「ママ、あれ買って!」
「だめ!」
「なんで!」
「だめよ!」
「はこがキラキラしてキレイだよ」
「だめ!早く来なさい!!」
「痛いよ〜」
「ハハハ、
耳を引っ張られて連れて行かれましたね」
母と子の滑稽な会話をのぞき見て
微笑んでいるのは、弟子の北小岩くんであった。
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北小岩 |
「お薬屋さんの店の横角にある
自動販売機といえば、
相場が決まっております。
ガキんちょには
関係のない世界でございます。
それに大人だって、
お天道様の高いうちに近づくのは
憚られますし、
そうでなければ品のないゲスな・・。
あっ、先生!
販売機の口に手を突っ込んで、
何をしてらっしゃるのですか」 |
小林 |
「北小岩か。
昼間から乳繰り合おうと企てている
若いヤツらがおるやろ。
買ったブツを収穫しようと
しているタイミングで人が近づくと、
恥ずかしがってとらずに
逃げていくケースがあるんや。
残っていたら頂戴しようと思ってな」 |
この男こそ、本物の外道であろう。
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小林 |
「ところで町の中心部にある
自動販売機広場に
いろいろなマシンが入って、
おもろいらしいで。
行ってみよか」 |
二人合わせて所持金が20円しかないのだが、
ともかく広場に向かった。
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北小岩 |
「けったいなものばかりございますね」 |
小林 |
「そやな」 |
突然、中学生の争う声が。
「お前やってみろよ!」
「ぜってぇやだよ。ありえねぇ」
どん
「あっ!」
ぶちゅ〜〜〜〜〜〜
それはキスの自動販売機であった。
しかし、相手は生身の人間ではなく・・・。
「止めろよ!
俺、ダッチワイフと
ファーストキッスしちゃっただろ!」
「わははは」
500円入れると
シリコンでできたダッチワイフのような人形と、
かなりディープなキスが楽しめる
マシンだったのだ。
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小林 |
「糞ガキなど、
一生ダッチワイフと乳繰り合っとれ!
それより北小岩、
あそこのちんちんの自動販売機が
気にならんか」 |
北小岩 |
「そうでございますね。
でも気乗りいたしません」 |
小林 |
「さっき入ったヤツがな、
金だけ入れて何もせずに出て行ったのを
目撃した。
俺が試してくるわ」 |
自分のブツの型をとり、同じ大きさ、同じ形の
石膏ちんちんが出てくる自販機だった。
自動証明写真機で写した後のように、
機械の外で白い息子の到来を待った。
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小林 |
「ご開陳や。どや、見事やろ!」 |
その時ちょうど、
ボンテージファッションに身を包んだ、
スレンダーだが意地悪そうな女が通りかかった。
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意地悪
そうな女 |
「何よそれ、
ペットボトルのフタぐらいしか
ないじゃないのよ!」 |
小林 |
「・・・」 |
図星をさされた先生は何も言い返せず、
ただ立ち尽くすのみであった。
町の自販機広場には、
どこにもない類のマシンが数多置かれている。
このようなものがあったところで、
いいことなどひとつもないことは確かであろう。
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