「今年の冬は寒いですが、今日は特に冷え込みますね」
ギッ
「水道が凍っていて、蛇口を回すことができません」
ギッ
「こういう日にわざわざ外出するのは、
賢い人のすることではありませんね」
ギッ
|
小林 |
「おう、北小岩。でかけるぞ」 |
北小岩 |
「先生、どちらへですか」 |
小林 |
「川や。
そこにな、
冬釣りの達人たちが集結しとるんや」 |
北小岩 |
「そうでございますか。
わたくし、あまり気が・・・」 |
小林 |
「お前が来なくちゃ、始まらんわ」 |
別に北小岩くんが来なくとも、
勝手に始まるであろう。
ともかく師弟は、町の北側を流れる珍川に向かった。
|
小林 |
「いたいた。あそこやな」 |
北小岩 |
「極寒の中、全裸で川に入っております!」 |
小林 |
「ケツのあたりをよ〜く見るんや」 |
北小岩 |
「妙に長いケツ毛が
藻のようになびいております。
おっと、魚が藻と間違えて、
入っていきます!」 |
冬の
釣り人A |
「アナルシャッター!」 |
北小岩 |
「釣り人がお尻を締めました。
魚が挟まれております!」 |
小林 |
「見事や!
己のケツを自然と同化させて捕らえた」
|
北小岩 |
「もう一人の方は、
自分のおちんちんを股に挟む、
通称メスライオンの体勢をとっております」 |
バシャ!
|
北小岩 |
「おちんちんを挟んでいた
股の力を突然ゆるめ、
その勢いで魚の頭部を殴打しました。
魚が気を失って浮かんでおります」 |
小林 |
「さすがに名人の称号を
欲しいままにしてきた
男たちだけのことはある」 |
冬の
釣り人B |
「俺はイチモツと睾丸を
自由自在に外すことができるんだ」 |
北小岩 |
「ほんとに股間から、
イチモツと睾丸を切り離しました。
それをルアーの替わりにして、
釣りを始めました」 |
小林 |
「なるほど!
本気の男は違う。
自分の大切なモノをルアーにすることで、
命懸けの勝負に出る。
もしも魚に奪われたら、
取り返しのつかないことになるからな」 |
冬の
釣り人B |
「俺は連戦連・・・。
しまった〜〜〜!
ルアーの睾丸の片一方が
巨大な魚に持っていかれた!」 |
冬の
釣り人A |
「あの魚は、
幻といわれるイトウの亜種で、
『伊藤君』だ!」 |
北小岩 |
「なんと!
名人は、伊藤君に
睾丸をひとつ持っていかれたのですか!」
|
あまりの寒さに手がかじかみ、
ルアーを引くタイミングが
ほんの少しずれたのだ。
だが、その代償はあまりに大きい。
|
冬の
釣り人A |
「大丈夫だ。
睾丸はひとつあれば、
それが頑張って機能を補うことができる」 |
釣り人Aは、フルチンのまま仲間を慰めるが、
凍てつく川で金玉は梅干の種のように縮み、
ケツ毛は凍って
パンクロッカーのとさかのようになっている。
説得力は、ゼロである。
冬の川に集結した釣り名人たち。
彼らがギリギリのところで
釣り道を究めようとしていることは
認めざるを得ない。
しかし、総じてカッコ悪いことだけは確かであろう。
|