「いち、に、さん、し、シックスナイン!
ごう、ろく、しち、はち、尺八姉さん!」
大声を出すのが憚られる掛け声で体操しているのは、
裏筋弟子と恥垢先生であった。
なぜかといえば。
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北小岩 |
「先生のエロ本を通じての
お知りあいから、
焼き鳥などを
ご馳走になるのでございますね」 |
小林 |
「めったにないことや。
限界まで腹を空かせて行かんとな」 |
貧乏根性からであった。
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北小岩 |
「生ビールなども
ご提供いただけるので
ございましょうか」 |
小林 |
「もちろん、そうやろな」 |
北小岩 |
「男は生が好きですからね」 |
小林&
北小岩 |
「わはははははは」 |
彼らに奢るという行為は、
金を肥溜めに捨てるようなものであろう。
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小林 |
「腹がええ具合に減ってきたな」 |
北小岩 |
「では出発とまいりましょうか」 |
二人は股間を鼓のように打ちながら、
奢られ会場である焼き鳥屋さんに向かった。
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北小岩 |
「わくわくいたしますね」 |
小林 |
「店のオヤジが団扇で扇ぎ、
香ばしい煙が鼻をくすぐる。
たまらんな。
むっ?
今どこかから
焼き鳥の匂いがせんかったか?」 |
北小岩 |
「確かにいたします。
あっ!
マンホールの蓋が開いております。
そこから涎を誘う煙が」 |
穴に向かって鼻をくんくん。
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小林 |
「むっ?
若干匂いが変わってきた気がせんか」 |
北小岩 |
「しまった!
いつの間にか、
屁の匂いに変わっております。
それもお腹を壊して
内臓で腐ったような、
超ド級のものでございます。
肺の奥まで吸ってしまいました」
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ほうほうの体で逃れたのだが。
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小林 |
「むっ?
再び匂いが変わったな。
これは女性の香水とエロフェロモン、
略してエロモンが混ざり合った香りや」 |
尻子玉を抜かれたかのように近づいてしまい。
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北小岩 |
「しまった!
再び屁の匂いに変わりました。
先ほどのものより、
数倍スケールアップしております。
実を含有しているのかもしれません」
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鼻をつまんで何とか遠ざかる。
♪ ぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉ
ぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉぶぉ〜
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北小岩 |
「今度は尺八の音色が
聴こえてまいりました。
それもヴェートーベン交響曲
第9番第4楽章『歓喜の歌』を
ごきげんに奏でております」 |
小林 |
「不思議やな。
いったいどんなヤツが」 |
その時、Y字路から
小股の割れた女性が歩いてきた。
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北小岩 |
「そうでございます!
もしもし、そこの美しいお嬢様。
マンホールの中に、
怪しげな人が住んでいるようなのです。
できましたら、
あなたのような優美な方から
パンティを頂戴し、
穴に放り込んで様子をうかがいたいと
思うのですが」 |
小股の
割れた女性 |
「仕方ないわね」 |
湯気を立てそうなホカホカを、投げ入れた。
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小林 |
「北小岩、どや?」 |
シーン
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北小岩 |
「水を打ったようでございます」 |
ウッシッシクシク ウッシッシクシク
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北小岩 |
「嬉し泣きに変わりました」 |
小林 |
「それほど、
悪いヤツではなさそうやな」 |
町内のマンホールに、
どんな人物が住んでいるのか。
屁や尺八の使い手であることは間違いない。
今後も、穴の中の動向から目が離せない。
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