KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百拾八・・・逆さ箒

「そこのお二方、
 こちらの迂回路をお通りください。
 ご迷惑をおかけします」

「かしこまりました」

道路工事現場で進路誘導しているおじさんに
素直に従っているのは、
弟子の北小岩くんであった。

「俺は誰の指図も受けん。我が道をゆく」

ぐにゅん

「むっ! しまった!!」

誘導に従わず、
わざわざ工事している方に足を踏み入れ、
落ちていた巨大な糞を踏み抜いてしまったのは、
チン小林先生であった。

北小岩 「災難でございますね」
小林 「・・・」

言葉を発せず、涙を浮かべている。
あまりに巨大だったために、
靴の内側にまで糞が入ってしまったのだ。
靴を買おうにも、金はない。

小林 「なあ、北小岩」

あはれ蚊のような声をしぼり出す。

小林 「誘導員のバイトは、
 時給もらっとるんやろな」
北小岩 「もちろん、そうでございましょう」
小林 「俺たちにできるいいバイト、
 ないやろか」
北小岩 「町内に、わたくしとなかよしの
 おばあさんがいらっしゃいます。

 おばあさんは、あまりに人がよいため、
 意地悪なおばあさんの来訪を
 断ることができません。

 意地悪なおばあさんは長居したあげく、
 トイレにわざと紙をつまらせたり、
 一緒に深呼吸をしようといって
 おならの匂いを嗅がせたり、
 それはそれは悪行の限りを
 つくすそうです。

 箒を逆さに立てかけているそうですが、
 効き目はございません。

 それで、バイトで効果的な逆さ箒の役。
 つまり意地悪なおばあさんを、
 確実に追い返して欲しいと
 おっしゃっているのです」
小林 「時給はいかほどや?」
北小岩 「2円と聞いております」
小林 「諸物価に比べて
 あまりに安すぎる気もするが、
 ちりも積もれば山となるわな。
 引き受けようやないか」

二人は虫よりも小さな脳で考え実行に。

ピンポ〜ン

「チン寿司でございます。
 お寿司をお届けに参りました」

意地悪な
おばあさん
「あら、私のためにとってくれたの。
 いつもあんたの臭い料理を
 食べさせられて、
 不愉快な思いをしていたのよ。
 罪滅ぼしね」

寿司桶をうばいとる。
食い意地のはった老婆は、一気に頬張り。

意地悪な
おばあさん
「なんか変な感触だわね。
 んっ?
 このネタ、陰毛じゃないの!」
小林 「そうや。
 俺の『毛寿司』や」

北小岩 「シャリは、
 ワキの匂いでしめております」
意地悪な
おばあさん
「ちっ。
 このおいなりさんでいいわよ」

プウ〜

意地悪な
おばあさん
「くさ!」
北小岩 「お米のかわりに、
 中にわたくしの腐ったおならを
 入れときました。
 名づけて『おならいなり』で
 ございます」
意地悪な
おばあさん
「おまえらなんか、
 とっとと帰れ〜〜〜!」

自分が帰ればいいのに、
寿司屋に変装した先生と弟子を追い出した。

小林 「第二弾、行くで〜」

北小岩くんは、拾ってきた鉄板に
大量の黒ずんだものをのせ、薪に着火した。

小林 「扇ぐで〜」

この世のものとは思えない悪臭が、
意地悪なおばあさんの鼻のもとへ。

意地悪な
おばあさん
「うげ〜っ!
 何よこれ!!」
北小岩 「町中の糞を集めてきて、
 焼いているのでございます。
 言うなれば『やけ糞』ですね」

さすがの悪婆も、この匂いには耐え切れずに
去っていった。
二人はお礼として2円もらい、
1円ずつわけましたとさ。
めでたしめでたし。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2010-11-07-SUN

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