KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百弐拾・・・マンホール

「いち、に、さん、し、シックスナイン!
 ごう、ろく、しち、はち、尺八姉さん!」

大声を出すのが憚られる掛け声で体操しているのは、
裏筋弟子と恥垢先生であった。
なぜかといえば。

北小岩 「先生のエロ本を通じての
 お知りあいから、
 焼き鳥などを
 ご馳走になるのでございますね」
小林 「めったにないことや。
 限界まで腹を空かせて行かんとな」

貧乏根性からであった。

北小岩 「生ビールなども
 ご提供いただけるので
 ございましょうか」
小林 「もちろん、そうやろな」
北小岩 「男は生が好きですからね」
小林&
北小岩
「わはははははは」

彼らに奢るという行為は、
金を肥溜めに捨てるようなものであろう。

小林 「腹がええ具合に減ってきたな」
北小岩 「では出発とまいりましょうか」

二人は股間を鼓のように打ちながら、
奢られ会場である焼き鳥屋さんに向かった。

北小岩 「わくわくいたしますね」
小林 「店のオヤジが団扇で扇ぎ、
 香ばしい煙が鼻をくすぐる。
 たまらんな。
 むっ?
 今どこかから
 焼き鳥の匂いがせんかったか?」
北小岩 「確かにいたします。
 あっ!
 マンホールの蓋が開いております。
 そこから涎を誘う煙が」

穴に向かって鼻をくんくん。

小林 「むっ?
 若干匂いが変わってきた気がせんか」
北小岩 「しまった!
 いつの間にか、
 屁の匂いに変わっております。
 それもお腹を壊して
 内臓で腐ったような、
 超ド級のものでございます。
 肺の奥まで吸ってしまいました」

ほうほうの体で逃れたのだが。

小林 「むっ?
 再び匂いが変わったな。
 これは女性の香水とエロフェロモン、
 略してエロモンが混ざり合った香りや」

尻子玉を抜かれたかのように近づいてしまい。

北小岩 「しまった!
 再び屁の匂いに変わりました。
 先ほどのものより、
 数倍スケールアップしております。
 実を含有しているのかもしれません」

鼻をつまんで何とか遠ざかる。

♪ ぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉ
  ぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉ〜

北小岩 「今度は尺八の音色が
 聴こえてまいりました。
 それもヴェートーベン交響曲
 第9番第4楽章『歓喜の歌』を
 ごきげんに奏でております」
小林 「不思議やな。
 いったいどんなヤツが」

その時、Y字路から
小股の割れた女性が歩いてきた。

北小岩 「そうでございます!
 もしもし、そこの美しいお嬢様。
 マンホールの中に、
 怪しげな人が住んでいるようなのです。
 できましたら、
 あなたのような優美な方から
 パンティを頂戴し、
 穴に放り込んで様子をうかがいたいと
 思うのですが」
小股の
割れた女性
「仕方ないわね」

湯気を立てそうなホカホカを、投げ入れた。

小林 「北小岩、どや?」

シーン

北小岩 「水を打ったようでございます」

ウッシッシクシク ウッシッシクシク

北小岩 「嬉し泣きに変わりました」
小林 「それほど、
 悪いヤツではなさそうやな」

町内のマンホールに、
どんな人物が住んでいるのか。
屁や尺八の使い手であることは間違いない。
今後も、穴の中の動向から目が離せない。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2010-11-21-SUN

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