
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意地悪な
おばあさん |
「あら、私のためにとってくれたの。
いつもあんたの臭い料理を
食べさせられて、
不愉快な思いをしていたのよ。
罪滅ぼしね」 |
寿司桶をうばいとる。
食い意地のはった老婆は、一気に頬張り。
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意地悪な
おばあさん |
「なんか変な感触だわね。
んっ?
このネタ、陰毛じゃないの!」 |
小林 |
「そうや。
俺の『毛寿司』や」
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北小岩 |
「シャリは、
ワキの匂いでしめております」 |
意地悪な
おばあさん |
「ちっ。
このおいなりさんでいいわよ」 |
プウ〜
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意地悪な
おばあさん |
「くさ!」 |
北小岩 |
「お米のかわりに、
中にわたくしの腐ったおならを
入れときました。
名づけて『おならいなり』で
ございます」 |
意地悪な
おばあさん |
「おまえらなんか、
とっとと帰れ〜〜〜!」 |
自分が帰ればいいのに、
寿司屋に変装した先生と弟子を追い出した。
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小林 |
「第二弾、行くで〜」 |
北小岩くんは、拾ってきた鉄板に
大量の黒ずんだものをのせ、薪に着火した。
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小林 |
「扇ぐで〜」 |
この世のものとは思えない悪臭が、
意地悪なおばあさんの鼻のもとへ。
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意地悪な
おばあさん |
「うげ〜っ!
何よこれ!!」 |
北小岩 |
「町中の糞を集めてきて、
焼いているのでございます。
言うなれば『やけ糞』ですね」
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さすがの悪婆も、この匂いには耐え切れずに
去っていった。
二人はお礼として2円もらい、
1円ずつわけましたとさ。
めでたしめでたし。
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